第5話 SNSで知らない人から応援がたくさん届きました

「ただいま〜」

 誰もいない部屋に帰宅のあいさつ。


 リビングにセッティングしてある赤ちゃん用のお布団に、クマの赤ちゃんを置いた。


 その瞬間、部屋全体が。


 ――もふもふ、ふわり――


 と、柔らかな光に包まれたような気がしました。


 これが、小さなクマの赤ちゃんが我が家に降臨した瞬間でした。


「嬉しいぃ。」


 まだママになったことが信じられなくて、2度見、3度見、4度見、5度見。


 どう見ても、どこから見ても、クマの赤ちゃんです!!!


 赤ちゃんは、すやすや寝てます。


「可愛いぃ」


 あっ泣き始めました。


●●


「めっちゃ泣いてる、お乳あげようかな? 母乳でるか心配だから、とりあえずミルクつくろ」


「ミルクづくりは、初めてで今回がぶっつけ本番。うまく作れるかなぁ。」


 まずは、お湯をあたためて、粉ミルクを入れて・・・。それから、水で冷まして。


「熱くないかなぁ。体温と同じくらいの温度なら大丈夫だから。よしっ! 出来たあぁ。」


 それにしても、赤ちゃんってずっと泣くんだ・・・。

 必死で泣いてるし、これだけで体力つきそう。


「元気でいいねぇ。」


「赤ちゃん、ミルクだよ。飲みますかあぁ?」


 抱っこして、哺乳瓶を口元へ。


 ハムッ!!!


「おおお、食いついた。」


「ぐびぐび飲んでくれてる。嬉しいなぁ。良かったぁ。」


 数分後。

「飲んだと思ったら、もう寝てるぅ。可愛いぃぃなぁ。」


●●


 記念になるし、SNSに投稿したくなりました。


「私のSNSなんて誰も見てないから、顔出ししてもいいでしょ。」


 スマホのカメラで――


 カシャ。カシャ。カシャ。カシャ。カシャ。

 カシャ。カシャ。カシャ。カシャ。カシャ。


「やばい。可愛すぎて、いろんな角度から撮ってしまう。いっぱい撮ったけど、どれにしよう。これがいいかなぁ。こっちが可愛いかなぁ。万歳してるのにしよ」


 ぽちぽち。


「無事に、赤ちゃんが産まれました! クマちゃんです!」


 数時間後。

「SNS確認しとこ。いいねの数は・・・」


 ――1万!!


「バズってる・・・・・。」


 それに加えて――。

 動物園の飼育員の人、動物が好きな人、赤ちゃんが好きな人から驚くほどたくさんの応援コメントが届いていました。


 中には、

「私はペンギンの赤ちゃんを産みました。子育ては大変だけど毎日ハッピーです。」

「私はライオンの赤ちゃんを産みました。毎日が喜びの連続です。」など。読んでるだけで、ハッピーになるものが多く、私の胸は、じんわりとあたたかくなりました。


 同時に。

 私は、物凄く感動していました。


 大袈裟かもしれないけど、これまで生きてて良かった。そんな風に思いました――。


 そして、私の目には、涙がいっぱい溢れていました。


 そんな私の気持ちを、赤ちゃんは知るはずもなく、ぐっすり寝ています。


「可愛いぃょぉ」


 泣きながら、私は、赤ちゃんを抱っこしました。

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