【 人生二度目の 】


 そんなこんなで、今、私はなぜだか、彼の家に裸で寝ていた。

 しかも、私の体は、彼のお母さん『静香おばさん』だ……。


 私は慌てて我に返り、服を着て1階へ下りて行き、タカヒロ君のために朝食を作った。


 しばらくすると、彼が2階から下りて来る。

 良かった。裸ではない。

 服を着ている。


「タカヒロく……、あっ、タカヒロ……。朝ご飯できたわよ……」


 私は静香おばさんが普段、彼に使うような言葉でそう言った。

 すると、彼は後ろから抱きつき、首元に両手を絡めてくる。


「母さん、珍しいね。今日は目玉焼きなんだ」

「えっ?」


「いつも朝は、食パンにハムエッグなのに。ハムが切れたのかな?」

「あっ、う、うん……。そ、そうみたい……」


 彼は私に抱きついたまま、すぐ近くでやさしい香りを放っている。

 多分、私の顔は今、『ゆでダコ』状態だと思う……。


 テーブルを挟み、ふたりで向き合いながら朝食を取る。

 やっぱり、かっこいい……。


 茶色のクルクルした癖毛に、切れ長の目。

 肌の色は白く、スッと鼻筋が通り、少しアヒル口。

 左の頬に、小さなホクロが2つある。


「どうしたの、母さん? 今日はやけに僕の顔を見てるね」

「えっ? あっ、ご、ごめんなさい……。ちょっと考え事してて……」


 朝食を食べ終わり、キッチンで洗い物をしていると、また彼が後ろから抱きついてくる。

 洗っているお皿を今にも落としそうだ……。


 私の両肩を持って、体をくるりと回転させ、お互いに向き合う。


 そして、彼が目をつむりながら、顔を斜めにして顔を近づけてくる。


 また、キスをされると思う。

 人生、二度目のキス……。


 思わず私も瞳を閉じて、口元を少し緩めた……。



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