第15話 ミャンマーの白タク

 白タク。無認可タクシー。どこへ連れて行かれるかわからない。ある種 危険なやつだ。

 タイでもインドでも危険なやつである。

 私はミャンマーのヤンゴンで、これに乗ってしまった。

 それはバガン~ヤンゴン間の夜行バスから降りたときだった。早朝。中年のドイツ人男性旅行者がいた。彼は私に声をかけてきた。市内へ行くがタクシーをシェアしないか?

 彼とはマンダレー~ミングン間の船で一緒し、マンダレーで同宿、マンダレー~バガン間のフェリーでも隣の席、バガン~ヤンゴン間でも同じバスという運命的な同行をしていた。相手が若い女性だったら結婚を申し込むところだ。

 バガンを出発したのが15時過ぎ、ヤンゴンに到着したのは午前5時ほど。私は疲労していた。

 バスターミナルで3、4時間待って、次の目的地であるキンプンへ行く選択肢もあった。しかし、私は休む方を選んだ。

 ドイツ人男性の話にのる。彼は街まで2人で5000チャットのタクシーを拾った。

 バスターミナルからひとりでタクシーに乗れば市内まで4000チャットほど。一人2500なら悪くない。

 ところがタクシーには先客が2人いた。おかしい。乗り合い? これは白タクだ。ボロ車は走り出した。

 先客二人が降り、次にドイツ人の目的地へ。

「私は2500チャットを払うつもりはない」

 ドイツ人は言った。いくらはらうのかと問うと、1500チャットという。確かに、我々は2人で5000チャットの契約(があるならば)をした。

 ドイツ人が降りるとき、多少、口論になった。我々は4人で5000チャットだろと言い張り、ドライバーはそれは違うと言う。

 ドイツ人は車を降り、ホテルへ向かった。ドライバーに金をいくら払ったかはわからない。

 ドライバーはぶつぶつ言いながら帰ってきた。ホテルの前でドアマン(?)とドイツ人の不正についてダベっている。

 私は「おいおい、早く行けよ」とドライバーに命じた。ボロ車は走り出す。

 しかし、ここで私は心配になった。これは白タクだ。一人になったいま、どこへ連れて行かれるかわからない。体格は互角。ドイツ人がいれば圧倒的優勢だが、一対一ではどうなるかわからない。ここはあまり刺激しない方が良いのではないか。

 目的地に到着し、私は2000チャット支払った。もめないようにと配慮の結果だ。OK? と問うとOKという返事があった。

 私はなじみのホテルへ向かい、昼まで睡眠をとったのだった。

 白タク。ヤバいドライバーなら、危険な目にあったかもしれない。十分注意するべきだろう。

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