第29話変女
『シュゥゥゥッッッ!』
「はぁぁぁぁぁッッッ!」
小さな
「――豪炎の花弁より生まれし火竜よ、叫べ――クライシスフラワー!」
『シュゥゥゥゥゥゥッッッ!!』
食用のキノコを体に生やす【マッシュプラント】に、華麗な身のこなしを持って突進したルカは、槍を器用に振り回しキノコを回収。それと同時に【マッシュプラント】は、特有の状態異常を起こさせる色とりどりの花粉を撒き散らすが、反射的にバックステップでナナミと前衛をスイッチし、飛距離の無い代わりに高火力な炎属性魔法、【クライシスフラワー】をぶっ放す。
「す、凄い連携……」
燃えたひまわりの花弁から次々に現れる火竜に食い尽くされる【マッシュプラント】は、花粉ごと燃やされ、抵抗するまもなく断末魔と共に青白いオーブへと姿を変えた――
そんな一連の戦闘をただ見ていたミルクは、口をポカンと開けたまま鳥肌を立たせる。
「ふぅ。やったね、キノコゲット!」
「後は野草があればいいけどねぇ……ミルクさんも怪我とかないですよね?」
「え、あ、はい! 大丈夫……です……」
「?」
チームでの勝利ではあるが、見せつけられた自分との戦力の差にミルクはやっぱダメだぁぁと項垂れる。
多属性を操れるこの神具をしっかり制御出来ないミルクに、ルカ達の足元に並ぶことも許されない。
「ミルクも戦いたかったんでしょ! でも流石にその服装で戦わせる訳にも行かないからなぁ……」
そう言ってミルクの布一枚というくそ防具を見るナナミ。
「ごめんなさい……」
苦笑いを浮かべながら謝る事しか出来ないミルクは、早く野草集めに行きましょうと、事前に手渡されていたバックパックにキノコを詰めながら言葉を漏らす。
そんな何処か暗いミルクを気にかけたルカは、何も焦らなくていいんですよと笑いかける。
「そうそう! 私もいるしね!」
と、はしゃぎながら杖をブンブン振り回すナナミがルカにうるさいと頭を叩かれる中、ミルクは小さく頭を下げた。
「はい……ありがとうございます……」
その二人の言葉に救われた気がしたミルクは、同時に、自分の成長の遅さに唇を噛んだ――
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ふぅぅ、食料調達終了ですね!」
「野草にキノコ、それに魚まで取れちゃったね……」
「魚に関してはミルクさんの大手柄ですが……」
――散策を開始してから一時間
ダンジョンに生える野草を次から次へと採取してる最中、ミルクは壁に異変を感じ、コツンと叩いたところ、壁が容易に崩れ深そうな池が現れたのだ。
「ダンジョンの修復不具合はよくある事だけど、まさか池があるとはねぇ」
「うーん。私も上層で池は初めて見たかなぁ」
ルカとナナミがレアエリアだぁぁ、と先程の池を思い返す中、ミルクは照れるように顔を赤らめる。
「ま、でも? 私のサンダーショックが無かったら意味なかったけどね!」
そう言って薄い胸を強調するナナミは、エッヘンと鼻を膨らます。
ちなみにサンダーショックとはナナミが使える唯一の雷属性の魔法である。威力も弱く下級レベルだが、池に使った際には大いに力を発揮し、魚を気絶させることに成功していた。
「余計なヤツもついてきたけどね」
「うぐ……っ」
そう言ってミルクのバックパックから尾ビレをはみ出させる紫色の魚を見たルカは、はぁとため息をつく。
「まさか【トリカブフィッシュ】がいるとはねぇ……」
ナナミの魔力を感知して来てしまったモンスターである【トリカブフィッシュ】は、一瞬にして気絶し、その後ルカの巧みな捌きにより動きはしないが生きているギリギリなラインに留める形となっていた。
「あの、これ本当に襲ってきませんよね!? もう倒しちゃった方がいいんじゃ……」
じっとリュックに収まる禍々しい紫色の魚を見せ付けるミルクは、ウロウロしながらルカの目を見る。
「大丈夫だよー。それに、このモンスター美味しいから……是が非でも食べたいのよ……」
そう言ってヨダレを垂らしたルカは、はっ! と拭いながら、さぁ! 早く帰ろう! と声を裏がえさせた――
【ガーデンインフィニット】団長。ルカ・シュリングは、食欲旺盛にゲテモノ好きという変女である――
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