#48 カミングアウトと告白



 フジコさんは立ち上がり、言葉を吐き出す様に話し始めた。


「私は・・・・」



 顔を上げるフジコさんと目が合う。



「一目惚れ、でした・・・」



「「「えええええええええ!!!???」」」


 いや、驚きすぎだろ!

 俺主人公なんだから、一目惚れされるくらい普通だろ?


「1年の時でした。 去年クラスは違いましたが、たまたま偶然昇降口のところの段差でつまづいて「おっとっと」って転びそうになっていたノリオくんを見かけて・・・」


「見かけて?」


「その時、雷に打たれたような衝撃が体中を走ったんです!「野生のリアルジョニーさんが現れた!」って」


「ジョニーさん・・・?」


「あ!昨日クルミんが言ってたモミアゲタイプ最強のポケオジ???」


「そう!それです! ノリオくんは私にとって最強のモミアゲタイプなんです!!!」


 あ、全然普通の一目惚れじゃなかった


「俺、そんなにモミアゲ長い? そんなことないでしょ? サクラさんそうですよね?」


「う、うん・・・まぁ、モミアゲはそんなにだけど、オジサンって言われると正直、クスってしちゃうかな」


「ちょ、ちょっと待ってよフジコ先輩! つまり、ウチのジジイがジョニーさんに似てるから一目惚れしたっていうことだよね? それってもしかして、中学の時に言ってたリアルポケオジ探し、まだ諦めて無かったってこと?」


「うん!そうだよクルミちゃん! 諦めるわけないでしょ! それにクルミちゃんだってそうでしょ! オジサンが好きだからずっとポケオジコレクター続けてるんでしょ!」


「いや、私は別に老け専フケセンって訳でもオッサンが好きって訳でもないけど・・・フジコ先輩そうだったんだ・・・」



 フジコさん、まさかの老け専フケセンカミングアウト。 中年のオジサンが大好きだったとは。


 そして、そこから導き出されたのは、老け専フケセンのフジコさんから見て、俺が一目惚れする程の老け顔だと言うことだった。



 更にもう1つの答えが導き出された。


 そう

 クルミが俺を「ジジイ」と呼ぶ理由だ。


 単純に、老け顔でジジイみたいだからってことだった。






 今回のヒロインからの告白、キョウコちゃんが腐った妄想で俺を凌辱していたことを知った時より、ダメージが大きいぞ。



「メグっち・・・幼馴染のよしみで教えてくれ」


「う、うん、何でも聞いてくれだし」


「俺、フジコさんの告白に喜んだ方のが良いのか? 老け顔のハーレム主人公って、アリなのか? ジョニーさんみたいに他のポケオジと戦わないといけないのか?」


「も!ももももちろんだし! ノリオがオジサンみたいな顔してるのなんて、小学生の頃からなんだし!」


「メグっち、それ、慰めてるつもりだろうが、傷口に塩塗りこんでるからな?」



 その時、炊飯ジャーの終了のメロディーが流れた。


 ふとフジコさんへ視線を戻すと、祈る様に両手を前で組んで俺を見つめ返していた。



 そうだ、俺はハーレム主人公様だった。


 老け顔だと言われた程度で、ヒロインを不安にさせている場合じゃないよな。



 俺はフジコさんに向かって両手を広げて、言い放つ。


「フジコさん、君はやっぱりヒロインだ。 君の美しくて眩しい笑顔をこれからは俺の為だけに見せてくれ!」


「ノリオくん!」


 フジコさんは俺の言葉に応えるように、俺の腕の中に飛び込んで来た。


 抱き合いながら見つめ合う二人。


「ノリオくん、大好き♡」


「ふっ、仕方のない子猫ちゃんだぜ、まったく。 今日からフジコさんも俺のハーレムヒロインだからな」


「はい♡」


 そして俺はフジコさんの唇にキスをして、フジコさんの体を解放した。



 俺の腕から離れたフジコさんにクルミが「よかったね」と声を掛ける。


 フジコさんは拳を握った右手を真っすぐ高く掲げて、「ポケオジ、ゲットだぜ!」と腹の底から叫んで、喜びを表した。






 こうして、過去にメインヒロイン候補と呼ばれていたクラスメイトが、俺のハーレムヒロインに堕ちた。




 ギャルで巨乳の幼馴染

 真面目でギャップ萌えの綺麗な先輩

 ドMで腐女子の変態美人教師

 そして、中二病で老け専の正統派美少女


 全員、一騎当千の美形ぞろいなのに、イロモノ感と残念な感じがそこはかとなく漂う子猫ちゃんたちだぜ。



 だからこそ、俺にホレたということか。




 まったく俺ってヤツは、ホント罪作りな男だぜ。やれやれ。







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