煙突掃除夫
シュセツ
煙突掃除夫
老人は煙突掃除の仕事をしていた
子供の頃からずっと
手をみると煤で汚れていた
爪の間
皺の中
指紋の畝と畝の間
いくら洗ってもとれなかった
若い頃はそれがいやで
血が出るまで洗った
今は慣れているものの
人には見られたくない
見られるとはずかしい
年ともに小食となり
今は食欲もない
子供の頃のように腹が減れば
何を食べてもおいしいのに
そう思っても
腹がへることはまずない
時間がくるとしかたなく
食べる
噛んでただ
飲み込むだけ
老人の体の大きさは
子供と同じくらい
大きくなると
仕事ができなくなるから
体が環境に対応したのなら
進化と呼んでもいいだろう
毎晩夜眠る時
このまま目が覚めなければと願う
今のところ
願いは叶わない
ところが不思議なことに
老人の唯一のたのしみは
朝起きる前の
うたたね
なぜこれほど心地よいのか
目覚めなければよいと思いながら
なぜこれほど心地よいのか
朝起きて
新聞を広げると
二酸化炭素の記事
お金を出して
買い取るという
この老人ももしかしたら
売り物になるのかな
仕事の身支度をしたら
鍵を閉めて家を出る
家の扉は黒色で
家の鍵はなぜかしら
金色をしていた
煙突掃除夫 シュセツ @Corrina
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます