第3話 女神様ありがとう〜!オレ、凛々しくなれました!
あの女神に突き落とされた後、オレは水の中にいた。
これ、あれだよね?転生系主人公によくある、目覚めたら母親の腹の中ってヤツ?
そんな事を考えていたら、急に激しく動き出した。
(うおっ)
こ、この締め出される懐かしの(覚えてない)感覚は…!
『キュリフ!生まれるわ!』
『お、おお、おおおおおおお!』
うう〜、なんか頭に直接響いてくるなこの声———父さんと母さんなのか?あと父さん(仮)うるさい。
「キャン!」
中々目が開けられないなぁ〜、生まれた直後だからかな?
「キャンキャン!」
お!ようやくシャバだ……。やはり!光は生で感じるに限るなぁ!——すいません調子乗りました。
で、さぞ美しいであろう両親のお顔は…?
——ワァオ!ファンタスティック!
凛々しい!すんごい凛々しい!文句のつけようの無いほど凛々しい!
「キャンキャンキャン!」
鼻筋、もうスッてなってて、50cmぐらいあるんじゃないかなぁって思う。
耳、もうツンツン、なんなら頭の横じゃなくて上に生えてるしね。
身体、全身筋肉質でスラってしてるのは分かるけど、筋肉は見えないね、だって身体中モフモフだもんね。
え?人間じゃないって?うん、だって、—————オオカミだもんね…。
「キャンキャンキャンキャン!」
じゃあ何?さっきからキャンキャンうるさいこの声は、オレの声だって言うんですか?———そうですね、そうなんですよね…。
『なぁフリー、この子の名前どうする?やっぱりカバヤキがいいんじゃないか?』
やめろ父さん、それだけはダメだ。
『そうね〜ポッ○ーがいいと思うんだけど……なんだか嫌な予感がするからやめておくわ。あ、カバヤキは絶対ダメよ。それって確か、キュリフが人間にもらった食べ物の名前でしょう?』
母さんの考えていた名前も充分アレだったけど、思い留まってくれて何より……。
『でもそうすると—————あ!良いのを思いついたわ!』
『奇遇だね!僕も良いのを思いついたよ!同時に言わないかい?』
『良いわね!せーの』
『キャルロジック!』
『タコヤ——キャルロジック!』
その名前が、不思議とスッと身体に馴染んだ気がした。もちろん、父さんの名前では断じて無い!あと父さんは、子供に食べ物の名前を付けてどうする気なの?食べるの?
慣れ親しんだ前世の名前を捨てるのは惜しいけど、オレは今日からキャルロジックになりました。
3日経ち、歩けるようになりました。歩けるって言っても、四足歩行だし、前世のハイハイみたいなものなんだよね。
5日経ち、両親が会話に使っている、念話を使えるようになりました。これも最初は頭痛がしたけど、今ではずっと針刺してるみたいなものだし、もう慣れた。
あ、両親の名前は父キュリフィンドルで母フリザリンだって。
7日経ち、キャンキャン言葉でも会話が出来るようになりました。生まれた時はマジで耳鳴りそのものだったけど、今では、3本の針をずっと刺してる感じ。もう、1本も3本も変わらないよね。
————————いやさ、成長早くね?無○転生のルーデ○スでもこんなに早くなかったぞ?絶対普通のオオカミじゃない、だってここ異世界だし。
父さんに聞いてみた。
『僕達の種族?ウルフインザ・ウルフだよ?』
なんかインフルエンザみたいだけど違うな……。えっと、オオカミの中のオオカミ?どう言う事?
『僕達はね?普通のフォレストウルフや、ステップウルフとは、一味や二味も違うんだよ?アイツらは早く強くなりやすいけど、進化出来ない。けどね、僕達は進化出来るんだ。進化っていうのは、オオカミ1匹1匹違いがあるし、たまに退化もする。けど、それを補って余りあるのが進化なんだ。進化するととても強くなれるし、種族としてもカッコよくなれるし、モテモテになれるよ〜?』
進化か————かなり色々やり方がありそう!
『とうさん!おれしんかする!』
人間じゃないのは恨むけど、ウルフインザ・ウルフ……長いからウルウルでいいや。ウルウルになれた事は良い判断ですよ女神さんよ!
『ただいま〜フリー、キャロ』
『おかえりーキュリフ』
『おかえりー父さん』
一家の食事を支えているのは、大黒柱の父さん。今日も今日とてデストロイラビットを狩ってくる。
なんだか物騒な名前のウサギだけど、味はめっちゃ旨い。噛むたびに肉汁が溢れ出してくるから、何度食べても飽きない。むしろ毎食食べたいぐらいだ。実際毎食デストロイラビットだけど。
ペットとして飼うには、まずあの禍々しいツノと、鋼鉄並みに硬いあの毛をどうにかしなくちゃね。
なお、現在生肉である。
『ねぇとうさん、なんでやかないの?』
『?わざわざそんな事する必要あるの?』
『うん、だってそのほうがおいしいよ?』
『い、今よりも美味しく……!わ、分かった、焼けば良いんだね?』
この美味しいウサギがもっと美味しくなるんだから、そりゃあ食いつくよねー。
『しおもかけるとおいしいよ!』
必殺の塩。困った時に役立つ相棒。
『分かった、そうしよう。ところでキャロは、なんでそんな事を知っているんだい?』
『え!?あ、え、えっとぉ〜』
いやまぁ流石に気づくか………。
『まぁ、聞かないでおいてあげる。そのかわり、大人になってもちゃんとお父さんの事を手伝ってね?』
『も、もちろん!』
う…父さんは優しいけど、弱みを握られてしまった…。
その夜、2匹のオオカミの、歓喜の遠吠えが聞こえたとかなんとか…………。
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