第3話 うつ病

 しかし、市役所生活が20年を過ぎた頃、敬太郎は体調を崩してしまった。根を詰めて仕事に取り組んできたそれまでのやり方が原因だったのだろう。蓄積されていた仕事のストレスにより、うつ病を発症してしまったのだった。

 それでも、抗うつ薬を飲みながら1年半ほど仕事をがんばり続けたのだったが、そのがんばりが症状を更に悪化させた。うつ病だとわかったときに、すぐに仕事を休むべきだった。

 しかし、敬太郎は休むことが怖くてできなかった。自らが休むことによって増える同僚への負担や、休み明けに待っているであろう浦島太郎状態のことを考えると、休むという選択肢を選ぶことはできなかった。

 やがて、敬太郎の体調は朝起き上がれなくなるまで悪化してしまった。目を覚ましても、身体がつらくて寝床から起きることができなかったのだった。

 喜怒哀楽を失ってしまったように、何に対しても無気力・無関心にもなってしまった。魂が抜けてしまったようになった敬太郎は、ついに療養休暇を取って仕事を休むこととなった。選択肢はもうそれしかなかった。

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