⑥哀しい笑顔
「女の子らしい部屋だねぇ~」
あたしの部屋に入った瑛子ちゃんは、三百六十度回転しながらそう言った。
「そぅ?・・・適当に座って」
そう言うと、瑛子ちゃんはベッドとテーブルの間を陣取った。
従姉妹同士なのに、あたしの部屋に瑛子ちゃんが足を踏み入れた事は
「本当はね、私、咲ちゃんと仲良くしたかったんだ」
木製の丸テーブルを挟んで瑛子ちゃんの正面に座ったあたしに、瑛子ちゃんはそう言った。びっくりした。
「え?・・・そうなの?!」
「うん・・・今更、だけどね。けど、私、自分よりも年下の子と何を話していいかとか何をしてあげたらいいのかとかがわかんなくて・・・で、春休みとか夏休みにチャレンジしに来てたんだけど・・・結局、薫さんと話して帰る、みたいな、ね」
「あたしはてっきり、瑛子ちゃんはあたしみたいなガキの相手なんかしたくないんだとばかり思ってた」
あたしは、何だか拍子抜けしてしまった。
「そんな事ないよ!これを機に、これからは仲良くしたいなって思ってる・・・で、
「うんっ」
あたしは立ち上がり、ベッドに置いたままにしていたケータイを取り上げた。と同時に、ピコン、と通知が入る音が鳴った。怜也からだった。
怜也『咲?明日、大丈夫?』
「彼氏ぃ?」
瑛子ちゃんは、茶化すようにそう言ってあたしを見上げた。
「うん・・・なんだけど、今、ちょっとムカついてんだ」
「喧嘩でもした?」
「ううん・・・これ、見て」
あたしは瑛子ちゃんに怜也とのやりとりを見せた。
「自分は十日も放置しといて、あたしが数時間放置しただけで・・・これよ。だから、あたしも少し放置してやろうと思って」
「えー・・・これ、早く返事した方がいいんじゃないの?会えるんでしょ?明日」
「だって、腹立つんだもん」
「けど、咲ちゃんが返事しない間に予定入れられたらどうすんの?意地張ってないで、早く返事しなよ~」
確かに、このまま放置していたらそんな事も有り得るかも知れない。
「・・・そうだね」
あたしはもやもやを抱えたまま、返信した。
咲子『大丈夫だよ』
「なんか・・・素っ気なくない?」
あたしのケータイを覗き込んだ瑛子ちゃんが指摘してきた。
「だって・・・腹立つんだもん」
「いいじゃないのぉ~腹を立てれる彼氏がいるのって幸せな事だよ?はぁ・・・羨ましいなぁ~」
「え?・・・瑛子ちゃん、付き合ってる人いないの?」
「高校の時はいたんだけどね・・・その人の事、忘れられなくて」
あたしは何と返事して良いのか判らず、只々瑛子ちゃんの口元を見ていた。
「さっき、友達と同じ学部に行きたくなかったって話、したじゃない?」
「あ・・・うん」
「実は、その友達に盗られちゃったんだ、彼氏」
「え゛?!」
「あはは・・・だから、国際系学部にしたの」
「それって、友達じゃないじゃない!」
「うん・・・だけど、盗られたのは私にも落ち度があったのかなーなんて思ってね」
『落ち度』という単語に、あたしはビクッとする。先日、紅美に言われた言葉だ。
「そんな事ないよ!瑛子ちゃんは悪くない!てか、友達の彼氏を盗るなんて、最っ低だよっ!」
「ありがと、咲ちゃん・・・だけど、私がもう少し彼に優しくしてれば・・・心変わりなんてされなかったのかなって・・・ね」
瑛子ちゃんの
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