第30話奇魔
「燃えろー燃えろー燃えろんろん」
赤毛の男は暗闇の中を鼻歌交じりに歩き、コツコツと足音を鳴らす。
「……ダンジョン……魔物……。全部……全部燃えちまえっ……燃えて燃えて塵になれぇぇえッッッ! ふはははははははッッッ!」
誰もいない暗闇で一人不気味に笑う男は足を止め、右手に持っている紅の杖を掲げる。
「――アイツだけは……アイツだけはぜってぇ殺す……!」
一瞬で笑顔を消した男は瞳を輝かせ、怒り任せに【絶炎魔法】、
その威力は凄まじく、辺りは轟音と爆炎で包み込まれ、紅の世界が出来上がる。
「まだ、足りねぇ……っ!」
そう言って再度魔法を行使した男は、何もかも燃やせる火力で世界を燃やした、
まるで苦い過去を燃やすかのように――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ただいま~」
「おかえり」
「……あれ、リクくんは?」
食料調達を終えたルカ達が帰還し、疲れたーとバックパックを下ろす中、ミルクはリクの姿を探す。
「リクなら、あそこで……」
「んんん?」
「――乾き齎す世界の湿原に、一滴のししゅくが……ちっくしょぉがぁぁぁぁッッッ!!」
「リクくん、ただいま」
「おわぁ! お、おかえりミルク」
「何してるの? そんな難しい顔して……」
「あぁ、ちょっとな……」
そう言って手帳を覗き込むミルクは、んー? と首を傾げながらリクの顔を見る。
「やっぱ白紙に見える?」
「うん……何も書いてないけど……」
「だよなぁ」
ぐぐぐと目を凝らして見るミルクを横目に、やっぱ俺にしか見えないのか……と、リクはミルクにこの手帳の入手した経緯と、どういう物なのか軽く説明する事にした。
正直なところ、自分の知識での限界を感じてしまっていたからだ……。
「……うーん。魔導書とかそういうのは存在するけど、1回きりの使い捨てタイプとかしか私は知らないかなぁ。それに、魔導書は誰でも見ることが出来るし……」
リクの話を聞き、そんな物あるの!?と驚いたミルクは、事例が無いかなぁ……。と頭を悩ませながらもポツリポツリと言葉を漏らす。
ちなみに一般的な魔導書はとてつもなく貴重で高価なものであるが、何処ぞの貴族の間では流通しており、ダンジョンでも入手可能である。
その事をリクに話したミルクは、まぁ関係ないよねぇと再びを目を凝らしながらじっと手帳を見る。
「やっぱ俺が少しづつ紐解いてくしかねぇかぁ」
「ごめんねぇ、なんも役に立てなくて……でもでも! 私にいっぱい質問してね! 他の事なら分かるから!」
そう言ってしょんぼりした顔を一気に笑顔に戻したミルクは、爆乳を揺らしながらズイとリクの胸元に顔を近づけ、満面の笑みを見せる。
(は? 素直に揉みたいんだけど、何これっ!)
ミルクの超ロングな谷間を、だらしなく鼻を伸ばしながら見つめるリクは、もう揉んじゃおっかなぁァァ! ふへへ! と手をワキワキさせながら下からスーーっと手を伸ばし――
「ご飯作るから手伝ってぇぇー!!」
「はーい!」
響いたのはナナミの甲高い声――
それと同時にミルクは、私達も手伝お! とナナミ達の方へ小走りで向かってしまう。
「ぺちゃぱいでめぇ、今いいとこだったのにっ!」
一人手をワキワキさせ続けるリクは、ミルクのたわわメロンを思い出しながら、揉めなかっ……た……! と涙を流しながら崩れ落ち、今も手を振るぺちゃナナミを睨みつけた。
がしかし、
この時のこの強い思いがあんな魔法を生む事となるとは、今のリクが知る由もなかった――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます