第62話幼い少女の冒険譚8


 そして月日は流れ、いよいよその時が来てしまった――


「緊急速報! 緊急速報!! 街の近くに石龍ガンドレアク襲来! 直ちに避難を! 手の空いている街の冒険者はギルドに集まってください!!」


 そうして街に響いた警報にマインとリナは勢いよく立ち上がった。


「やっぱり……くる……よな…………」

「マイン。私も戦うから」

「な! 何言ってん――」


 そういって振り返ったマインはリナの顔を見て言葉失った。

 

「私達はいつも一緒だったでしょ?」

「………………」


 顔を強ばらせ緊張を走らせたマインとは裏腹に、リナは優しく笑っていた。


 何故だろう。


 僕には笑顔が分からない。


『ボクモ……』


 戦うと聞いて僕も役に立てると思った。これでも少しは戦い方を教えてもらったし……。


「エデン。お前だけは逃げろ」

『エ…………………』


 何故か頑なに首を横に振ったマインは、出来たらリナにも逃げて欲しいと零したが、リナの顔を再度見て、何言っても無駄か……と、苦笑を浮かべた。


「エデン……マインの言う通り、逃げて!」

『デモ……ボクハ…………』


 ワナワナする僕を見たリナは、優しく僕の手を握り微笑みかけてくれた。


 なんで笑うんだろう、こんな時に、幸せな時間では無いはずなのに……。


 そして釣られるようにもう片方の腕を触ったマインは、俺達が死んでもお前だけは絶対生きろ。と笑った。


 なんで、なんで……。


 そして二人は僕を置いて家を出た。


「大好きだよエデン」

「俺もお前に会えて本当に良かった、幸せになれよ!」


 そう最後に満面の笑みを浮かべた二人の目は何故か光っていた――


『ボクハ――』



 ニンゲンになれた気でいた。


 結局僕はモンスターで何一つ理解出来ていなかったんだ――



~~~~~~~~~~~~~~~~~


「マイン! どうにかしてガンドレアクのマインド支配出来ないの?」

「分からない……でもやれることは全部やる!」

 

 街の中を駆ける二人は遠くから聞こえる騒音に冷や汗を流しながら、二人はどうにか出来ないかと模索する。


 マインだけが持つスキル【マインドリンク】はモンスターのマインドを支配しテイムすることが出来るのだが、相手が強ければ強いほど成功確率は低い。


「本当にいいんだなリナ! まじで死ぬ可能性あるぜ!!!」

「当たり前でしょ!! こんなとこで逃げるわけないでしょ! 持てるアイテム持ってきてやったしね!!」


 パンパンに詰まったカバンを背負うリナは、それにエデンが私達の代わりに絶対生きてくれるから!! と、笑った。

 そんな自信に満ちたリナを見て思わずマインを笑みを零してしまう。

 

「エデンのためにも俺たちがどうにかしなきゃな!! よっしゃぁぁぁ! 行くぞリナ!!!」

「うん!!!」


 闘気に満ちた二人は文字通り命を賭け、石龍ガンドレアクとの対戦に挑んだ――

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