第4話 ハマる
療養生活に入った敬太郎であったが、症状はなかなか改善しなかった。初めの頃は、食事以外はひたすら布団で眠っていた。起きていられる気力すらなかったのだった。
それでも、2週間ほど経つと、布団に横たわった状態ではあったが眠らずにいられるようになった。開けていられるようになった敬太郎の目は、初めは部屋の窓越しに見える景色をただ眺めるだけであったが、次第に活字も見ることができるようになった。ここで敬太郎は小説を読むことにハマることとなる。
敬太郎はそのときまで小説を読んだことがなかったわけではない。15年ほど前にはある著明な作家に夢中になって、その作家の作品ばかりを読み漁った時期もあった。
けれども、今回はそのときとは違った。うつ病という精神状態がそうさせたのだろうか。特定の作家の作品にではなく、小説というジャンルそのものにハマったのだった。
最初は小説を読むだけだった敬太郎の心の中に、次第に自分も小説を書いてみたい、文字で自己表現してみたいという欲求が芽生えた。その一方で、知識も経験もない自分に小説を書くことなんてできるわけがないとそれを否定する気持ちもあり、敬太郎はなかなか一歩を踏み出せずにいた。
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