第9話 2番目の仲間:カミュー 3/3

通りすがりのイケメンさんことカミューは、軽くウィンクなんてしながら僕に片手を差し出してくる。

仕方なく、僕も片手を差し出し、2人目の仲間:カミューと握手を交わした。

カミューは近寄りがたいほどのイケメンだけど、仲間、と言う言葉に、一気に親近感が湧いて来る。

それに、レベル【99】の仲間なんて、メチャクチャ心強いじゃないか!


「ていうか、なんでいきなりレベル【99】なの?どうやって強くなったの?」

「さぁ?なんでだろうね?気付いたらもう【99】だったから分かんないや。きっと、僕のこのルックスに合わせたレベルに合わせてくれたんだろうね、このゲームを作った人が。いやぁ、参っちゃうよね。レベル上げも、RPGの醍醐味なんだけどねー!」


僕の手を握りしめながら、カミューは小さく首をかしげる。


そうだった。

この人、頭だけ残念な人なんだった。

聞いた僕が間違いだった。

まぁでも、お陰で近寄りがたさが消え失せたから、それはそれで、いいかもしれない。


「ねぇ、サラ。こんな序盤に仲間になる人がいきなりレベル【99】なんてこと、あるの?」

「あたしが知る訳無いでしょ」

「だって、サラはナビなんじゃないの?」

「知らないもんは知らないのっ!」


若干キレ気味に、サラが答える。


・・・・だからさ、怖いってば、サラ・・・・


「で?ユーキとサラは、これからどこに行く予定だったの?」

「とりあえずこの街に来て、薬草やら装備やら買う予定だったのよ。カミューのお陰でほんと助かったわ」

「そっか。じゃ、早速買い物にでも行こうか。そんなボロい装備じゃ、見た目も恥ずかしいし、おれも一緒に歩きたくないからさ」


そう言って、カミューは爽やかに笑った。


今、結構酷い事言ったと思うんだけどね?僕たちに。

やっぱりこの人、全体的にちょっと残念な人なのかも・・・・


「うん、わかった、そうしよう。だからとりあえず、カミュー」

「なんだい?」

「もういい加減、手、離して欲しいんだけど」


話している間中、カミューはずっと僕の手を握りしめ続けていた。

いつ離してくれるのかなぁと思っていたんだけど、なんだかんだで全然離してくれないんだもん。

なんだろう、この人?


「あ~、ごめんごめん。忘れてた」


え~・・・・普通忘れる?


と言いたい気持ちを押さえて、僕たちは部屋を出た。

出る時に部屋の中を見回して、僕はちょっと驚いた。

思っていたより、豪華な部屋だったんだ。


こんな豪華な宿なら、宿代、高いんじゃないのっ?!

でも確か、RPGのゲームって、宿代、前払いだったよね?

だったらもう、払い終わっているはずだから、『宿代が足りないっ、どうしようっ?!』ってことには、ならないはず。


そう、思って安心していたのだけど。


「ところで、キミたちお金は持ってるの?」

「えっ?うん、この袋の中に・・・・あれっ?」


僕が持っていたはずの、サラが一生懸命稼いでくれたお金が、すっかり無くなっている。


「あれっ?ここに入れてたはずなのにっ!」

「ああ、そこに入ってたお金なら、さっきの宿代に使ったけど?」

「えっ?全額っ?!」

「うん。全額」


カミューは相変わらず、さわやかな笑顔を浮かべたままだ。

その横では、サラが呆然とした顔をして、カミューの顔を見ている。

僕はサラの腕をひっぱって、カミューから少し離れたところで、小声で聞いた。


「ねぇっ、サラ。どうなってるの?ここの街って、そんなに宿代、高いの?」

「いや・・・・多分、そんなこと、ない。でもアイツが『ここがいい』って言い張るから、つい・・・・」

「なんでっ?!ゲームなんだから、どこで寝たって回復できるでしょっ!」

「いやぁ・・・・ちょっとあたし、アイツのあの顔面偏差値の高さに、やられちゃってたみたいで・・・・」


決まり悪そうな歯切れの悪いサラの言葉に、僕はそれ以上サラを責める事ができなくなってしまった。

というか、そもそもあのお金は、ほとんどサラが稼いでくれたお金だ。

僕がどうこう言えるものでもない。

おまけに、僕が弱すぎて瀕死になっちゃったから、ここまで連れてきて休ませてくれた訳だし。


「ねぇ、もしかしてお金、もう無いの?」

「うん、残念ながら。さっきの宿代で全部使っちゃたみたい」

「えー、マジでー?超貧乏じゃね?!」


カミュー・・・・残念だよ。

黙ってれば、キミはイケメンなのに。

しゃべると残念な人っていうのが、どんどんバレちゃうよ。


「だから、とりあえずお金稼ぎしないとね」

「うん、あたしまた、頑張るから」


気合を入れなおす僕とサラの横で、カミューはうんざりした顔をした。


「めんどくせー・・・・」


本当に、カミューのいいところは、見た目と強さだけなのかもしれないなぁ。


そんなことを思う僕は、なんだかものすごく、気が重たくなったのだった。

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