#25 ファーストキスを先輩に
週が明けて月曜日。
本当なら文芸部の部活動がある日だが、この日の放課後は部活を休んだ。
もちろん事前に部長のフジコさんには断ってある。
休んだ目的は、サクラさんに会う為だ。
事前にサクラさんに「大事な話がある」と伝えると、「1度ノリオの家に行きたい」と言うので、人にあまり聞かれたくない話をしたかったのもあり、俺の家へ行くことになった。
「ここが俺んちです。 因みに隣の青い屋根の家がメグっちの家です」
「へぇ~、本当にお隣さん同士なんだね。 正直言ってこういうのに憧れるな。私もノリオのお隣で小さい頃から一緒だったら、もっと楽しい子供時代が過ごせただろうなぁ」
「どうなんでしょうかね。でも今までの子供時代があるからこそ、今のサクラさんの魅力が出来上がってる様にも思うし。 あ、どうぞ上がって下さい。 親は留守ですが妹が居るかもしれません」
「ああ、お邪魔するね。 妹さんは1年だったっけ?」
「ええ、ツンデレで生意気ですけど、可愛いヤツですよ」
「ちょっと会うのが緊張するな」
「サクラさんなら大丈夫ですよ」
妹はまだ帰っていない様だったので、手洗いうがいを済ませたら、直ぐに俺の部屋に案内した。
「飲み物用意してくるんで、適当に座って待ってて下さい。本棚の本とか勝手に見て貰ってもOKなんで」
「ああ、気を使わせてすまないな」
台所に行ってグラス2つとファンタオレンジをペットボトルごと持って自室に戻ると、サクラさんは俺の中学の時の卒アルを見ていた。
「ただいまです。 卒アルですか?」
「ああ、これは凄いぞ!ノリオ!!! ノリオが今よりも可愛いぞ!!!」
「へ?可愛い???」
サクラさんは中学の頃の俺の写真を見て、物凄く興奮している。
「イイ・・・とてもイイ・・・食べちゃいたくなる可愛さだ・・・・」
「ふっ、何言ってるんですか、サクラさんのがもっと可愛いですよ?」
俺は適当にサクラさんと会話しながら、グラスにファンタオレンジを注いだ。
サクラさんの興奮が納まらないままだが、メグっちがいつ襲来するか分からないので早速本題に入ることにした。
俺はベッドに腰掛けてサクラさんも隣に座る様に促し、サクラさんの手を握りながら話し始めた。
「サクラさんに大事な報告があるんです」
「うん、何があったんだ?」
「ヒロインの一人だったキョウコちゃんが、完全に堕ちました」
「え?キョウコちゃん? 誰その人?」
「ああ、ウチの担任の火野キョウコ先生ですよ」
「はぁ!? ちょっと待ってくれ!先生だと!? 色々と衝撃が強すぎて理解が追い付かないぞ!」
「とりあえず現状だけ整理しますと、今俺のハーレムにはサクラさんとメグっちと、そしてキョウコちゃんの3人が居ることになります」
「それは分かった・・・分かったが、分からん!何故先生が? 何をどうすればそうなるのだ? 教師なのに生徒に手を出したということか???」
「えーっと、手を出されたかと言われるとグレーゾーンですかね。 セックスはしてません。 でもエッチなプレイには付き合わされました。キョウコちゃん、生粋の変態なので」
「おいちょっと待て!その変態というのは、アレか。土田さんのスクール水着よりもか???」
「・・・・はい、あんなもんじゃありませんでした」
「なんてことだ!? 私にはスクール水着ですら厳しい戦いだというのに!?」
「いや、キョウコちゃんに張り合う必要ないですよ。 あの人は別次元なので」
「だからと言ってだな・・・しかしノリオ、お前ってヤツはどこまで罪深い男なんだ・・・私はちょっと心配になってきたぞ?」
「俺のことを心配してくれるだなんて、可愛い子猫ちゃんだぜ、まったく」
「今の私はそんな口説き文句に一々相手をしている余裕はないぞ。 それでこれからどうするんだ?」
「えっとですね。 まずはサクラさんの意思を確認したかったんです。 俺はサクラさんの事が好きです。 他のヒロインもですが、大切な人だと思ってます。 サクラさんはどうですか? メグっちが居てキョウコちゃんが増えて、この先さらにまた別のヒロインが増えるかもしれません。 増えずにこのままの可能性もあります。 それでもサクラさんはこれからも俺に着いて来てくれますか?」
「もちろんだ。 私もノリオが好きだ、大好きだ。 ノリオのヒロインとして誓ってもいい」
サクラさんは、俺の問いかけになんの迷いも無いかの様に即答してくれた。
俺を真っ直ぐ見つめるサクラさんは、とても真剣な表情で、そして気迫が籠っていた。
俺は「ありがとう、サクラさん」と言ってサクラさんの頬に手を添えるとサクラさんは目を閉じてくれたので、その唇に口づけをした。
俺のファーストキスは、サクラさんとなった。
キスの後、再び興奮し始めたサクラさんをなんとか宥めて落ち着かせてから、キョウコちゃんとのいきさつやキョウコちゃんの自宅であったことを掻い摘んで話した。
そして、1つのお願いを話した。
「サクラさんにお願いがあります」
「ああ、何でも言って欲しい」
「メグっちやキョウコちゃんと争ったりモメたりしないで欲しいんです」
「なるほど・・・私は全然良いのだけど、いつも怒って突っかかって来るのは土田さんの方だぞ?」
「ええ、分かってます。だから大人の対応が出来るサクラさんからお願いしてます。 当然メグっちやキョウコちゃんにも同じお願いをします。 因みに、メグっちにも既にキョウコちゃんの話はしました。 怒って納得しなくてその時はそのまま保留になりました。 あとキョウコちゃんですが、メグっちとのことは知ってますが、サクラさんのことはまだ話してません。 キョウコちゃんにも近いうちに話すつもりです」
「わかった。 つまりノリオは、私たちの中から一人を選ぶのではなく、このまま3人を大切にしてくれるということか?」
「はい、今はそう考えてます。 正直凄く悩んでますけどね。 サクラさんとの距離が近くなる前は、誰か一人って思ってたんですけど、サクラさんとメグっちを見てたら、選べなくなりました」
「そっか・・・ノリオはハーレムの主人公だしな・・・私はノリオの考えを尊重するよ。 それに協力もする。何せ私は先輩でもあるからな」
「ありがとうございます。 やはりサクラさんはサクラさんです。 頼れる先輩だ」
「ふふふ。 あ、1つ私からもいいか?」
「ええ、何でも言ってください。 可愛いサクラさんのお願いなら喜んで聞きますよ」
「1度3人で集まって話をさせてくれないか?」
「ええ、それは構いませんが、大丈夫ですか?」
「う~ん、正直に言うと分からない。 だけど、意思表示はキチンとしておきたいと思ってな。「私はノリオが好き。ノリオの考えを尊重する。他の二人とも上手くやっていきたい」 こういうのは最初に意思表示しておくのが一番効果的だと思うんだ」
「なるほど・・・では、二人に相談してみます」
話がまとまったところで夕飯を作ることになり、サクラさんも手伝ってくれたので、帰っていたクルミと3人で夕飯を食べた。
クルミはサクラさんに対して「ジジイみたいな頭のイカレたの、マジで止めた方がいいですよ」と、やはりお兄ちゃんが盗られてしまうのが嫌なのか、ネガティブな事ばかり言っていた。
サクラさんはクルミに何を言われても「妹って可愛いな!ウチは一人っ子だから妹とか憧れるぞ! 1回”お姉ちゃん”って呼んでみてくれないか!?」と終始興奮していて、クルミの方がタジタジだった。
「お、おねーちゃん?」
「ひゃぁぁぁぁ!!!」
興奮したサクラさんは、食事そっちのけでクルミに抱き着いて離さず「コイツ、ちょーウゼェ」とクルミに冷たくされるようになり、やはりクルミがデレることは無かった。
今日はまだ、メグっちとサクラさんを鉢合わせはさせたくなかったので、食事が済むとサクラさんを家まで送って行った。
サクラさんの家まで歩いて行きながらキスの話になり、僕もサクラさんもファーストキスだったことにサクラさんは驚いていた。
「そ、そうか・・・てっきり土田さんとはもうキスくらいしてるのかと思ってた」
「メグっちとは、そういう雰囲気にはなったことないですね。 ハグとかスキンシップは普通にしてますけど、慣れすぎちゃっているんでしょうね」
「なるほどなぁ」
そんな話をしていたら、サクラさんの自宅に着いたので、最後にもう1度キスをしてから帰った。
サクラさんはずっとニヤニヤしてて、風紀委員の頃の様な凛々しさの欠片もなかった。
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