第16話 ハンティング!(獲物サイド)

 バンコクからマレーシアのペナン島までバスに乗った。700バーツのバス。3回バスを乗り換えた。待ち時間をあわせて、所用22時間ほど。かなりキツイバス移動になった。

 距離を刻んで行けるならそうした。だが、そうするわけにはいかない事情があった。

 さて、そうまでして訪れたペナン島。東洋の真珠。ビールは高いが、屋台街が面白い。いろいろなものが食べられる。

 オススメは極楽寺。超巨大仏像が見ることができる。本当にハンパな大きさではない。私が訪れたときは未完成だったが、完成したらもう一度行ってみたいものだ。

 マレーシアに入ってから毎日、雨が降っていた。ペナンヒルに登っても雨で、眺めがよいはずのところも雨では景色が良いはずもない。

 雨がちのペナンを折り畳み傘を持って観光した。

 そして、それは聖ジョージ教会を訪れたときのことだ。私は傘をさしていた。

 入り口付近に、小さくはない、中型の犬が四匹横になっていた。私が彼らの前に立ち、寺院の入り口を眺めていると、一匹の犬がほえた。鋭く、大きな声。

 私は驚いて、一歩退いてしまった。これがいけなかった。

 4匹の犬は、いつでも飛び出せる状態を取り、威嚇してきた。ほえるほえる。

 私が身構えると、彼らはフェイント(?)をかけるように私の近くまで素早く近づき、ほえる。4匹の犬は横に広がり、私を囲む構えを見せる。

 私は犬が苦手である。しかし、犬になめられるのは嫌だった。

「なめるな! 犬畜生が!」

 私は犬どもに突進していた。傘をさしたまま。4匹の犬の中央を正面突破する。犬どもは驚いて後退した。

 しかし、、、

 私のこの行動で犬どもにもスイッチが入ってしまったらしい。中央突破したまま逃げる私を、4匹の犬は何度も吠えながら、追う。走りながら振り返って、足元を見ると犬が今にも噛みつかんばかり。やばい。

 ある程度のところで私は反転した。犬どもに向き直った。傘を犬どもに向ける。しかし、傘の左右から犬が私を包囲するように回り込んでくる。まずい、そう思いながら、私の頭にはある文字が(冷静にも?)点灯していた。「狩られてる?」

 私はさらに後退した。犬どもは吠え続ける。幸い、教会の敷地への入り口は狭かった。そこなら一対一になれる。蹴る。傘もある。そこまで逃げればなんとかなる。

 私は傘を犬に向けながら駆ける。敷地の入り口まで到達したときには、犬は追うのをやめていた。相変わらず吠えている。

 さすがにドキドキしていた。奴らが狂犬病に感染していたら、とか、逃げるときに転倒していたら、などと想像すると、そら恐ろしい気持ちになる。

「彼女がいなくて(一緒に来てなくて)よかった・・・」

 そう胸をなで下ろしたあと、自らツッコむ。

「いや、あんまりよくねぇだろ」

 海外旅行では、犬に気をつけましょう。とくにインドでは!(このエピソードはマレーシア) 東南アジアも油断できない。

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