第31話出来損ないの家族
「「いっただっきまーす!」」
ルカ達の慣れた手つきにより僅か三十分で出来上がった夕食。本当にダンジョンで作ったのかと思わせるほどの数々の品に目を輝かせながら、リクはかぶりつくように次々に口へと運ぶ。
「ってうま! 何これ天才かよ!」
「えっへん! それはリンが作ったのよっ!」
「いやお前じゃないんかい」
謎にふんぞり返るナナミにツッコみながら、リクは紫色の煮汁を染み出させる白身魚にかぶりつく。
「リクくんそれ美味しい? その白身魚私が焼いたんだけど……」
「おおお! 美味しい美味しい! 普通にダンジョンでも魚食べれるとか最高だな!」
「ふふふ、まさかリクさんも私と同じ種族でしたか……最高です! 結婚しましょう!」
「はい?」
リクと同じ白身魚を口いっぱいに頬張りながら立ち上がったルカは、リクさん最っ高! と騒ぎ立てる。
「ぷぷ、無知ってほんと可愛そう……それただのモンスターだから、ばーか」
「はぁ!?」
キノコのスープが入ったお椀を両手で持ったリンは、バカ丸出し~と、クスクス笑いながらスープを啜る。
いやモンスターってどゆことだよ! とペッペっと白身魚もといモンスターを吐き出すリクの隣で、この草うんま! ともしゃもしゃ食べ続けるナナミ。
もはやお前にはツッコミしきれねぇわと嘆息を付きながら、リクはミルクの方へガバッと向き直る。
「おいミルク! どういうことか説明求む!」
「わわわ私!? そ、それはその、モンスターの魚が美味しいってルカさんが言うから一緒に作って……」
「何そんな暗い顔してるの! ほらミルクさんも食べて食べて!」
そう言っていやぁぁぁぁ! と涙目になるミルクの口に無理やりモンスターをぶち込むルカは、狂気に満ちた笑顔で同族ふやしちゃうぅぅぅ! と目をバキバキにした。
(あ、ごめん。最初の方でルカはともかくとか言ったけどこいつも十分ダメだわ)
半分意識を失いかけたミルクが白目を向かせる中、あーモンスターの内蔵うまうま! と口元を血塗れにしながら食べるルカは化け物その物だった――
「もう何がモンスターか分かんねぇよ……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
――ルカの懐中時計は零時を指す。
夕食を終え、己の得物のメンテナンスなどをして時間を潰した五人は、
勿論、いくら
「なんでよりによってお前なんだよ……」
「ええ!?ナナミじゃ嫌なの!?想定外の言葉に思わず魔法使うとこだったよぉ!」
「分かった! 分かったからその杖輝かせんなって!」
皆は知っているだろうか。
グーとチョキとパーで織り成す、
そいつはたった三つの手の形で決まってしまうロシアンルーレット。
運が良ければあの可愛い子とペアに! なんて考えていた所を、陽キャゴリゴリのスクールカーストトップの男とペアになってしまうあの地獄のチーム決め。
もちろん俺が狙ったのはミルクだったのだが、現実は甘くない。残念賞という事でナナミとペアになってしまったのだ……。
「はぁ……ミルクが良かったなぁ!」
「うわぁ、ちょっとそこまで執着してると……ひくね!」
「さぁて、お前の顔面俺の鼻くそで埋めつくしちゃおっかなぁ!」
伝説の魔法とも言えるハナクソショットで牽制するも、鼻歌を歌いながら華麗に無視してくるナナミの横顔を見て、スゥゥっと俺は真顔になる。もう大人しくする……と、体育座りをした俺は岩壁に寄りかかり、ナナミの鼻歌を聞き続けた――
それから何分たっただろう。少し離れたとこで寝息をたてる三人の美女をチラ見しながら、ナナミの鼻歌を聞くだけという退屈な時間は……。
(さすがになんか話振るか……)
結局痺れを切らした俺がなんか話題考えねぇと、と頭を悩ませた時だった。
「ねぇ、リクは……もし、もし家族の中で一番出来損ないの子供がいたらどうする?」
「ん?」
それはふざけでもなんでもない、ナナミの心からの質問だった――
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