#37.5 恋心と独占欲の狭間で葛藤した少女の夢
メグとノリオは、幼馴染。
小1の時に引っ越して来てからずっと一緒。
初めて会った時のことは、おぼろげだけど覚えてるし。
お隣に1つ下の女の子が住んでたことが嬉しくて、直ぐに友達になろうと遊びに誘った。
その子のお兄ちゃんだったノリオは、オマケだった。
だってあの頃のノリオって、いっつも鼻水垂らして無口で喋んないし、なのにメグがクルミんと遊ぼうとすると勝手に混ざって来るし、やっと喋ったと思ったら意味不明な難しい話ばっかだし。 とにかく得体の知れない男の子、っていうのが最初の印象。
学校でもそう。
いつも一人ぼっちで本ばっかり読んでてみんなに混ざろうとしないし、可哀そうだから仕方なくメグが声かけて遊びに誘うと、渋々ついて来る感じ。 子供のクセにひねくれてたんだね。 ひねくれてるのは今もだけど。
そんなノリオだったけど、直ぐに見直す様になった。
ウチもノリオの家も親が共働きで、学校から帰るといつも留守。
メグは家に帰っても一人だし、毎日クルミんのトコに遊びに行ってて、3人でゲームしたり学校の宿題したりしていつも仲良く過ごしてた。
そんな時に、必ずノリオが夕食を用意してくれるの。
低学年の頃は、レンジでチンのチャーハンとかカップラーメンとかだったけど、小3くらいになるとカレーライスとかスパゲティとか簡単な手料理を作ってくれて、それは中学に入るくらいまで続いた。 もうメグもクルミんもノリオの料理で育った様なもんだし。
(同じモノ食べて育ったのに、メグとクルミんのおっぱいの成長に差があるのは、未だに謎なんだけど?)
そのノリオの手料理の中で、メグがとびきり大好きだったのが、クリームシチュー。 ノリオは市販のルーで普通だって言うけど、野菜とかの具がゴロゴロ大きいのがいっぱい入ってて、他にもウズラのゆで卵が入ってて、シチューの時はいつも御代わりしてたくらい。
だから子供の頃は、美味しい料理が作れるノリオを、純粋に”凄い子”だって尊敬してた。 ノリオが居れば、美味しい物食べさせてくれる!って。
でも普段のノリオは相変わらずよく解んない難しい屁理屈ばっかり言ってて、学校とかだと周りの友達とかとあんまり馴染もうとしなくて、そんなノリオをメグもほっとけなくて、学校でも家でもずっと構ってたし。ノリオもメグの言うことだけはちゃんと聞いてたからね。
もうココまで聞いたら分かると思うけど、オマケだったはずのノリオがオマケじゃなくなってて、ノリオが傍に居る生活が当たり前になってて、いつの間にかクルミんよりもノリオと遊ぶのが目的でノリオの家に行くようになってた。
それでこの頃になると、ノリオもクルミんも友達っていうよりも兄弟みたいに思ってた。 一緒に居るのが当たり前。 一緒にご飯食べて、お風呂もしょっちゅう一緒に入ってて裸見せあっても平気だったし、お泊りとかもノリオと一緒のお布団で寝てたし。
小学生の頃は恋愛とか全然考えて無くて、でもいつもノリオの意味不明な屁理屈聞くのとノリオの手料理が食べられるこんな生活が、今考えると凄く幸せだった。
そんなメグとノリオの関係が変わって来たのは、中学に入ってからだと思う。
中学生にもなると、ノリオもメグに気を使って一緒にお風呂入るの遠慮したりする様になって、結果的に夕食もメグは家で食べるようになってた。
そのことは少し寂しかったけど、ノリオからも「普通は家族と一緒にメシを食べるもんだ」って言われて、「そういえばそうだよね。ノリオやクルミんは家族じゃなくてお隣さんだもんね」って今更納得して、パパとママと過ごす時間も嫌いじゃなかったし、周りの子たちが「親ウザイ」とか言ってた時期なのに、メグはウザいとか全然思わないで家族ラブで過ごすようになった。
今思うとコレってノリオが、ノリオに甘えてたメグが家族と仲悪くならないように考えてそう仕向けたのかな?って思うけど、その事聞くとノリオがまたちょーし乗りそうだし、聞かないけどね。
まーそれでも、夜になると宿題教えて貰うの理由にして、毎晩ノリオんとこ押しかけて、寝るまで一緒に過してたんだけど。
この頃からノリオのこと好きだったの?とか聞かれると、正直言ってメグでもよく解んない。 気が付いたら、ノリオ以外の男子に興味が無くて、友達とかと遊んでてもノリオが居ないとつまんなくなってた。
学校とかでたまに男子に告られたりしたけど、毎回(早く帰ってノリオと遊びたいんだけど!)って思いながらゴメンナサイしてたし。
それでも、ノリオを男子として好きだって自覚は無かったと思う。
なのに、ノリオが「メグっちはモテるのに、何故俺はモテないんだ!?」って言い出して、(え!?ノリオって恋愛興味あったの!? カノジョとか欲しいの???)ってすっごいビックリ。
それで無意識というか本能的に?(ノリオが他にカノジョ作って、その子ばっか構ってメグほったらかしにされるの、すげー嫌!)って思って、とっさに「メグが居るからいーじゃん!」って訴えてた。
まーこのことは、何も心配する必要は無かったんだけどね。中学の間は。
ノリオ、急に色気づいてイケメンにでもなったつもりで女の子とかに話しかけたり、少女漫画みたいな甘い言葉で口説こうとしたりするから、みんなから「ちょーキモイ」って今まで以上に距離置かれてるし。
だからメグは完全に油断してた。
ノリオに近づく女子なんて居ないから、このままいつもの様にのんびりノリオと一緒に過すだけで満足だったし、男子として意識はしてたと思うけど、カレシにしたいとかキスやエッチなことしたいとかは考えて無かったし。
でもノリオはそうじゃなかったんだよね。
高校入ったら今まで以上にちょーアクティブなの。
あの無口で鼻水垂らしてた得体の知れない男の子だったノリオが、可愛い子とか綺麗な先輩とか見つけるとグイグイ押してくの。
そうなると、流石に焦るよ。
だって今までみんなキモイって言ってたのに、中にはノリオのこと面白いって言って楽しそうにお喋りする子とか、ノリオに怒りながらも自分から構おうとする人とか出てくるし。
もうこーなると、メグの対抗心に火が点いた。
自分でもジワジワ焦るのが分かってた。
でもメグのノリオへの気持ちって、恋愛的な”好き”よりも、幼馴染としての独占欲からの”他人に渡したくない”っていう気持ちだって思い込んでた。
それで、もっとメグのこと構って欲しい! メグだって他の子に負けてないんだから!って言いたくて、積極的にアピったの。
放課後デートに連れ回したり、ノリオが好きだっていうから見せブラの代わりにスクール水着も来たし、久しぶりに一緒にお風呂にも入ったし。
それで、ノリオは屁理屈多くてメンドーな性格してるけど根はどちゃくそ正直な男だから、メグがアピ頑張るとすっごく喜んでくれるんだよね。
ノリオが喜んでくれるのが嬉しくて、そんなノリオ見ててようやく気が付いた。
ノリオのこと、好き。
いやぁ~、今までの行動振り返ると、どう見ても「オマエ、そんなにその男の事好きなのかよ!」って感じだし、そう言われても否定できんけど、自覚はなかったね!
ノリオが興奮して喜ぶ笑顔見て、好きって自覚するまで、独占欲だって思い込んで無自覚にムキになってアピってたね!
なのにさ、ノリオは相変わらずでメグ以外の女子口説くし、サクラちゃんとか普通にノリオのカノジョみたいに振舞い出すし、挙句は担任のキョウコちゃんまでノリオのこと好きだって言い出すし。
ノリオはメグのこと好きだって言ってくれるし、メグと一緒に過す時間もちゃんとしてくれるけど、やっぱり他の子にも気持ち行ってるのが面白く無くて、最初はサクラちゃんにもキョウコちゃんにもケンカするつもりで、絶対負けんし!って思ってた。
だけど、ノリオはみんな仲良くしてほしいって言うんだよね。
どんだけ女たらしなのさ!って思うけど、ノリオって口で散々甘い言葉で口説くだけあってどの子のこともすっごい優しくするし大事にしてくれてるんだよ。
それにサクラちゃんもキョウコちゃんも、そんなノリオの気持ちに納得してて、私から見てても二人とも相思相愛なの。
メグだけなんだよね、意地になって独占欲出してノリオを独り占めしたいって言ってたの。
そんなメグに、ノリオもサクラちゃんもキョウコちゃんまで、優しく真剣に話してくれたの。
メグがどんなに怒ってても、みんな怒らず優しいの。
それでメグも「サクラちゃんは私にも凄く優しくて友達になりたいって言ってくれるし、火野先生もノリオのこと抜きだったらもっと仲良くなれてたんだろうな」って思って、それで直ぐに「ノリオのことでメグがムキになるの止めて素直になったら、全部上手くいくんじゃね?」って気が付いて、そう思ったらキョウコちゃんのことも「少しくらいメグも歩み寄るかぁ」って思えるようになれて。
今は、まだまだノリオのこと独占したい気持ちもあるし、たまにサクラちゃんやキョウコちゃんに嫉妬することあるけど、憎いって思うことはもう無いよ。
口では相変わらず俺様で偉そーでキモイけど、ノリオが3人のこと凄く大事にしてくれてるの分かるし、誰か一人でも嫌な思いしないようにノリオが自分に凄く厳しくしてるの見てて分るし、サクラちゃんもキョウコちゃんもそういうノリオをちゃんと分かってて、みんなそんなノリオの気持ちを尊重して協力しようって考えてて、メグも同じ気持ちだし、今の4人なら、なんかどんなコトでも乗り越えられるような気がするし。
将来のこと考えると不安もあるけど、メグの密かな希望っていうか夢?は、4人で一緒に暮らすの。
しっかり者でリーダーのサクラちゃんが居て、一番大人で常識と非常識がごちゃ混ぜのキョウコちゃんが縁の下の力持ちで、メグはみんなを繋ぐムードメーカー的なマスコットポジで、ノリオは家事全般。
ね?
4人が本当の家族になったら、最強じゃね?
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