7
あ、イヤっ…なぁに、これっ…
そのカウンターの目と鼻の先。ふと気になり立ち止まってみれば、この大きくも小さくもないガラスケースの中に、どこかで見たような形のモノが、しかも複数…
ああ…凄い。どれも、なんて逞しいのかしら…
「実は、さっきから気になっとったんだが、常連さん…」
どっきーん!!
あわわわわっ…はたと我に返ってみれば、新聞をカウンターに置き置き店主さんが、ジッと私を見ています。
「ははは、はいっ?」
『常連…』って、やっぱりバレた!?
その他、計
「…常連さんの男の子で、お嬢ちゃんによく似た感じの子がいてね。もしや姉妹とか、あるいは親戚とかかね」
す、鋭いっ。さすがは、顔馴染みです。
ただ、ここは頷く訳にもいかないので、
「い、いえ…私はひとりっ子ですし、このお店に来るのも初めてなので…」
こう答えるしかなさそうです。
「そうかそうか、それは失礼したね。いやね、もしあの坊やさんと関係あるなら、伝えて欲しかったんでね。今月いっぱいでこの店をたたむことにした…ってね」
な、なんですって。お店を…?
しかも、今月いっぱいと言ったら、もうあと半月ほどしかありません。
「やめちゃうんですか、お店」
ここへきて、ようやくカウンターの前に。お会計をしてもらいつつ、私は店主さんに聞き返しました。
「ああ。まあ、初めてっちゅうお客さんに言うのもなんだが、ワシも女房も、もうトシでな。なんで、田舎に引っ込んでのんびり暮らすことに決めたんだよ」
そう語る店主さんの顔は、ちょっと寂しそうです。
「そうなんですか。じゃあ先生にも伝え…」
…っと、いけないっ。つい口走りそうになっちゃいました。ひやひや。
「んじゃ、ささやかながら閉店記念だ。ひとつふたつタダで持ってっていいよ。あのガラスケースの中の性具」
ふっ、と微笑む顔にも、同じく寂しさが…っとと、言っちゃダメッ。性具なんてっ…あ、私も言っちゃった。
「あいえ、そそその…ア、アレは結構です。お、お気遣いありがとうございます」
「ああ、そうなのかい。なんか興味ありげに見てたようじゃったからね」
もちろん見てました…いえ、そんな見てません。とにかく、からかうつもりでも何でもない様子。ごく自然に微笑む店主さんでありますことよ。
「で、では…失礼します」
ぺこりと一礼。もし先生のお使いがなくても、ちかぢか必ず『本来の姿』で、もう一度ここを訪れようと心に決めながら、私は店を出ました。
ち、違いますっ。アレを貰いに…じゃありませんっ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます