ねずみの夢

 夢を見た。


 「君は、どうしてここに来たの?」


 目の前に浮いているのは、僕の身体の三分の一にも満たないほどに小さな、それでいてその背格好に見合わない大きなシルクハットを被った、ねずみのようせい、とでも言わんばかりの生き物だった。


 「気づかないうちに、って感じなのかな。でもどうやら、君にもまだやるべきことがあるようだ。今回はどうしたものかな…。」


 眼前の妖精は、首をかしげながら、あーでもない、こーでもない、というようにクルクルと回転している。


 「あ、そうだ、これがいい!」


 突然ピタッと動きを止めた彼は、その長く細い尻尾を僕の鼻先につけた。そして、その小さな顔を近づけて、こう呟いた。


 「これはおまじない、僕ができるのはここまでだから。あとは君次第。後戻りはできないけれど、僕は一緒に泣いてあげる、笑ってあげる、怒ってあげる。これから僕は君の親友だよ。」


 それじゃあ、魔法の世界へいってらっしゃい。



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