避難民とリマン、サンクトらの奮闘


 深手を負った女性や子どもたちはフェスト村でリマンに水と食料、衣服を渡されていた。3人の娘を連れフェスト村に逃れて来た女性が、ミシンを使い手袋を縫っている。

 大柄なオスのヒグマ・慎重が太い流木を橋にしているのが見え、リマンも手伝う。

 「建物も崩落し、ボートも入れない」「食料を集めねばな」慎重とリマンはブルーベリーやラズベリーなどを集め保管庫に入れた。コクチョウのサンクトも、くちばしにくわえていた青魚を熱湯で洗い干物にする。



 ―――夕方。女性が縫い終えた手袋をリマンとサンクトに見せ、「売れますか?」と聞いてきた。

 「手縫いのものは、高価で売れるぞ」ブルーベリーの模様を見ながらサンクトが言った時、一人の男性がやってきた。「あなたが縫ったんですか?」「ええ」男性は手袋を購入しかごに硬貨6枚(3000円)を入れ、バッファローに乗って去っていった。

 「あの男性は、丈夫で長く使えるものだけを買うらしい。硬貨も、フェスト村のものだった」リマンがかごの中を見ながら言うと、女性と娘が歓喜する声が響いた。

 


 「風呂を温めねば」リマンは30人分のお湯を用意し、子どもたちを浴槽に入れて石けんをつけたタオルで汚れを落とす。女性用の浴室は2階に用意され、安堵の声が上がった。



 着替えを終え寝息を立てる子どもたちを見たサンクトが「食料と包帯が足りなくなる」と言い、移動図書館のゾウガメに「包帯と読まれなくなった本を30送ってくれ」と懇願。包帯と本が入った箱がヴァッサー国から届けられた。



 フェスト村の入り口前で爆発音が聞こえた直後、ロッキーの父とボウイが避難路を開け、大声で泣く女性と子どもたちを通す。家具店の前に出ると、「リマンさん、サンクトさん」とローゼが手を振っているのが見えた。

 「久しぶりだな」「はい」ローゼは包帯と本が入った箱を家具店の2階に運び、「宿が爆発し、野菜をくれた男性が死亡しました」と言い子どもたちの腕に包帯を巻く。リマンとサンクトは甲羅と羽で子どもたちを砲弾から守っている。

 


 女性たちは汚れを取った鍋で湯気の立つコーンスープを作り、子どもたちの皿に入れていた。城内に運び込まれたけが人の肩に、ブロッサムが水で濡らした布を当てて

いる。

 レイクは砲弾の音で泣き出した7歳の男児を抱きしめながら、コーンスープを飲み終えた。


 爆発音が聞こえ、胸から血を流しているボウイが見えた。駆け寄ったレイクの手をつかみ、「子どもたちを死なせるな」と小声で言い死亡した。ブロッサムと一緒に泣きながらボウイをひつぎに入れ、ユキヤナギの花を供えた。


 ロッキーは移動図書館の2階で、集まった子に本を読んでいた。泣いていた子どもたちが笑顔になっているのを見て、「朗読会をやろう」と決めた。



 

 



 




 



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