エピローグ
「松、今日は珍しく幸せそうだね」
出社早々に明日那から、声をかけられた。顔に出てたのかと少し照れてしまう。
「うん、運命の人に出会ったんだ」
「本当に!?えっどこで知り合ったの!?もう告白した感じ!?」
明日那が襲いかかりそうなほどの勢いで質問攻めしてくるので、少し引きつつ笑顔で答えた。
「最近話をしてたじゃーん」
「えっ??」
「いやーっ、最初から最後まで彼を馬鹿にしてたんだけど、今思うと彼は私に対してめっちゃ気はあったんだと思うんだよね」
うんうんと頷くなか、明日那は口を押さえて空を仰いでいた。
「まさか…とは思うけど、私の勘違いかもしれないから間違ってたらごめんね」
「うんうん、何さ」
「明日那の運命の人って、夢の中の…モブ??」
「せいっかーい!!」
笑顔で拍手すると、明日那は魂が抜けたような顔をしていた。どんなに声をかけても
「おーい、明日那!!おーい、おーい、おーい」
「松子くん、珍しく会社で寝ていないが…始業時間過ぎても遊んどるのかね??」
真後ろからヌッと部長が怖い声で声をかけてきた。
「ぎゃっ!!…ぶちょー、朝から化けて出ないでくださいよー」
「まだ現役でピンピンしてるがな!!…んっ??相方の小姑は生きとるのかね??」
部長は真っ赤な顔をしたと思ったら、すぐに明日那の状態に気づき、怪しむような顔をしながらジロジロと睨んできた。小姑と言われたら即言い返す明日那もこのような状態では、部長の言葉すら聞こえないらしい。
「かーっ、静かだと不気味だがこれはこれで平和なもんだわ、人の顔を見る度喧嘩売ってきてまったく…」
部長がブツブツと言いながら自席に荷物を置いて会議室の入口に移動したと思ったら、中に声をかけていた。
そんな朝から会議室に人が居るわけでもないのに、部長もとうとう末期かと心配していると会議室から一人の男性が出てきた。こんな時間から会議室に人がいることに驚いたがなんだか見覚えのある顔だ。だが、誰かはすぐに思いだせない。
部長が定位置に立つと朝会の時間ということで、周りの社員は一斉に立ち上がった。
「えーっ、知っている人もいるかも知れんが、本日より彼が我社の一員となる」
そこまで言い終わると、部長は偉そうな咳をした。
「じゃあ、知らん人もいるから、自己紹介してくれるかね??」
部長が男性に声をかけると、彼はニコリと笑った。その顔はあの時と同じだった。茶髪ではなく黒髪で、出会ったときより少し老けてはいるが、笑うと細くなる目…少し低めの優しい声だ。それは彼以外考えられなかった。
「はい、本日より入社いたしました…」
「モブだっ!!」
私こと名川松子、彼氏いない歴=年齢を本日も爆走するようです。
物語通りに進まなきゃ困るんですが⁉ 紗音。 @Shaon_Saboh
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