#39 頼りにならない幼馴染と先輩
俺はお昼休憩の食事の時間に、朝のフジコさんとのやり取りをメグっちとサクラさんに小声で相談した。
「そんなの簡単だし。 今日はメグとデートだからむ~り~!って言えば終わりだし」
「別にメグじゃなくて私でもいいぞ? まだカラオケに行ってないしな、今日こそ行こうか?」
折角俺が小声で相談しているのに、二人はデカい声で台無しである。
「声デカいよ! ほら!こっちチラチラ気にし出したじゃないの!」
俺は相変わらず小声で二人に抗議する。
「サクラちゃん、おかしくない? 今日はメグが先にデートするって言ったんだし! サクラちゃんは今日は勉強の日だし!受験生がカラオケ行ったらダメなんだし!」
「ちょっと待てメグ!受験生がカラオケ行ったらダメだなんて誰が決めたんだ? だいたいメグはノリオのお隣だしクラスも同じでいつも一緒にいるんだから、こういう時は私に譲るべきだろ!」
俺の必死の抗議を無視して、二人が不毛な言い争いを始めた。
フジコさんは、相変わらずコチラをチラチラ気にしている様子。
目の前では、メグっちとサクラさんが唾飛ばし合いながら大声で言い争っている。
俺の弁当にまで唾飛んできてるし、とにかくこの場は二人を静かにさせねば。
そしてこういう時はドチラか一方の肩を持つのは厳禁・・・となると
「もう良いよ俺部活行くから。 カラオケは二人で行けばいいじゃん。 俺は文芸部で寂しく本でも読んでるからさ。 あーフジコさんと二人きりかぁ、何言われるんだろなぁ、怖いなぁ。 ホントは休みたかったのになぁ、二人がケンカになるから休めないしなぁ」チラっ
たまには、スネてみた。
「だからメグのが先だし! サクラちゃんは明日がデートの日なんだから今日は真っ直ぐ家に帰らないとダメなんだし!」
「なぜメグに家に帰らないとダメとか言われないといけないんだ? 家に帰ろうがノリオとデートしようが私の勝手だろう?」
全然聞いてないし。
はぁ
と溜め息を吐くと、離れた所でコチラの様子を伺っていたフジコさんと目が合った。
目が合ったフジコさんは、慌てた様子で顔を背けた。
な~んか気まずいな。
空気重くなりそうだけど、まぁ距離置くには丁度いいか。
結局、俺は放課後文芸部に顔を出すことにした。
因みにメグっちとサクラさんは、二人で仲良くショッピングモールに買い物に行くらしい。
今まで模範生だったサクラさんがメイクに興味持ったらしくて、買いながらメグっちが色々教えるんだってさ。 デートとかカラオケとか言ってケンカしてたのは、なんだったんだよ、まったくやれやれだぜ。
放課後、いつもの文芸部の教室に向かう為、荷物を持って教室を出ようとすると、フジコさんが声をかけてきた。
「ノリオくん! 帰っちゃうん、ですか・・・?」
「いえ、文芸部の教室に向かおうと」
「ホ、ホント!? なら一緒に行きましょう!」
フジコさんはそう言って、慌てるように荷物を纏めていた。
「待ってますので、そんなに慌てなくてもいいですよ」
「大丈夫です。もう終わりましたから。 では行きましょう」
廊下を歩きながら、他の部員のことを教えてくれた。
日比野さんは書いている小説の資料集めに金田ツインズを連れて市立図書館に行っているらしい。
「だから今日は二人だけなんです」
「そうですか。 フジコさんも何か小説とか書いているんですか?」
「いえ、私は書いてませんよ。 色々と調べてはいますが」
ラブコメ症候群とか?
と思わず聞きたくなったが、ガマンした。
文芸部の教室に着くと荷物を降ろして、いつも座っている席に腰掛ける。
特にすることは無いので、黙って待つことにした。
フジコさんも荷物を置くと、俺のすぐ右隣の席に座った。
いつもと違う席だ。
フジコさんはいつもだったら俺の向かいの席。
「ノリオくん」
「はい?」
名前を呼ばれたので、フジコさんの方を向くと、座ったまま抱き着かれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます