#46 明らかになる妹と部長の関係
文芸部なのに本を読まない部活を終えて家に帰ると、メグっちとクルミが夕食の準備をしていた。
「ただいま。 メグっちがご飯作ってくれるなんて、久しぶりだな」
「ノリオ、お帰りだし♪」
そう言ってエプロン姿のメグっちが俺に抱き着いて目を閉じキスを強請って来たが
「まだ手洗いうがいが済んでないから待て!」と断ると、メグっちが「40秒で支度しな!だし!」と発破をかけてくる。
急いで洗面所で手洗いうがいを済ませる。
ついでに部屋着に着替えてから台所に戻ると、メグっちが(さぁ来い!)とでも言いたげに両手を広げているので、がっちりハグしてからデロデロぐちょぐちょのディープなキスをする。
「ちょっとメグちゃん!ジジイなんかよりもご飯! 次ナニすればいいの!」
「ふっ、お兄ちゃんがメグっちに盗られたからメグっちに八つ当たりするなんて、可愛い妹だぜ」
「クルミんももっと素直になれば可愛いんだし」
「もうなんなの!二人ともいい加減にしてよ! ご飯!さっさと作る!」
「やれやれだぜ」
「やれやれだし」
メグっちとクルミはハンバーグを作ってくれて、食卓で3人揃って食事を始めると、メグっちからフジコさんのことを問いかけられた。
「ノリオ、フジコちゃんのことどうするつもりなん?」
「う~む、その事でメグっちに相談したかったんだが、やけに積極的なフジコさんに邪魔されて相談出来なかったんだよな」
「フジコさんって、月野フジコ先輩のこと?」
「そうそう!そのフジコちゃん! フジコちゃんもノリオのこと好きなんだし!」
「やっぱそうなんだ。前からそんな感じだったけど」
「おいちょっと待てクルミ! まるでフジコさんと知り合いみたいな言い方だな?」
「そうだよ。ずっと前から知り合いだよ。っていうか、ポケカ繋がりで学校違ったけど中学の頃からの友達だし」
ポケカと言うのはポケオジカードを略した名称で、ポケットオジサンという子供に人気のアニメのトレーディングカードであり、クルミは小学生の頃からポケカにハマっている。
※「ポケオジ(ポケットオジサン)」
10年程前に人気ゲームがアニメ化され一大ブームを巻き起こし社会現象にもなった。 因みにその内容は、主人公のサドシくんが旅をしながら様々なオジサンを捕まえてはペットにし、調教して他のポケオジ使いたちと戦いポケオジマスターとして成長する話である。
「マジか・・・全然知らなかったぞ?」
「だって言わなかったし。 レアくれるから相談乗ってくれって言われてて、色々話聞いてあげてた」
「クルミん買収されてるし!」
「だってキラカードの”チョー助さん”くれるって言うんだよ! 二人ともキラキラチョー助さんの価値知らないから!」
「そんなに凄いのか?」
「ショップで買い取りだと最低でも2万、マニアの間じゃ5万が普通だね。なにせハゲタイプ最強のポケオジだからね。 因みにヒゲタイプの最強が権田さんで、モミアゲタイプの最強がジョニーさんね」
「5万!? やべーなフジコさん・・・」
「私だって最初は断ったよ! でも2枚あるからって言うし、その分ちゃんと相談とかも聞いてあげてたし」
「ちょっと待て、その言いっぷりだとかなり前から相談されてたのか?」
「3カ月以上前だね。 でもメグちゃんのこともあるし、チョー助さんも貰っちゃったし、でもフジコ先輩、変な妄想に囚われてるしで、最近は私の方が話聞くの疲れちゃってたんだよね」
「なるほど・・・その妄想ってラブコメ症候群とか言ってたやつか?」
「そうそれ。 ジジイの様子詳しく聞かれてたし、メグちゃんと普段どんなことしてるのかとかも聞かれたし、私のことも被害者だってしつこいし」
「多分、ラブコメ症候群の件はもう大丈夫だぞ。 今日だってキョウコちゃんに「そんな病気は無い!家庭の医学に載ってなかったぞ!」ってお説教されてたし」
「キョウコちゃん、フジコちゃんのこと中二病だって言ってたし」
「そうなんだ。 それでフジコ先輩がジジイのこと好きなの、やっぱりガチなの?」
「メグが見た感じ、ガチだと思うし」
「あー、俺から見てもそうだな。 今日の部活でもキス迫って来てたし。 キョウコちゃんとか他のメンバーが取り押さえて事なきを得たけど」
「っていうか部活中にキスとか、文芸部ナニやってんだし!」
「とりあえず、最近の部活動は本は読んでいないな。 今日だって俺だけずっと人間イスだったし」
「ヤバいね文芸部。 でもフジコ先輩が部長で更にジジイが居る時点でそんなもんか・・・」
「え?クルミんから見てもフジコちゃんって変な人なん?」
「え?むしろフジコ先輩ってガチの変人でしょ? 高校だと大人しくて優等生のフリしてるけど、中学の時なんか「クルミちゃん!リアルのポケオジ探しに行こうよ!」とか言い出して、止めるのとか大変だったよ」
「いや、ソレただのパパ活だし!」
「フジコ先輩は、ガチで他の人と戦わせるつもりでオジサン捕まえようとしてたけどね」
「最近の中二病ってそんな感じなんだ・・・」
「で、どうすんの? ジジイはメグちゃんとあの美人の先輩と二股してる挙句にフジコ先輩も食べちゃうつもり?」
「いや、メグまだ食べられてねーし!サクラちゃんも食べられてねーし! ノリオはそこはちゃんとしてるし!キモイけど」
「え?そうなの? てっきり二人ともジジイの毒牙にヤラれてると思ってた」
「おい、女の子が食べちゃうとかヤラれてるとか言うんじゃない!お兄ちゃんはちょっと悲しいぞ! しかしフジコさんに関しては、そうだなー、ヒロインから降格のつもりではいたけど、ここ数日のフジコさん見てると、このまま切り捨てるのもちょっと可哀そうなんだよなぁ」
「なんか、ジジイが如何にも「モテてモテて困っちゃう」っぽいこと言うの見てると、糞ムカつくな」
「まぁまぁ、実際ノリオがモテてるのは事実だし?キモイけど」
「っていうか、メグちゃんもあの先輩もフジコ先輩もかなりの美少女なんだけど、何でジジイなの? 3人ならジジイよりいい男なんて呼吸するくらい簡単に捕まえれるでしょ?」
「クルミんは妹のクセに分かってないなぁ~ ノリオよりいい男なんて居ないんだし!キモイけど」
「いちいち”キモイけど”って付ける必要無いからな!!! メグっち!」
なんだか久しぶりにクルミといっぱい喋った気がするが、こうして妹の本音を聞けるのは貴重な機会だったな。
しかし、クルミがポケオジカード繋がりでフジコさんと友達だったとは・・・・
あれ?
ちょっと待てよ?
クルミが俺のこと「ジジイ」って呼ぶのって・・・まさか!?
俺! ポケオジゲットされてたのか!!!
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