#09 幼馴染は毎晩突撃してくる



 食事のあと、洗い物はクルミに任せて俺はお風呂に入る。


 小学生の中学年の頃までは、毎日クルミと一緒に入って頭を洗ってあげたりしていたが、クルミが高学年にもなるとツンデレが始まり、一緒に入らなくなった。


 でも、俺は知っている。

 クルミがお兄ちゃん大好きっ子なことを。

 ただ思春期にありがちな、素直になれないだけなことも。

 ホントは一緒にお風呂に入りたいし、一緒のお布団で寝たいこともね。


 いくらお兄ちゃんが素敵すぎて意識してしまうからって、家ではもっと素直になれば良いものを。



 そう

 俺は罪作りな男、ノリオ。












 お風呂から出て自分の部屋で一人で宿題をしていると、突然扉がガラっと開いた。


「ノリオー、宿題持ってきたし」


 メグっちである。

 メグっちは、遠慮とか無縁の生物なので、毎日の様に夜になるとこうやって俺の部屋にやって来ては俺に宿題を手伝わせる。

 小学生の頃からずっとだ。

 今では妹のクルミよりも俺の部屋への訪問回数が多いだろう。


 そう

 メグっちは勉強もちゃんとするギャルなのだ。





 メグっちの服装は、いつでも寝られる様に、モコモコのパジャマだ。

 上はパーカータイプで、下はショートパンツタイプ。

 お風呂上りな為、ボディーソープなのかコンディショナーなのか不明だが、良い匂いを漂わせている。もちろんスッピンだ。


 ここで普通の男子高校生だと、ムダ毛が全く無いツヤツヤムチムチの生足にドキがムネムネと興奮冷めやらぬだろうが、俺は主人公様。 メグっちごときギャルの生足くらいでは、俺の性的センサーはピクリとも動かない。


 何せ、10年以上毎日の様に見てきているからな。



 因みに、メグっちが俺の部屋で勉強する際、テーブルや机は使わない。

 床にゴロンと寝そべってノートやテキストを広げて勉強するのだ。


 質問の度に勉強机からメグっちのところに呼ばれるのは面倒なので、俺もメグっちの横に一緒にゴロンと寝そべって勉強を再開する。



「ココ、マジやばい。全然わかんね。ノリオ教えて」


「ココはだな、これの公式つかってココからこうすれば―――――」


「なる、やってみるし、さんきゅ」


 こんな感じで、俺がメグっちの勉強を見る様な感じだ。



 1時間ほど二人で勉強を続けていると、不意にメグっちが質問してきた。



「ところでノリオ、フジコちゃんのこと、好きなん?」


 フジコちゃんとは、同じクラスで俺の隣の席の月野フジコさんのことだろう。

 クラスのマドンナ的存在で、ラブコメでいうメインヒロインの様な魅力的な女性だ。


「俺は主人公だからな、好きというか、俺と釣り合うメインヒロインは月野さんだけだろうって話さ」


「いや、それノリオの妄想だし、ノリオの妄想甚だしいし!」


「甚だしいとか難しい言葉、良く知ってるなメグっち。エライぞ」


「いや、メグだってバカじゃねーし、バカにするなっつーの! てか、いまそんなんどーでも良くて、フジコちゃんの話だし」


 ははーん

 さてはメグっちめ、俺が月野さんに盗られると思って焦り出したな?

 しかし残念だが、メグっちは幼馴染だ。


「メグっちよ、幼馴染っていうのはだな、主人公とは結ばれない運命なんだぜ? 負けヒロインって呼ばれてるくらいだしな」


「いやだから、メグの話じゃなくてフジコちゃんの話だし」


「月野さんは、今は恥ずかしくて素直になれないだけで、間違いなく俺にホレているな」


「なんでそんな自信ありげなん!? どこからその自信きてんの!?」


「そんなの決まってるだろう。 俺は主人公様だからな。 こればっかりはどうしようもないな」


「いままでノリオの妄想癖くらい別にへーきだったけど、フジコちゃんがホレてる説はガチヤバイし。キモすぎておしっこ漏らすレベルだし」


「メグっち、おしっこ行きたいならトイレで頼むな。 俺の部屋で漏らすなよ?」


「だから例えだし! てか、ノリオのその思考、ストーカーとかと同じじゃね?」


「俺がストーカーだと!? いや、マジでありえないんだけど。むしろ俺がストーキングされてるほうだろ!サクラ先輩とか」



 俺が主人公かストーカーかを、メグっちとやんややんやと言い合いしていたら、部屋の扉がバンと開いてクルミが仁王立ちしてた。


「二人とも何時だとおもってんの! いい加減うるさい!」と怒って扉をバンと締めていった。 青のりはまだ付いたままだった。



「ほら、メグっちが焼き餅焼いて騒ぐから、クルミが怒りだしたじゃねーか」


「いやいやいや、ノリオが訳分かんない妄想垂れ流すからっしょ! てかクルミん、最近ちょー短気だし、メグにも遠慮ねーし」


「まぁ、クルミも思春期だしな。それにメグっちや月野さんに俺が盗られそうだと思ってるっぽいし、お兄ちゃん大好きっこのクルミとしては心中穏やかじゃないんだろ」


「え!?ノリオの妄想だとそーゆーことになってんの!? クルミんどう見ても、キモイ兄貴をガチでウザがってるだけだし」


「まぁ、そんなに意地になって決めつけなくても良いからな。 俺には全部分かってるから」



 そう

 俺は罪作りな男、ノリオ。




「・・・・しっかしフジコちゃんか・・・メグもそろそろガチでいくしか」







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