第14話 ミャンマーの靴下売り

 ミャンマーはヤンゴン。繁華街をぶらついてた。屋台や露店がならんでいる。人も多い。私は露店を冷やかして歩いていた。

 ロレックスの時計が売っていた。明らかにニセモノだ。箱がセイコーであるところが笑える。

 なにげなく値段を聞いてみた。1万チャット。約9ドル弱。

 ふーん、と立ち去ろうとすると5000に値下げ。4ドルほど。値切れば2ドルになりそうだったが、現金が少なかったため去る。

 何件かあとに靴下を売る店があった。持っていた靴下は半分ぐらい、つま先に穴があいていたので、商品の靴下を見ていると、カモが来たとばかりに勢いよく男の英語の営業がはじまる。

 袋から靴下を取り出し、コットンだ、さわってみろ、1500チャットだ。1ドル強。

 しかーし!

 露店にはミャンマーの数字で2つの値札があった。250チャットと550チャットの値札が。コットンは550のところから店主が取ったものだった。

 ばかめ。

 私は0~5なら、ミャンマーの数字が読めるのだった。2桁3桁数字の市バスに何度も乗っていた。お札にもアラビア数字とともに、ミャンマー数字が書いてある。

「ここに250って書いてるじゃん」

 私が英語でいうと、彼は、いくらならいいんだ? といいながら、私に靴下をつかませる。腕を握られる。

 私は靴下を返し、ゆっくり彼の手をほどいた。

「じゃ、150チャットで」

「ノー!」

 彼はおおげさに首を振ったのだった。

 私はその露店から離れた。おもしろかった。25円の靴下は安いなぁと思って見ていただけなのに、思いがけず面白い話ができた。

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