第8話 2番目の仲間:カミュー 2/3

「ねぇ、そこに倒れてる人、死んじゃいそうだけど」

「え?・・・・あっ!ユーキっ!!」


イケメンの言葉にハッとしたサラが、慌ててもう一度僕の体を抱き起こす。


「ねぇ、ユーキってば!しっかりしてっ!」


そんな必死な顔で心配してくれるのは、ちょっと嬉しいけど。

ねぇ、サラ。

もしかして。

もしかしなくても。

ちょっと前まで僕の事、完全に忘れてたよねぇ?


「どうしよう、あたし、ユーキが死んだら困るんですっ!お願いです、ユーキを助けて!」

「・・・・ユーキ?」


ぼやけはじめた視界の中で、通りすがりのイケメンさんが、何故か僕の名前に反応したように見えた。

でも、正直もう、どうでもいい。

この痛さと苦しさから解放されるんだったら。

死ぬなら死ぬ。助けるなら助ける。

頼むから、どっちにするか、早く決めて!


「うん、わかった。じゃあ、近くの街まで運ぼう」

「ありがとうございますっ!」


・・・・えー、助かっちゃうの?僕・・・・

ちょっとだけ、このまま死んでもいいかなって、思ってたんだけど。

ってことは、まだこのゲーム、続けなくちゃいけないのか。


そんな事を思いながら、僕はそのまま意識を失ってしまったのだった。



「・・・・なんですかぁ?やだぁっ、あははっ!」

「そうそう、それでね、気付いたらこんなカッコだったって訳。もう、どうしていいか全然分からなくてさー。でも、なんか知らないけど、ちょっと剣振り回しただけで、敵がバタバタ倒れるんだよ。もしかしておれ、すげー強いんじゃね?って思ってレベル確認したら、【99】とか出てるし。ゲームはじめていきなりレベル【99】とか、アリエナクね?」

「すっごーい!でも~、カミューさんなら有り得るかもー!だってー、クソ弱のイケメンなんて、ダサいだけじゃないですかー!」

「まぁ、そうだねー。あははっ」


なんだか賑やかというかうるさいというか。

サラと誰かの話し声で、僕は目が覚めた。

僕が眠っていたのは、拠点のベッドとは比べものにならないくらいの、フカフカのベッド。


あれ?ここ、どこだろう?


「あっ!ユーキ、目、覚めた?!」


体を起こした僕に気付いたサラが、駆け寄ってくる。


「大丈夫?って、まぁ、大丈夫だろうけど。一応確認。どこも痛いとこ、無い?」

「え?・・・・あ、うん。大丈夫」


どんなに瀕死の重傷を負っていたって、ここは所詮ゲームの世界だ。

一晩【寝る】ことさえできれば、翌朝にはピンピンしている。

たとえ、肋骨が何本か折れていたって、お腹に穴が開いていたって。

HPが【1】以上有りさえすれば、たちまち復活しているんだ。ほんと、不思議な世界だよ。

それに。

一晩どころか、ゲームの外の時間で言えば、寝る時間だって、ほんの数秒なんだけど。


「やぁ、元気になったみたいで良かったね」


いつの間にか、サラの隣に、通りすがりのイケメンさんが立っていた。

そう言えば、僕、この人に助けてもらったんだっけ。

ちゃんとお礼、しないとね。


「どこのどなたか存じませんが、助けていただいて、ありがとうございました」


ベッドから降りてイケメンさんの前に立ち、僕は直角に腰を折ってお礼をした。


の、だけど。


「やだなぁ、そんなに畏まらないでよ。おれ、キミの仲間だから」

「・・・・は?」


イケメンさんの言葉に、文字通り、俺はポカンと口を開けてその整い過ぎとも言える外見を眺めた。

さすがゲームの世界だ。

非の打ちどころが無いくらいに整っている。

顔はもちろんのこと。

背だって高いし。

胸板だって、厚い。

腕にもちょうどいいくらいの筋肉がついていて、おまけに、無駄に足が長い。


「あれ~?もしかして、おれに見惚れちゃってる?ごめんね、ユーキ。おれ、男より女の子の方が好きなんだよね。それも、可愛い女の子限定で。まぁでも、キミも割と可愛い顔しているから、『どうしてもおれが好きで好きでたまらない!』って言うなら、考えてみてもいいよ?」


・・・・もしかしたらちょっと、頭の方は、残念な人なのかもしれない。


サラも同じように感じたらしく、キラキラと輝いていた目から、面白いくらいに急速に光が失われていく。


サラってもしかして、ものすごい面食いなのかな?

それで、熱しやすくて冷めやすいタイプだったりして?


「ユーキ。この人、あたし達の仲間。カミューっていうの。レベル【99】だし、装備も最高レベルだから、あんたのレベルが【1】のままでも、当分心配無いと思うよ」

「そうそう。そういう訳だから、よろしく、ユーキ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る