第42話道化師
――三階層
四階層と特に代わり映えのしない景色を横目に、ゆっくりと足を進める三人は、いつ現れるか分からないモンスターに最大の注意を払い続けた。
「ルカさん、なんかおかしくないですか……?」
「うん……」
「何が?」
やけに静かなダンジョンに違和感を覚えるミルクとルカは、目配せをしながら足を止めた。
「え、何? まじでまずい感じ!?」
とりあえず小さな声で隣のルカに声をかけるリクだが、その真剣なルカの面持ちに思わず口を噤んだ。
「これは……想像以上に……」
『ケケケケ……』
それはわずか100メートルほどの距離。
ちょうど路地から
「逃げてっ!!!」
『ケケケッッ!!!!』
直後反射的に前に飛び出したルカは叫びながら槍を構える。
「リンをお願いします! あれはダメだ!」
動けなくなったミルクにリンを無理やり押し付けたルカは早く逃げなさい! と背後にある十字路を指差す。
そんなことはさせないとばかりに空をふわふわ舞うピエロはその奇妙なお面の下で薄く笑いながら高速移動で距離を詰める。
「リクくん逃げよう!!」
「でもルカが!」
「私のことは置いていけと言ったはずです! これは命令だ! 早く逃げなさい!」
今までにないほど切羽詰まったルカは口調を荒くして警鐘を鳴らす。
「ちっ、分かった! 分かったけど無理すんなよ!! 絶対後で合流だからな!」
「分かっています、直ぐに追いかけますから、早く!」
その言葉と同時に駆け出したリクとミルクが姿が見えなくなるまで横目で見送ったあと、ルカは深く腰を下げ、痛む右腕をかばいながら槍先を向けた。
『ケケケケケケケケケッッ!!』
「ここは通しません」
紫色のマントをひらつかせたピエロは、隠していた細い右腕で黒い玉をルカに向け投げつけながら再び加速する。
奇妙な動きで近づく相手に、ルカはふっ! とあえて距離を詰める、
が、
骨とも言えるその細い右腕から投擲された黒い玉はタイミングよくパカッと可愛らしく割れ……。
「これ……は!」
『ケケ』
それは火薬がいっぱい敷きつめられた爆弾。
初見である
ゴオォォォォッッッッッッ!!!!!!
そんな轟音と共に包まれることしか出来なかった――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
同時刻――
おぼつかなくなってきた足で走り続けていたミルクとリクは、ダンジョン全体を揺るがすほどの爆音に足を止めた。
「おい、ルカ大丈夫だよな」
「きっと……大丈夫だよ」
今は信じることしか出来ない、と目を合わせた二人は、何も出来ない自分の不甲斐なさをそれぞれ抱えながら、必死に足を動かした。
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