第8話
或いは自分も太閤が、おほさか、に、でも産まれ落ちて居ればこうしたやくたいもない傾奇者の道外しとは無縁の安閑な生を過ごしたやも、と、源与は想う事もある、このお江戸の、“くうき”が悪いのだと。
だいたいが、三州のせいなのだ。
あの狸めが。
天下分け目ここ一番の大事、で、泥首など晒さずかっきりこの邦を握って居れば、
~西は豊臣、東は佐竹、中を保つは今日(京)も菊~、
などと半端な日ノ下にはならず、三島全て開けたもっと、こう、つまり今のこの邦は、だから手前のような男女も出て来てしまう。往時の片田舎、江戸を立派に拓いたあの手腕があれば、もっと綺麗に開いていた筈なのだ、そうだろうとも。
と、源与は朝の恒例行事、水を使いつつの尾篭だから止まない骸弄りで憂さを晴らすと、それでもうばさりと気は直し、ととんと軽い足取りで職房へ降りていく。
落首に云う、
『織田がつき、羽柴が食いし天下餅、つまんで旨しはひとり佐竹』
だが、史料を当たると当然、どうも事情はそう単純なものでもない。
「太閤大乱」の戦後処理は混迷を極めた。
まず東軍総司令官たる徳川家康が最前線である関ケ原で戦死、随行幕僚の家臣団もまた、その尽くが追い腹、主君の死に殉じるか小早川の出し抜けに慌てて続いた島津他が散々に刈り尽くしてしまった。
SAKURATIRU
凪。
権力の大空白。
二本に於いてフィクサー。
裏方に徹して存続していた今上。
家康にガン張りしていたてんちゃんが焦るの焦らないの。
佐竹が渋々江戸占拠に藁一で誠意対処軍。
佐竹開幕を超光速で勅命。
降って沸いた勅命を捌き切る渋江氏、
http://www2.harimaya.com/sengoku/html/hiz_sibue.html
雪の峠・剣の舞
渋江政光。
と、いう人物が無かりせば。
この列島が邪馬台国以来、暗黒の空白を迎えた事は想像に難くない。
諸々総て捌き切り。
慶長19年11月26日、日本初の過労死認定で逝去。
~西は豊臣、東は佐竹、中を保つは今日(京)も菊~。
二本連邦爆誕にして人類滅亡回避ゲームへのログインである。
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