少し迷惑な友情の証
「ささ、ここに座ってー」
なんだここ。
最初にいた銀色の部屋に帰ってきたのだが……部屋の中央ににこたつが置かれている。
そして、そこに座っている輝く金色の人型シルエット。
「お前が……」
「まずは入りなよー、疲れたでしょ?」
疲れたのは事実だ。
だが、今は夏だし、さっきまでジャングルにいたんだぞ?
なんでこたつを用意するんだよ。
暑くて入りたくねーよ。
……でも、川に入ってびちょびちょだから……助かるな。
渋々腰を下ろして、足を入れる。
「君にこれを授けよー」
このシルエットが本に載ってたやつだよな?
たしかに見えない、まぶしくて。
そんなやつが、何かをテーブルの上に置いた。
それは手のひらサイズにきれいに加工された立方体で半透明、宇宙人の光を受けて輝いている。
ルビーやサファイアみたいな宝石に似ているが、色が違う。
七色に光っている。
宇宙産の宝石かな?
「これは僕からの友情の証」
「友情?」
「試練を乗り越えた七つ星の人々にプレゼントしてるのだ」
プレゼント……ね。
くれるなら貰うけど。
俺はそれをズボンのポケットに入れた。
「あれ、なんで俺が七つ星って知ってるんだ?」
ふと疑問に思った。
「ふふふ、みんなそれを聞くよね。いいよ、教えてあげる」
みんなってことは他にも誰かがここに来てるのか?
「あれはついこの間、あー、えっと、君達がまだ刀を持ってぶっ殺しまくってた頃」
急に過去回想が始まった。
てか、いつだよそれ……。
少なくとも「ついこの間」ではないだろ。
刀で戦ってたなら何百年かは遡るはず。
いろいろ気になったが、あえてつっこまずに続きを聞く。
「この船の調子が悪くてメンテナンスのために緊急着陸したの、このアースに」
別に侵略ってわけじゃないんだな。
少し安心した。
「そしたら、見つかったのです。サムライに」
侍に……。
それで、どうなったんだ?
「私は敵意なんてなかったのに、いきなり斬りつけられたのです」
そんなことが。
ひどい奴もいたもんだ。
……いやでも、宇宙人見たら戸惑うのはわかる。
「それで、ワープして逃げたのです。でも、一回しか使えないし、ちょっとしか移動できなかった。だから、またすぐに別のサムライに見つかってしまった」
大ピンチじゃないか。
どうなったんだ?
「でも、その侍は怪我をした私に優しくしてくれました」
よかった……。
優しい人もいたんだね。
「その侍の名前が
なるほど、ここが七つ星家と宇宙人の接点だったのか。
にしても、明って俺の名前とほぼ一緒だな。
両親は先祖の名前から俺の名前つけたのかな。
「だから、僕は彼の願いを一つだけ訊いてみたのです。お礼がしたかったので」
お前もなかなか義理堅いね。
「で、なんて言ったの?」
「俺……そして子供たちの修行に付き合ってくれと」
修行?
あれ、まさか。
「だから、そのときから何十年に一度、地球に来て七つ星の人間に修行をさせているのです」
……。
「それって、あのエイリアンと戦うこと?」
「イエース! あれはギリギリ地球人が倒せるレベルの我が星に住む生き物ですー。地球でいうラビットみたいなもんっすー」
いったいこいつの星にはどんな化け物が住んでんだよ。
二度と戦いたくないわ。
「それにしても君、なかなか危なかったねー」
「当たり前だろ! あんな奴と戦うなんて聞いてない!」
「前回ここに来た女性は、回し蹴りで一発だったのにー」
そんな化け物が七つ星家にいるのか……。
あれ、でも何十年に一度は来てるんだよな?
女性ってことだし、もしかして。
まあ、後で本人に聞いてみよう。
それより気になるのは。
「全知全能の才はどうなったの?」
「なんですか、それ?」
「ここに来たら全知全能の才がもらえるって」
「あはは、それはきっと嘘だよ。私そんなことしたことないもん」
嘘……。
先祖の誰かがどういうわけか、ここに来させるために書いたのかな。
とんだ迷惑だ。
「地球人レベルの脳なら簡単に弄れるんだけど、どうする?」
宇宙人の背後から、おぞましい触手が何本も出てくる。
「い、いや! やめとく!!」
別に頭がよくなるために来たわけでもないし。
あくまで目的は自由研究だ。
「そっかー」
「で、俺いつ帰れるの?」
「あ、もう帰る?」
「うん、疲れたからね」
「了解ー、それじゃあさようなら」
宇宙船内の電気が消えて、真っ暗になる。
俺の意識も暗闇に沈んだ。
―――――――――
「ただいまー!」
翌朝、俺は家に帰った。
「おかえり、明。流星群は見れた?」
母さんが出迎えてくれる。
「あー、うん」
あれもまあ、流星ではある。
そして、これを忘れちゃいけない。
「そういえば、母さんに一つ訊きたいことがあるんだけどさ」
「え? なーに?」
首をかしげる母さん。
「若いころ、格闘技やってた?」
母さんの華奢な体からは、とてもそうには見えない。
しかし、七つ星家の人間ってことは……。
「えー! なんで明知ってるのー!? 恥ずかしいから話したことなかったのにー!」
オーバーなリアクションで驚かれた。
あるらしい。
すると、父さんも出てきた。
「ちなみに、得意技は回し蹴りだったぞ。お父さんは一度それで殺されかけた」
これで確信を得た。
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