第二章 専属メイド=妾!?

第7話 専属メイドのご奉仕

 一夜が明けた。

 といっても、結婚式まで、皇女のフローラとはキス以上のことはできない。


 あくまで、俺とフローラは婚約者ということになる。

 今は、まだ。


 王城の客室をあてがわれ、俺はそこで一人で眠ったのだ。

 窓からの朝日で、俺は目を覚ます。豪華な天蓋付きベッドはふかふかで寝心地も良かった。


 フローラは俺に何もしなくていいと言った。

 そして、俺に何もできることはない。もとの世界に戻ることもできない。


 まあ、ゆっくりすることにしよう。

 ブラック企業に勤めていて、過労で死にそうだったのだから、今は二度寝をしても悪いことはないはずだ。


 そう思ったとき、部屋がノックされた。どうぞと返事をすると、一人のメイドの女性が部屋に入ってきた。


 まだ若い女性だ。

 フローラと年齢はそれほど変わらないんだと思う。


 淡い茶色の髪と、灰色の瞳が印象的な女の子だ。

 明るく華やかなフローラとは対象的な、クールで落ち着いた雰囲気の美しい女性だった。


 ただし、フローラよりもさらにスタイル抜群で、メイド服の上からでも、胸はメロンのように大きく、お尻ははち切れそうなほどの存在感があった。


 彼女は大きな胸に手を置くと、うやうやしく一礼した。大きな胸がたぷんと揺れて、俺はついちらりと見てしまった。

 一瞬だけだから、気づかれてはいないと思うけれど……。


「初めてお目にかかります。私はアイリスと申します」


「は、はじめまして……」


「カズキ様の専属メイドを拝命しました。これから、カズキ様のあらゆることをお世話しますので、何でもご命令ください」


「ありがとうございます。よろしくお願いします、アイリスさん」


 アイリスは整った顔に笑みを浮かべる。

 

「私はメイドですので、敬語は不要です。アイリスとお呼びください」


「あー、たしかに。そうだね、アイリス」


 この世界は身分制社会であり、これから俺は皇女の夫として、皇帝となる。

 つい日本の感覚で話してしまったが、皇帝がメイドに敬語を使うのは、まずいだろう。アイリスも困るに違いない。


「お風呂のご用意ができております」


「ああ、そうか。二度寝しようと思っていたけど、この世界では朝風呂の慣習があるんだ……」


 身を浄めて、皇帝としての服装に着替える、みたいな儀式があるのだろう。

 俺の言葉に、アイリスが頬を緩める。


「もちろん、カズキ様が二度寝をしたいということであれば、そうしていただいて問題ございません」


「いいの?」


「はい。カズキ様に『何もしないで、好きなようにしていていいよ』と約束したのは、フローラ殿下自身です。そうであるならば、全力でカズキ様の望むとおりにするのが、メイドのわたしの務めです」


「なるほどね、ありがとう。でも、せっかく用意してくれたから、お風呂には入ることにするよ」


 他人が用意した朝風呂に入るなんて、最高の贅沢だ。

 俺はいそいそと風呂に向かった。


 王城の大浴場の他に、客室付きの専用浴場も隣に設置されているらしい。

 さすが皇帝の城だ、と俺は感動する。


 服を脱いで風呂に入ると、そこは大理石の豪華な浴場だった。浴槽にはたっぷりとお湯が張られている。


 さらに印象的だったのは、日本の風呂場と同様のシャワーのようなものがあったことだ。

 どうやら魔法で動いているようだが、便利なものだと思う。


 俺がシャワーを使って体を流しはじめたとき、風呂場の扉が開いた。


「失礼いたします」


 そこにいたのは、メイドのアイリスだった。ただし、メイド服を着ていない……!

 身にまとっているのは、バスタオル一枚だけで、ほとんど裸だ。


 俺は慌てた。こっちはまったくの裸なのに。


「あ、アイリスさん。どうしたの?」


 俺の疑問に、アイリスは首をかしげた。


「お背中を流しに来たのですが……」


「いやっ、でも、知り合ったばかりの男に普通はそんなことはしないというか……」


「私はあらゆる面でカズキ様にご奉仕するように、フローラ殿下からご命令をいただいています」


「で、でも……」


「私は命令を遂行できないと、フローラ殿下に怒られてしまいますね」


 わざとらしく、困ったようにアイリスは言う。

 俺は仕方なくうなずいた。


 ここで俺が拒絶すれば、アイリスの立場は困ったものになるのかもしれない。

 俺は椅子に座り、アイリスが俺の後ろに立つ。そして……俺の背中に柔らかいものが当たった。


 この質感は……アイリスが胸を俺に押し当てている……!


「あ、アイリス!?」


「あら、このような方法で洗って差し上げると、殿方は喜ぶと聞いていたのですが」


「正しいけれど、間違っている……」


 アイリスはボディソープ、あるいはそれに近い油状のものを胸につけているようだった。バスタオルも脱いでいるのだろう。

 アイリスが胸を上下させると、俺の背中とこすれ、ぬるぬるとした感触がする。


「あっ、んんっ……」

 

 アイリスの熱い吐息が俺の耳元をくすぐった。


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