第8話 感染7日目
5:50 目が覚める。妻の実家からいただいた、数年間使っていなかったデロンギのオイルヒーター、ほんわりと部屋を暖めてくれて助かる。音を立てないので頑張っている感はないのだが、外気温が1℃の朝でも部屋が暖かい。説明書を十分読んでいないので、詳細は不明だが、電気代だけが心配だ。発電の大部分を占める汽力発電、多量の熱を無駄にしているわけで、それで得られた電気で熱を発生させる、熱効率を考えると、直接化石燃料から熱を得られるストーブなどの方がよいのでは、とも思うが、これはこれで不完全燃焼などの問題があり、悩ましいところである。
5:55 BT 37.5度、PR 48,SpO2 88%~91%。いびきをかいているわけではなく、手指が冷たいわけではない。動脈波もしっかり確認できており、やはり低酸素血症があるようだ。健康時の寝起き直後のSpO2を測定したことがないのでわからないが、調子を崩してから確認している範囲では、確かにこの数日低酸素血症が見られるようになっている。まずいな。指を変えてもあまりSpO2は変わらず、上昇しても94%程度だ。坐位になり、咳をする。痰が絡んでいるわけではないが、SpO2は98%まで上昇した。少なくともV/Q不均等があるのか、肺の予備能は落ちている可能性が高そうだ。職場復帰できれば、胸部CTは確認したいものだ。
本日、職場から電話連絡が来るはずだが、まもなく9時だが連絡がない。保健所からのホテル療養についても連絡がない。妻からは、「出ていくときに、ごみは袋を3重にして捨てること、着替えたものは洗濯機に直接入れること。可能な限り部屋をアルコール消毒して、窓を開けていくこと」と指示を受けた。もちろんそうするが、保健所から連絡があり、30分後に出発、となるとそんな準備をする時間はないはず。早く連絡を欲しいようなほしくないような。
10時前に勤務先から連絡をいただく。現状と今後について報告。ホテル療養になるが、詳細は不明と伝えた。10:30頃、保健所から連絡があり、本日からホテル療養となるとのこと。母方の祖父母が住んでいたところの最寄り駅にあるホテル。周囲の土地勘があるので、ほっと安心。もちろん療養中は外には出られないのだが、自分がどんなところにいるのか、イメージがつかめるのは安心である。移動は府が用意したタクシーとのこと。帰宅は自力だが、駅のすぐそばなので、帰宅も容易であろう。30分ほどで、タクシー会社からお迎えの時刻の連絡があるといわれ、保健所からの連絡は終わった。すぐに職場と妻に報告する。しばらく不在になることで、居室を片付けなければならない。寝巻として使っているスウェットを脱ぎ、布団をたたみ、部屋中をアルコールで消毒し、拭き掃除をする。本当は掃除機をかけてから拭き掃除をしたいのだが、掃除機も使えない。それでも、部屋を片付け、ごみは感染性のものとして3重に袋詰めし、準備完了。しばらくは家族と離れ離れになるが、「家族に移すのではないか」という心配はなくなる。良いのだか悪いのだか。
昼食は、子供たちがホットケーキ(パンケーキというの?)を焼いてくれた。私も食べたかったのでうれしい。これでしばらくは自宅に帰れない。残念である。
13時、タクシーが迎えに来た。通常のタクシーではなく、10人乗りのタクシーだった。乗客はもちろん私一人。感染爆発が起きているので、これも大変だなぁ、と思う。自宅からホテルまで、一般道を使うと1時間近くかかるので、どんなコースで行くのだろうか?興味は津々だった。自宅を出ようとすると、家族全員が見送ってくれた。次男が「無事に帰ってきてね」と声をかけてくれる。たぶん大丈夫だと思うが、もしかしたら今生の別れかもしれない。子供たちに「お母さんを頼むね」と声をかけて家を出る。タクシーに乗り込み、家族に一旦のバイバイをする。本当はみんなにハグしたかったのだが、そういうわけには行かないのが残念なところだ。
さすがタクシーの運転手さん、前もって予習をしているのだろう。自宅近くの交通状況も把握されており、最短の時間で目的地に着く道順を選択される。一時間はかかるか、と思っていたが、30分程度で目的地に到着した。一般の人と接触しないように地下からホテルに入り、2階の受付へ。細かい説明を伺う。保健所の話では、コインランドリーがある、とのことだったが、洗濯機は無料で使えるものの、乾燥機はないとのこと。洗濯物を干す場所もなく、洗濯をするのは無理だと分かった。持ってきた服や下着をうまく使って、帰宅まで持たせようと思う。
部屋に入り、スマホで厚生労働省のシステムと、大阪のシステムに登録する。登録途中に看護師さんから問診があった。スムーズに問診は修了。ただ、まだ十分にスマホに慣れていないのか、少しうまくいかなかった。それでも、1時間ほどで落ち着き、ホテルのwi-fiに接続する。あまりwi-fiの性能が良くないのだろう。速度も急に遅くなったり、接続が切れたりする。Wi-fi環境については明らかに自宅の方が快適だった。しかし、ホテルではテレビを見ることができるのは少しうれしい。昨日だったら「笑点」が見れたのに。少し残念な気がしないでもない。
夕食の配布は17:30からとのことだった。実際にはもう少し早く配布が始まる。入所の際に、食事の選択があり、普通タイプか、ボリュームタイプか選択できた。もちろんボリュームタイプを選択したが、本日は普通タイプのお弁当。2階に取りに行く。もう少し後で食べるつもり。
17:30 BT 37.3度、PR 49,SpO2 94~95%(RA)
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