第5話 きっかけ

 そんなある日のこと。たまたま見たテレビ番組で懐かしのお笑いコンビの特集をやっていた。このことが敬太郎の背中を強く後押しすることとなった。

 懐かしいお笑いコンビだなぁ、今はどうしているのだろうか、などと思いながらその特集を見ていた敬太郎であったが、最後にその2人はどちらも既に亡くなっているという情報が伝えられたのだった。


 特段驚くようなことではないではないか。人はいつ死を迎えてもおかしくない、誰にでも明日が必ずやって来るなんて保証はない、なんてことはわかっているではないか。


 いつどうなるかわからない、不確定なものの集まりが人生ではないか。そのように日頃から思っていた敬太郎にとっては、そのお笑いコンビの2人が若くして既にこの世にはいないということは大きな驚きではなかった。

 しかし、自分が今死んだとして、その2人が残したコントのような生きた証を自分は残せるだろうかと不安を感じたのであった。その不安から逃れるように、気が付くと敬太郎は原稿用紙に向かっていた。

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