#38 愛すべきハーレム主人公とは
翌日の月曜日
いつもの様にメグっちやクルミと登校して教室へ。
俺の席の隣には、フジコさんが既に登校しており座っている。
俺は、フジコさんをもうヒロインとして扱わないと決めていた。
なので今後は距離を取って行く様にする。
だからと言って、無視して口を聞かないとかはしない。 流石に無視するのはハーレム主人公以前の問題だと俺は思っている。
でも実際問題、今後は非常に難しい対応を要求されるだろう。
・口説かない、甘い言葉を囁かない
これは簡単だ。 しなければ良いだけだし。
・思わせぶりの態度を取らない、その気にさせない
これも大丈夫だと思いたい。
ただ俺の主人公力は、意図せず発揮することが多いから不安が残るが。
・相手からのアプローチを躱す
これも何とかなると思う。
常に警戒心を強く持っていれば大丈夫だろう。
・「最近、私のこと避けてる?」や「私のこと、嫌いになった?」など詰め寄られた時の対応
これが非常に悩ましい。
だって、散々今まで甘い言葉で口説いて来たからな、今更なんて言って分かって貰えばいいんだ?
例えば定番の「他に好きな人が出来た」は通用しないだろう。だってハーレム主人公だし、実際に好きな子、他に何人もいるし。
あとは「興味が無くなった」や「魅力を感じなくなった」だと、これなら問題無さそうに聞こえるが、実はこういう言葉は相手にまだチャンスがあると思われかねない為、後々まで尾を引く可能性が残る。
となると、すっぱり両断するように「嫌いになった」や「顔も見たくない」など、キツイ言葉しかないだろう。
しかし、この様な言葉は俺がハーレム主人公である限り、俺の存在そのものを揺るがしかねない。
使ってはいけない言葉だと俺は考えている。
唯の女たらしのゴミクズか、愛すべきハーレム主人公か
俺はその違いをそこに見出している。
なので、フジコさんへの対応は慎重にならざるを得なく、また厄介なことに席が隣で有るため、沢山会話する機会もあり、その度に俺はハードな対応を求められることとなる。
「おはようございます、フジコさん。 ・・・・・」
「ノリオくん、おはようございます。 あれ?」
フジコさんは第一声から異変に気が付いたようだが、俺は敢えてスルーだ。
「ノリオくん、何だか元気がありませんか?」
「いえ、そんなことないですよ。 俺の心はカリブ海の青い海よりも爽やかに晴れ渡っていますよ。 カリブ海行った事ありませんが」
し、しまった!? 無駄に話を広げてしまった!
いつもの悪い癖が出てしまった!
「そ、そうですか・・・ノリオくんは相変わらず面白いですね」
「そ、それはどうも・・・」
やっぱり難しい。
今まで女の子との会話って、相手を自分にホレさせることばかり考えてたからな、逆に相手に自分のことを興味持たれない様に話すのって難しいぞ。
「そういえばノリオくん、今日の部活なんですが」
おっとそうだった。
最近、部活の時間はみんな怪しい不在が多くて、フジコさんとも部活では顔を会わせないことが続いていたんだった。
「はい、なんでしょうか?」
「他の3人がお休みなのでノリオくんと私の二人きりの予定なんです」
「あ、じゃあ俺も休みます。 今日は部活自体お休みにしましょう」
「え!? それは困ります! ノリオくんは来てくれないと!」
「困るっていうことは無いでしょう。 文芸部内の序列で言えば、俺なんて一番下位ですよ」
「そういう問題じゃなくて! 兎に角ノリオくんが来てくれないと困るんです!」
そんなやり取りをしていると、教室にキョウコちゃんがやって来てHRが始まった。
う~ん、今日のフジコさんはいつになく妙な感じがするな。
今までは俺が距離を詰めようとすると、ヒラリと躱される感じだったのに、今日は逆だ。 俺がヒラリと躱そうとすると、感情的になって追いかけてくるイメージ。
俺が態度を変えてくることを予測していたのか?
それとも偶々?
あ、そういえば先週の水と金は、日比野さんや金田ツインズに馴れ馴れしくされて、さらりと突き放してさっさと帰ったんだった。
その俺の態度から何かを察して、フジコさん本人が詰め寄って来たということか?
何にしても、これは主人公とヒロインの恋の駆け引きなんかでは無い。
キョウコちゃんの大好きな、周瑜の欲望と孔明の知略との勝負と一緒だろう。
この場合は、フジコさんが周瑜で、俺が孔明か。
無事に荊州まで逃げ切れるかが試されている。
俺は、子猫ちゃんたちが待つ俺のハーレムまで無事に逃げ切り、子猫ちゃんたちと楽しいイチャイチャタイムを過ごすんだ!と気を引き締め直した。
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