#47 追い詰められた部長、遂に立つ
翌日、教室では相変わらずのフジコさんを適当に相手にしつつ、一緒にお昼の弁当を食べたりして過ごしたが、俺の中での結論はまだ出ないままだった。
まぁ、フジコさんから直接告白されたわけでは無いしな、以前の様に俺からアプローチをかけるつもりも無いし。
要は、告白されたらどうする?って話で、普通なら自意識過剰の童貞オツ!って話だが、俺はハーレム主人公様だからな。 いざ告白されても慌てて無様を晒さない様に、今から心の準備が必要ってことだ。
で、この日の放課後。
珍しくクルミから「真っ直ぐ家に帰ってこい」と”寂しいからお兄ちゃん早く帰って来てコール”があったので、メグっちとサクラさんを連れて帰った。
すると玄関に、既に帰宅しているクルミとは別の女性物の靴があった。
「珍しくクルミも友達連れて来てるのか?」
「あれ?この靴って」
そんな会話を交わしながら家に上がると、クルミが部屋から出て来た。
「帰って来いとは言ったけど、なんでメグちゃんと先輩も連れて来てるのよ」
「今日は部活無い日だからな。サクラさんとデートの代わりにウチに来てもらったんだよ。 そんなことより友達でも来てるのか?」
「あー、昨日話してたフジコ先輩来てるから」
「は?なんで?」
そのタイミングで、クルミの部屋からフジコさんがモジモジしながら出て来た。
「お邪魔してます・・・・」
「いらっしゃいだし! 折角みんな集まったし、みんなでご飯食べよ!」
またメグっちがノー天気に勝手なことを言い出した。
俺が(なんの目的で来たの?)とか(クルミはフジコさんを後押しでもすることにしたのか!?)とか、色々逡巡してたらメグっちがさっさと仕切りはじめた。
「ノリオ!今日のご飯なんにするん?」
で、俺とサクラさんがカレーを作ることになった。
水元家のカレーには、大根が入っている。
カレーの具材としては珍しいが、大根ってカレーに入れると、凄くジューシーで美味しいのだ。 おでんの大根が好きな人にはオススメしておこう。
サクラさんが具材をカットして、俺が調理。
煮込みに入ると、サクラさんはサラダ用の野菜をカットし始め、俺はドレッシングを作り始めた。
そして、二人でキッチンに立って調理している間、メグっちたち三人は食卓に座りお茶飲みながら雑談をしていた。
「フジコちゃん、今日はノリオに会いに来たの?」
「えーっと・・・」
「そうだよ。フジコ先輩がジジイに会いたいからウチ来ても良いかって」
「ち、ちょっとクルミちゃん!バラさないでよ!」
「ははは、今更隠してもバレバレだし! しっかしフジコちゃん、前はノリオのこと上手いこと躱してたのに、いつの間にか逆だし! 変わり身凄すぎてちょーウケる」
「いや、あの、その・・・・べ、べつにそんなつもりじゃ・・・・」
遠慮知らずのメグっちにグイグイ来られて、モジモジとハッキリしないフジコさんの態度に、今度はサクラさんがちょっとキレ気味に話しだした。
「月野さん、いい加減ハッキリしたらどうだ? 私も以前は君と同じ立場だったが、ウジウジする様なことは無かったぞ? 何をそんなに怖がっているんだ? ノリオにその思いをぶつければきっと応えてくれるぞ?」
そう言ってサクラさんは俺に抱き着いて来たので、唇に軽くキスした。
「どうだ?羨ましいだろう? これが水元ノリオという男だ。 ノリオはヒロインの私たちにはとことん優しくて甘いからな。 ノリオのヒロインになりたかったら、変な小細工を弄したり待っているだけではダメだ。 本音でぶつかって思いの全てを晒さないとな」
「そうだよん!あのキョーコちゃんだって教師のクセに全部晒したんだし! 晒し過ぎて逆にドン引きしたけどネ!」
「ラブコメ症候群とか言うのも、本音を誤魔化すための詭弁だったのだろう? 本当はノリオのこと気になってて、もっと色々知りたくなって、でもそんな自分の気持ちに無理矢理言い訳付けようとして、それで出て来たのがラブコメ症候群とかいう訳の分からない設定ってところじゃないのか?」
サクラさんの指摘に、フジコさんは何も言い返そうとせず、ただ黙って下を向いてしまった。
なるほど
流石サクラさん
相変わらず鋭いな。
きっとサクラさんの指摘は概ね正解なんだろう。
「ちょっと待ってメグちゃん。 教師のクセに全部晒したって、火野先生のこと? 先生までジジイのこと好きなの?」
「あ・・・」
「あ・・・」
「あ・・・」
メグっちめ、調子に乗って要らんことまで言うから、折角隠してたのにキョウコちゃんも俺のハーレムのヒロインだってことがクルミにもバレたじゃないか。
「へぇ~、ってことはジジイは既に三股なんだ。 ていうかフジコ先輩、こんなんでいいの?四股になるんだよ?」
さっきまで勢いのあったメグっちとサクラさんは急にトーンダウンし、これまで大人しかったクルミが勢いづいた。
俺は、煮込んでいたカレーの鍋を混ぜながら、まだ静観していた。
ぶっちゃけ、サクラさんが言ってた通り、フジコさんの本心が知りたかったから。
先ほどまでとは打って変わって重い空気が流れ、カレーを煮込む鍋のぐつぐつという音と食欲を誘う匂いが漂う。
俺がフジコさん一人を見つめていると、フジコさんは下を向いたまま立ち上がった。
「私は・・・・」
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