#26 当然、幼馴染ともするよね



 サクラさんを自宅まで送り届けてから帰ると、メグっちが来ていた。



「サクラ先輩来てたの?」


「おう、今、家まで送ってきた。クルミから聞いたの?」


「うん、クルミんから「ジジイが美人の先輩連れて来てた」って連絡あった。で、なんの用だったの?」


「キョウコちゃんのことを報告した。あとこれからのことを相談してた」


「ふーん」



 メグっちは、まるで「興味ありませんよ」と言いたいかの様にスマホをいじりながら会話しているが、その態度が余計に(ホントは凄く知りたいけどそんな態度は見せたくない)って考えてるのが手に取る様に分かった。



 俺はサクラさんの時の様にベッドに腰掛け、メグっちを隣に呼ぶ。


「メグっち、こっちにおいで」


「は?いまメグ、チャットで忙しいし」


「いいからいいから」


 メグっちがめんどくさそーに起きて俺の隣に座ると、すかさずギュっと抱きしめて無理矢理キスをした。


「んんんん!?」と少し抵抗したけど、口の中に舌を捻じ込んでディープなキスをし始めると抵抗しなくなった。


 口を離してから、ゆっくりと話しかけた。



「メグっち、今まで色々と振り回してごめんな。 でも俺はメグっちのことが好きだよ。これからもずっと一緒に居たい。 でもさ、サクラさんやキョウコちゃんも同じように思ってるんだ」


「うん・・・ノリオ見てたらそう考えてるのは分かってた」


「誰か一人を選ぶことなんてことが出来ないんだよ・・・俺とメグっちのように積み重ねてきた長い月日も凄く大切な物だけど、その人を大切に思うかどうかっていうのは、付き合いの長さだけじゃないんだ」


「・・・・・」


「ただ、誤解させたくないから敢えて言うけど、もしメグっちと幼馴染じゃなくても、きっとメグっちのこと好きになってたと思う。 俺にとってメグっちは、付き合いの長さだけじゃないんだ。メグっちはそれくらい魅力的な女の子だよ」


「そっか・・・わかった。 メグもノリオのこと、好きだし・・・ただ、もうちょっと考えさせて。 特に火野先生のことは直ぐには気持ちの整理出来そうにないし」


「うん、もちろん。 メグっちが自分で結論出すまで待つよ。 あと、サクラさんとも上手くやって欲しい。色々面白くないだろうけど、サクラさんは別にメグっちと争おうなんて思ってないからな?」


「それは分かってる。っていうか、サクラ先輩に関してはノリオ次第かな? ノリオがサクラ先輩ばっか贔屓するのが面白くないんだし」


「そうか? 特別贔屓にしてるつもりは無いけど、でもサクラさんは年上だしメグっちに比べて付き合い短いから、無意識に気を使ってるかもな。 逆にメグっちは慣れ過ぎて気を使えなくなってるのかも。 これからはメグっちのことも気遣えるように大切にするよ」


「うん、ありがと。そうしてくれると安心できそう」



 メグっちはそう言うと、目を瞑って「ん」と今度は自分からキスをねだってきた。


 再びメグっちの唇にキスすると、メグっちの方から舌を絡ませてきた。



 そのままベッドに倒れ込んでお互い夢中になってディープキスを続けていると、扉がバンと開いてクルミが立って居た。


「メグちゃん来てる~?って、二人とも何してんの!? っていうかジジイのクセに二股とか死ね!!!」と怒鳴ってバンと扉を閉めて行った。


「クルミん、ちょーイカってたけど、だいじょーぶなん?」


「クルミはいつもああだから」


「そだね」


 ふふふと二人で笑い合って、お互い何も言わずに再びディープキスを始めた。












 翌朝、クルミの態度はいつも通りで、いつもと同じように起こしてくれたし、登校中もメグっちと普通に会話をしていた。



 教室に行くと、フジコさんに朝の挨拶をして、昨日部活を休んだことも謝った。


 フジコさんもいつも通りで、特に俺を責めることも無く、また優しい態度だった。


 けど俺は、以前の様にフジコさんのことを”メインヒロイン”とは思えなくなっていた。


 文芸部軍団への疑念だけでなく、俺の中でのメグっちやサクラさん(あとついでにキョウコちゃん)の存在が大きくなっていることが大きな理由だろう。






 朝のHRが終わると教室から出て行くキョウコちゃんを廊下で捕まえて、「今日の放課後相談がある」とお願いした。


 キョウコちゃんは俺の言葉にパァと笑顔になったが、周りに他の生徒がウロウロしているのに直ぐに気付くと引き締めた顔に変わり「わかった。 放課後、文芸部の教室に来てくれるか?」と話しを聞く約束をしてくれた。



「じゃーあとでな」と言って職員室へ戻るキョウコちゃんをその場で見送った。


 廊下を歩いていくキョウコちゃんの後ろ姿はやはりセクシーで、その綺麗な曲線美が見事なお尻は、いつまで眺めていても飽きることは無かった。









 この日からお昼ご飯は、メグっちとサクラさんと3人で食べるようになった。


 メグっちとサクラさんは、ぎこちないながらも会話をしてて、お互い歩み寄りの態度が見て取れた。



「二人が仲良くしてくれると嬉しいよ。 二人とも、ありがとうな。流石俺の可愛い子猫ちゃんたちだぜ」


「まぁメグは、ノリオがちゃんとメグのこと見てくれるなら、それでいいし」


「ふふふ、私は土田さんとも仲良くなりたいと思ってるよ? 何せ私には他に友達が居ないからね」


「なんか・・・サクラ先輩って、昔と変わり過ぎじゃない???もっと怖いイメージあったんですけど?」


「おう、サクラさんは風紀委員の頃と違って、今やギャップ萌えのきゅんきゅんヒロインだからな」


「ふふふ、全てノリオのせいだな。ノリオが私を変えてしまったよ」


「どんだけガチラブなんだし!」


 そう言って、メグっちもクスクス笑いだした。


 この日から、メグっちも”サクラちゃん”と呼び、サクラさんは”メグ”と呼ぶようになった。



 まだまだ問題は起きそうだけど、二人のヒロインが少しづつでもお互いを認め合っていければと思う。


 その為にも、ハーレム主人公としての俺の責任は重大だろう。




 もう、罪作りな男のままじゃダメだな。












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