第7話 感染6日目

 未明に誘引なく目覚める。とりあえず寝ながら体温とSpO2を測定。体温は37.1℃、平熱であり、布団の中で寝起きならこの程度だろう。パルスオキシメーターを左母指につける。パルスはキャッチできているが、SpO2は89%(!)。呼吸苦はない。深呼吸を繰り返すとSpO2は97%まで上昇する。やはり臥床して眠ってしまうと低酸素血症があるのかもしれないが、COVID-19のためか、SASでもあるのか、そこは不明である。ただ、私は常に側臥位で眠っているので、舌根沈下はしづらいはずなのだが。


 再度入眠し、昨日と同様に5:45に起床。バイタルを確認するが、坐位で測定したため、体温、SpO2とも、正常値。日曜日なので、妻はある程度遅くまで入眠しているはず。起こさないように妻の携帯には連絡せず、妻からの「おはようメール」を待つことにする。


 9時過ぎにおはようメールをもらい、朝食をお願いする。前日と同じトースト。これはこれでおいしい。脂質が多いが、脂質が多くてもインスリン分泌を誘導しないので、あまり肥満には影響しないだろう。影響するならトーストそのものだな。朝食をおいしくいただく。前日ほど乾性咳嗽はひどくない。頻度も減っている。いつもなら日曜日の午前中は妻とお買い物なのだが、それができないのがつらいところである。NHKラジオの子供電話相談室を聞きながら過ごす。


11:55 BT 37.5度、SpO2 97%(RA),PR 55


 昼食は、子供たちがスパゲティを作ってくれた。いずれも味は薄め、パスタをゆでるときに塩を入れ忘れたのではないか?と少し気になる。カルボナーラとたらこスパは市販のもの、ナポリタンは手作りだった。うれしいものである。


 時間はたくさんあり、久しぶりにDVDでBeatles Anthologyでも見ようか、と思っているのだが、ついついスマホに手が伸びてしまう。Youtubeを見るが、もう一つ。それでも見てしまうのは惰性なのだろう。


 少し眠いと横になるが、眠れず。ラジオを聴きながら横になっている。


 16時ころ、保健所から連絡があった。まずはこちらの状況確認から。発生届にある程度詳細を記載していたのだが、再度、感染の契機と思われるイベント、その後の対応、症状出現のタイミング、その後の経過と抗原検査陽性となるまでの経緯、陽性になり、帰宅後の対応について説明する。自宅隔離として、感染の契機となったイベント以降は家族とほとんど接触していないことを説明。「こちらで検討し、今後のことを報告します」とのことで電話が切れる。妻に保健所から電話があったことを報告。なんとなく落ち着かない。


 しばらくして再度保健所より連絡がある。私はホテル隔離となること。私の努力にもかかわらず、家族は濃厚接触者となるとのこと。私の療養期間や家族の濃厚接触者と判定される期間について説明。療養するホテルについてはホテル担当者から調整がつき次第連絡があると伺い、大まかに必要なものの説明を受ける。


 毎週日曜日は笑点を楽しみにしているが、今日は見るのは無理そうだ。必要なものを妻にも用意してもらい、自分でも用意する。リュック一つには収まりそうになく、リュック+でかい紙袋となりそうだ。行きはタクシーだが、帰りは自力で帰ることになると。公共交通機関にこれを抱えて乗るのは面倒だなぁ、と思う。


 入浴後、夕食。今日はちらし寿司とシウマイ。お雑煮と昨日の残りの肉野菜炒め。おいしくいただく。


 20:00 バイタルサインを確認。BT 37.5℃、PR 60,SpO2 94%。しばらく見ていても94%から上昇しない。呼吸苦を感じていないから余計に嫌な感じだ。指を変えて測定するが、94%~95%。咳払いをして少し深呼吸を繰り返すと97%となる。SpO2の低下は嫌な兆候だ。サイトカインストームによる肺損傷は時間的にはこれから始まるはずだが、発熱は軽度で、サイトカインストームが起こっている可能性は低いと勝手に判断している。保健所からのホテル療養の連絡はまだない。


 一昨日、師匠に「COVID-19に感染し、自宅隔離中です」とメールを送り、本日返信をいただいた。私の修業した病院はCOVID-19入院受け入れ病院なので、スタッフの感染も多く、複数の医師が感染しているそうだ。師匠もご自身の感染には最大の注意を払っておられるとのこと。師匠のrisk factorは私とは異なり、年齢くらいだと思う。


 師匠のメールで、初期研修医時代の同期が、某大学の教授に就任したと教えてもらう。すごく努力したんだろうなぁ、とうれしく思う。私自身はいわゆる教授を目指すコースを進んではいないが、町の「何でも医」として実力をつける、という点では、良い道を歩んできたと思っている。師匠や恩師に感謝である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る