転生ゴブリンは最強に至る

ハル

第1話 ゴブリン転生

 突然だが俺こと最上もがみさとるはゴブリンに転生したらしい。趣味らしい趣味は特に無い。強いて言うならライトノベルを読み漁ることだけだ。もちろん彼女はいない歴年齢だ。

 もう一度言う。・・・どうやら俺はライトノベルの定番中の定番であり、最弱の一、二を争う魔物、ゴブリンへと転生してしまったらしい。


 そして俺は神様と名乗る者との会話を思い出していた。



   ◇



 トラックに跳ねられ死んで気付いたらなんか真っ白い空間でフヨフヨと何日間か漂っていた。そしたらなんか目の前が『ピカーッ』って光って、光が収まると白髪青眼の見たことがない位の美少年が居た。


「ねえ。なんで君こんな何にもない所にいるの?」


 白髪の美少年は心底不思議そうにこちらを見ていた。質問に答えようとするが・・・喋れない。どうしよう。


「ああ。喋れないの。そっかー。・・・うん。なら思っていることを念じてみてよ」


 えっ!?なんで喋ってもないのに俺の考えていたことがわかるんだ!?


「それはね!この僕が神様だからさ!」と渾身のドヤ顔で言われた。


(まあ。うん。この子は、あれだな。そういうお年頃か。俗に言う厨二びょ・・・)


「厨二病じゃないからね!?」


(まあまあ。そんなに恥ずかしがらなくてもさ、俺も正直言ってそういう時期はあったしさ)


 中学の頃なんかはカッコイイ必殺技をいっぱいノートにメモ書きしたりな。うんうん。わかるぞ!


「だから本当の本当に僕は神様!!本当に神様なんだって!!」


(まあそこまで言うなら信じて上げなくもないんだからねっ!!)


「ないんだからねっ!!って君!神様相手そんな口聞いた人間って君が初めてじゃないかなっ!?」


(やめろ。照れる)


「褒めてないからね!?てか君何気に念話使いこなしてるよね!!」


(まあそれは。生きていた頃にそれはもう沢山の書物を読んだからな)キリッ!


「キリッじないよ。はあー。なんか君の相手するのは疲れるなー」


(お疲れ様です。頑張って下さい。人生・・・いや神様生にもいつかいい事がありますよ)


「本当。・・・そうなる事を願うよ。もう何百年は暇だからね。さて、話が逸れちゃった。もう一度聞くけど何でこんな所にいるんだい?」


 俺は知っている事を話した。トラックに跳ねられ死んだことや数日間はここに漂っていたことを全て何も隠さずに。無警戒じゃないか?って。いやいや、考えを読める人に隠し事なんて無意味だから。


「へえー。そんなんだ。君。可笑しいね」


(えっ!何か貶されてる!?俺嫌われることした!?・・・あっ。結構してたわ)


「自覚あるんなら辞めないかなっ!?」


(えっ!それはちょっとごめんさい)


「断られた!?なんか僕が告白して振られてるみたいな事になってるの!?」


(勘違い勘違い。それで何か可笑しいのか?)


「いや、うん。・・・なんかもういいや」


 神様は悟ったように呟いた。


「えっとだね普通死んだりしたら魂は輪廻の輪を通って在るべきところに行くんだよ」


(在るべきところとは?)


「うーん。君が理解するのに何百年か掛かるけど聞く?」


 説明するの面倒臭いけど聞く?的な感じで聞いてきた。


(いや。大丈夫です。聞かなくていいっす)


 いや。なんにもない所で何百年を勉強は絶対に嫌だ。


(それで。俺はこれからどうなるんだ?輪廻の輪に戻るのか?)


「いや。無理だね」


 どうやら聞く所によるとここは次元の狭間と言って世界と世界を繋ぐ扉みたいな物らしい。そして魂だけの状態で長時間ここに居ると精神が崩壊して魂は分解されちゃうと。


(へえー。そんなのか。なら、なんで俺は大丈夫なんだ?)


「多分だけど、君の精神力が桁外れに強いからだね」


(そうなのか。それで結局俺はどうすればいいんだ?)


「うーん。・・・そうだ!君には剣や魔法、能力スキルなどがあるファンタジー世界『クラウト』に転生して貰うよ」


 いい事が思いついたみたいな顔でそんな事を宣ったまった。こいつは、この神様は馬鹿なんじゃないだろうか。剣や魔法、能力スキルがあるって、絶対魔物どかそういう化け物が居るに決まってるだろ。チートスキルなんかが無くちゃ直ぐに死ぬ。


「大丈夫さ!君にはチートスキル?って言うのをあげるよ」


(ほう。なんの能力スキルを貰えるんだ?)


「ふふーん。それはねー。対象の眼を見る事で発動する固有能力ユニークスキル『強奪』をプレゼントだー」


 おおー。確かに強そうだ。強奪系のスキルはチートの定番だよな。


「さ・ら・に!異世界の情報を何も知らないのは不便だ・か・ら!固有能力ユニークスキル『叡智』もプレゼントー!」


 何も知らないと確かに不便だからな。有難い。

 すると神様の手から光る球体を二つ放つと俺の身体の中に入っていった。その瞬間、俺は理解した。今、俺の中に入れられたのは能力スキルだと。


(ありがとな。それでいつ頃『クラウト』って所に行くんだ?)


「もう行くよ。いつまでもここに居て魂の分解が始まっちゃたらいけないからね」


(わかった。それじゃあ一つ聞いていいか?)


「うん!いいよ!」


(最後に名前を教えてくれないか?転生させて貰うのに名前を知らないのはちょっとな・・・)


 神様は驚いた顔をした後に笑った。


「そうだね!・・・僕の名前は創造神クルトさ!・・・それじゃあ時間だ。いってらしゃい。楽しんで生きてね」


 そうして俺は光の奔流に流されて行く。


「そうだ!言い忘れてたけど君が転生するのは人間とは限らないからー!」


(えっ!?!?!?それは先に言えよー!!!!)



  ◇



 意識が浮上すると俺は真っ暗で閉鎖的な空間で数日間動くことができなかった。数日後ついに真っ暗な空間に小さな光が差していた。そして閉鎖的な空間から解放され、何かに抱かれて重い瞼を開けると最初に目に入ったのは緑色の肌をしたゴブリンだった。

 俺はもう悲鳴を上げた。それもう盛大に。


「グギャーーーーーーーーー!!!!」

(なんでゴブリンなんだよー!!!!)


 俺の声が虚しく響いた。

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