#22 裏切られた美人教師、堕ちる



 キョウコちゃんが腐女子だと知ってからというもの、キョウコちゃんの視線が気になる。 気になるというか、疑念が付き纏って落ち着かない?



 ある日の文芸部にて。

 この日は顧問のキョウコちゃんが部活に顔を出した。


「どうだ水元? 文芸部にはもう慣れたか?」


「ええ、相変わらず活動内容がよく理解出来ませんが、言われたことはちゃんとやってます」


「ん?水元にしては、妙に大人しいな? 熱でもあるのか?」


 そう言って、キョウコちゃんは顔を寄せて俺のおでこに手を当てた。

 俺の目の前で今度は自分のおでこに手を当てるキョウコちゃん。


「う~ん、熱は無さそうだが・・・ってどうした?そんな顔して。 私の顔に何か付いているのか?」


「いえなにも・・・」


「やっぱり今日の水元はなにかおかしいぞ?」


「・・・・」


 キョウコちゃんはメガネの奥で目をパチパチさせながら、俺の顔をマジマジと見つめる。 いつもだったらキョウコちゃんにこんな風にスキンシップされたり見つめられたら、調子にのって口説き文句の1つでも言って揶揄うところだが、今の俺はどうしても勘ぐってしまう。



 そんなこと口では言いながら、どうせ脳内では腐った妄想で俺の事を凌辱させているんだろ! と。




 そして俺は、耐えきれなくなって遂に言ってしまった。


「キョウコちゃん・・・他人の性癖をとやかく言うのは良くないことだと理解してるけど、生徒で腐った妄想をするのはどうかと思いますよ?」


「な、なななななななんだと!?み、みみみ水元、お前はナニヲイッテルノダ!?」


 ほらやっぱり

 あからさまに動揺しちゃってさ、やれやれ



 そしてキョウコちゃんの矛先は文芸部メンバーへ

「まさか・・・お前たち! 私のことをバラしたなぁぁぁ!!!」


「まぁまぁ、火野先生がそういう方だというのは文芸部では周知の事実じゃないですか。 ノリオくんが入部した時点でいずれはバレる話ですよ?」


「う、裏切者ぉぉぉ!!! いや違うんだ水元! 普段女子には俺様系で生意気な水元が男子に迫られた時だけ見せる弱気で乙女ちっくな姿を妄想したりしてないぞ!そんな妄想しては夜な夜なキュンキュンと捗ったりしてないんだからな!私を信じろ水元!」



 おい、ガチなヤツじゃねーか


「ああもうお終いだ・・・私の人権も教師の威厳もゴミクズ同然にぃぃ!!! 水元だけには・・・嗚呼」


 キョウコちゃんは、見た目は美人だしスタイルも完璧で、教師なのに超セクシーメガネお姉さんだ。 キョウコちゃんのお尻の形とか、凄く理想的だしな。


 問題なのは、気性の荒さと性癖が残念なところ。

 ホントそれさえ無ければ、と何度も考えた。



「キョウコちゃん。このまま嫁の貰い手が無いのなら、いつでも俺の所に来るといいさ。 但し、その性癖は直してからな!!!!」


「いやそれは無理だな」


「なんでだよ! まともな人生と腐った妄想、天秤に懸けたらどっちが大事なんだよ!」


「どう考えても性癖のが大事だろ! 男の水元には解らないだろうがな、私は10年間、心にBLの魂を宿してきたんだぞ! お前の様なノーマル性癖野郎にBLの尊さが分かる物か!!!」


「BLが尊いとか生徒に向かって吠えて、マジやべーなキョウコちゃん」


「おい!そこで急に冷静に返すなよ!」



 キョウコちゃんが唾まき散らしながら吠えて暴走が止まりそうにないので、俺は黙ってキョウコちゃんを抱きしめ頭をそっと撫でながら優しく言い聞かせた。

 

「キョウコちゃん、もう良いんだよ。 俺が付いているからな。 俺は年下で生徒だけど、俺たちの間にはそんな障害は些末なことだよな」


「水元・・・」


「まったく、キョウコちゃんは教師だっていうのに、手のかかる子猫ちゃんだぜ、やれやれ」


「ううう、水元ぉ~ お前だけだぁ、本当の私を理解してくれるのわぁ うわぁ~ん」



 キョウコちゃん(29歳独身)は泣きながら、俺に抱き着く手に力を込めた。


 こうして、何だかよく解らないカオスな状況から一転、キョウコちゃんのハートを鷲掴みしてしまった。


 俺の主人公力、まじで凄すぎるな。

 自分で自分が恐ろしいよ、まったく。



 そう

 俺は罪作りな男、ノリオ。







 そしてこのやり取りの全てを見守っていた文芸部部員達は


「遂に火野先生までも・・・」


「凄いね~!あの暴れ馬の火野先生が簡単に堕ちちゃったね~!」


「先生チョロすぎないっすか?」


「いやこの場合、水元先輩が凄すぎるんすよ」



 やはり胡散臭い部員たちであった。







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