第43話願い
「けほっけほっ」
『ケケケケケケ』
「ちょっとやり過ぎじゃないですか……」
爆音の割に無傷なダンジョンの壁に手を当てながら、煙の中をムクリと立ち上がったルカは、ケケケと目の前で浮くピエロではなくその奥に向けて声を発した。
「悪ぃ悪ぃ、そんくらいしねぇとアイツ逃げねぇと思ってなぁ」
路地の奥の
そんな己の主に勘弁してください……。と苦笑を浮かべたルカは槍を地面に突き刺し、再び膝を折る。
「てかよぉ、お前ら遅すぎなんだよ」
「すみません」
「まぁいいけど、例のモノさえ手に入れればな?」
「はい。しっかりと回収してきました」
そう言って忠実に接するルカは懐から赤い石を取り出し、今も立ちこめる煙の真ん中で掲げた。
「それだそれぇ! よし後はあの女を殺すだけなぁ! 行くぞミカルゲ!!」
『ケケケッッ!!』
そう言ってルカから赤い石を受け取ったガランディアは、その腕に使ってやれ、と
それに連なってミカルゲと呼ばれたピエロは、ケケケと笑いながら後ろを着いていく。
「あの、ガランディア様……私はこの後……それに約束は……」
「わぁってるわぁってるって! とりあえずあいつを殺したら約束は果たしてやる、それに今火竜を使っててよぉ、ちょっと俺もギリギリなんだわぁ」
「……!」
火竜という言葉に驚きを隠せないルカは、試験管の口を開けたまま固まった。
(どういう事なの……? あの火竜を使う程の……。リクさんが?)
冒険者ですら無く、今の今まで荷物持ちならぬ人持ちだった彼の何処にそんな価値があるのか分かり兼ねる、とルカは目を細める。
そんなルカの表情一つ見落とさないガランディアは、あっけらかんとした声でその答えを口にした。
「くくっ、なーんも不思議な事じゃねぇ、お前も分かるだろ? 俺と同族なんだからさぁ。ウザイ奴、死んで欲しい奴はいたぶって殺すのがセオリーだろぉ?」
「私は……!」
そう言って目を背けるルカに苛立ちを覚えたガランディアは、口をぽかんと開けながら首を傾げる。
「はぁ? 今更いい子ちゃんぶる気かよ、誰がお前らを孤児院から引っ張ってきたと思ってんだぁ? お前みたいな人殺し俺じゃねぇと引き取らねぇぞばぁか!」
「……」
ぐうの音も出ないとばかりに口を紡ぐルカを見て、くははっ!! と上を向きながら笑ったガランディアは、いいからさっさと着いてこい奴隷! とルカに手招きしたあと、今度こそ振り返ることなく足を進めた。
「違う……私は…………っ!」
その後ろを着いて行く事しか出来ないのは、過去の自分の行いのせいなのか、今も腕に装着されている腕輪のせいなのか、ルカの頭の中で後者であって欲しいとただ願うばかりだった――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます