第12話 ミャンマー マンダレーの夕食でマンチェスターユナイテッド?

 その日は、ミャンマーはマンダレーの王宮を観光した。ホテルからかなり離れたところにある別のホテルで、すごいオンボロの自転車をレンタルして王宮へ向かった。


 王宮入り口でパスポートナンバーなどの旅行者情報を記入し、外国人料金の入場料を支払う。ここで、なぜか自転車での乗り入れを拒否された。現地の人? は皆、自転車で乗り入れているにもかかわらず。


 なぜだ? 私は抗議した。ゴネた。警官にも軍人にも見える係員にゴネ続けた。


「さっきの西洋人は自転車で入っていったぞ」


 係員は首を振る。


「なんで?」  私が問うも とにかくだめだという雰囲気。


「西洋人は入ったじゃないか。なんでおれだけ……」


 そういうと係員は、しょうがないなぁという感じでOKした。ラッキー! いや、むしろこれまでがアンラッキー。通常に戻っただけのことだ。


 あとで考えれば、私の自転車はボロすぎ、現地の人と思われて、軍事施設でもある王宮に紛れ込まれると係員が危惧したのかもしれない。あるいは、ちょっとした賄賂を求めていたのだろうか。


 王宮は火事で焼け、再建されている。きれいだが、空虚だった。部屋に家具や調度品がなかった。


 観光を終え、昨夜も行った料理屋へ向かう。そこでつまみとミャンマービアを3杯。すると店員がメモを持ってきた。


「もう一杯飲めるかい?」


 メモには英語でそうあった。私があたりを見回すと、私を見る家族が。


「あなたのメッセージ?」


 そうだという。


「一緒していい?」


 もちろんという。私は彼らの席に移った。40前の兄と、30中頃の弟、弟の息子という三人組だった。

 私は彼らと歓談した。兄の方はショーン・コネリーに似ている気がしたので、そう言ったら喜んでくれた。


 弟はマンダレー大学に勤めている。


 マンダレー・ユニバーシティ……。マンダレー・ユニバーシティ……。マンユー。マンチェスターユナイテッド!?


 私がいうと大人二人は大爆笑。ミャンマーでサッカーがメジャーなのは、新聞で(文字は読めないが)知っていた。


 彼らとしばらく話した。やがて彼らは帰宅するという。私の料金を払ってくれるようだったが、おつまみとビア4杯は彼らの財布には重かったらしい。払えないと申し訳なさそうに言った。


 それはしょうがない。彼らに他人の3ドル分のチャット(4ドル分だったかな?)は重かろう。私は自分で支払った。


 しかし!


 彼らがすすめたビアくらいは払ってくれてもいいじゃないかー!


 そう思った、いろいろあった一日だった。

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