第六章②


日本愛知県守山 マンションの一室


 藤岡達は食事をしていた。かなり質素ではあったが食べられないよりはましだ。みんながそう思った。他の人たちはどうしているのだろう。外に出られないとなると恐らく3、4日分の食料があれば多いほうだろう。そうなると殆どの人たちはこの一週間以上というもの水くらいしか口にしていないのではないだろうか。それを思うと高橋は自分達の幸運に感謝した。今の食料ならあと2日は大丈夫だった。しかし、このマンションはあらかた捜索したし、ビルの外に出るのは危険すぎるので、食料の調達はあと一回が精一杯であろう。そう思うと高橋は不安になった。自衛隊が早く救助にきてくれることを祈るしか手はなかった。

部屋の隅で食事をしていた直子と山縣が突然喧嘩しだした。

「あなた!いい加減にしなさいよ。男らしくない」突然直子が言った。

「俺が何したっていうんだよ」驚いたように山縣が言った。

「何にもしてないからじゃない。何にもしてないのにブツブツいうなんて信じられない」

「だって」と山縣。

「だってじゃないでしょ。もういい。あんたなんか知らない」直子はそう言うと奥の部屋に行ってしまった。

美里も心配になり直子について奥の部屋に行った。

山縣はバツが悪そうにしょげてしまっていた。

それを見ていた藤岡と高橋は二人で顔を見合わせてビックリしていた。

「あの子、あんな事言うようには見えなかったのにね」高橋が言った。

「あぁ、俺もビックリしたよ」

「でもまあ、あの子が怒るのも無理はないとは思うけどね」高橋は小さな声でそう言うと、しょんぼりしている山縣の方に目配せした。

「そうだな。でも奴もかわいそうだぜ。あれじゃしばらく立ち直れないだろうな」藤岡は小さな声でそう言いながら気の毒に思った。

しばらくして美里が一人で帰ってきて二人の横に座った。

「彼女、かなり怒っているみたいよ」美里は言った。

「いったい何を怒っているんだ?」藤岡が尋ねた。

「彼女、言いたくなさそうだったけど無理やり聞いたの。そうしたら、どうやら山縣君が食事に文句言っていたらしいのよ」小さな声で山縣に聞こえないように言った。

「なんて奴だ。そりゃ、あの子じゃなくても怒るわな」高橋がそう言いながら山縣を睨んだ。

「まあいいじゃないか」藤岡は高橋をなだめるように言った。

「でも、山縣君にしても居心地がわるいのよ。きっと。自分は何にも出来ないし、疎外感があるんだわ」美里は山縣に同情した。

「そうかもしれないな。暫らくそっとしておいてやろう」藤岡が言った。

美里は落ち込んでいる山縣を見ながら気の毒に思った。

「そうね。山縣君も悪気があって言ったわけじゃないし、あんなにしょげちゃってかわいそうじゃない」美里は山縣を眺めたあと高橋に向かって言った。

「美里さんは優しすぎるよ。誰にでもね。そこがいいところだけど」高橋が笑顔で言った。

「あら、お世辞言っても何にも出ないわよ」そう言って高橋をこづいた。

「お世辞じゃないよ。ねぇ先輩」そう言って藤岡に助け舟を求めた。

「高橋は美里のファンだからな。いつも美里の肩を持つし、その時はいつも俺は悪者になっているし。いつ後ろから襲われるか気が気じゃないよ」そう言って笑った。

「えぇ?そりゃないよ先輩」全然助け舟になってないので高橋は苦情を言った。

高橋はこんな会話が好きだった。三人でいるときは大体こんな感じだった。先が見える状態であればもっと楽しかったのに。早くまた以前のように三人で飲み明かし、バカな話で笑い合えたらいいのにと思った。

暫らくすると、外で大きな音が聞こえだした。大型トラックのエンジン音と射撃音だ。たぶん装甲車もいる。車両の数からして少なくとも小隊規模だ。高橋は何処からその音がしているんだろうと窓を開けてさがした。どうもこちら側ではないようだ。となると玄関の方か?玄関側の窓は塞いでいるので見えなかった。藤岡は「玄関の方から聞こえるな。この前とは違ってたくさんの射撃音が聞こえるぞ」そう言うとドアの覗き穴から見てみた。どっちにしてもそんな所から見えるわけはなかったが、どうしても知りたいという気持ちがそうさせたのだろう。

「かなり近い。すぐ傍だ」高橋は言った。

「助けに来てくれたのかしら」美里が嬉しそうに言った。

「いつもとは違うな。とにかく、すぐ動ける準備をしておいてくれ」藤岡がみんなにそう告げた。

しばらくすると、射撃音に混ざって拡声器の声が聞こえてきた。「こちらは陸上自衛隊第10師団です。生存者の救援に来ました。今から掃討作戦をしますので、こちらから合図があるまで決して外に出ず、室内でじっとしていて下さい」という音声がくり返し聞こえてきた。

高橋たちは「やった!」と声を張り上げ、待ちに待った救援が来た事を喜んだ。

「よし、食料と武器だけもって出る準備をするんだ」藤岡はそう言うと美里にリュックに食料を詰めるように指示した。

外では至る所で射撃音が聞こえてくる。M-2の頼もしい射撃音はなんとも言えなかった。その他は89式自動小銃だろう。その時、裏の道路を装甲車とトラックが走っていく音が聞こえてきた。

その瞬間、「俺も連れてってくれ!」と叫びながら山縣が急に部屋から飛び出そうとした。トラックが遠ざかっていく音を聞いて、また自分達を置いて行ってしまうとでも思ったのだろう。

藤岡と高橋は「山縣待て!」と言いながら捕まえようとした。

高橋は咄嗟に飛びついて山縣を辛うじて掴む事が出来た。しかし、運悪く山縣のひじが顔面に当たってしまった。高橋が怯んだすきに山縣は彼の腕を振りほどいてドアを開けて出て行ってしまった。

「あのバカやろう!」藤岡はそう言うと銃を取り山縣のあとを追おうと玄関から出て行こうとした。

「先輩、外に出ないほうがいい!撃たれるぞ!下にはまだ奴らがいるんだから!」高橋は鼻から血を流しながら叫んだ。しかし、藤岡は「大丈夫だ!」と言って出て行ってしまった。

美里と直子は、どうしたら良いのかわからずオロオロしてしまい、ただ「待って!」と言っているだけだった。

高橋は「くそっ!」と吐き捨てると、まだ出血している鼻を押さえながら急いで藤岡のあとを追おうとした。彼は傍にあった銃を引ったくるように掴むと玄関から飛び出した。高橋がドアから出た瞬間、ライフルの射撃音が聞こえた。高橋は咄嗟に屈んで何処から射撃音が聞こえてきたのか探した。下の階だった。ということは自衛隊ではない。彼らはまだ離れた所にいたからだ。となるとその射撃音は藤岡に違いなかった。

高橋は左右を見て奴らがいないか確認すると、階段に向かい降りようとした。その時、階段を上がって来る奴が一人いたので、すぐさまそいつの頭に向けて銃を発射した。そいつはひっくり返り階段から転げ落ちていった。高橋は手すり越しに外を見ると山縣が一階のメインゲートから出てくるのが見えた。高橋は急いで階段を駆け下りた。

上の階からは美里と直子が通路の手すりから見を乗り出すように下を眺めながら「よしあき!」と叫んでいた。高橋は一階まで降りている余裕が無いと思い、山縣を援護する為に二階の踊り場から銃を突き出して狙いを定めた。

すでに山縣は奴らに囲まれそうになっており、前にも後ろにも行けずにいた。

その時、メインゲートの方から「山縣、身体を伏せろ!」と藤岡が叫んでいるのが聞こえてきた。しかし、山縣は完全に動揺しており「たすけてくれ!」と叫ぶだけで藤岡の声はまったく聞こえていないようだった。

高橋は、躍り場から見える範囲で山縣に向かってくるやつらを一人ずつ狙って撃った。藤岡もゲート付近でそうしていた。しかし、二人ともその場所からでは山縣に近づき過ぎた奴をどうしても狙う事が出来なかった。

藤岡は仕方がないのでゲートから出て距離を詰めながら射撃する事にした。

それを見た高橋は咄嗟に「先輩、危ないから出ちゃだめだ!」と叫んだ。藤岡が危険な行動にでたので高橋は山縣をあきらめ、今度は藤岡の援護をした。

藤岡は一心不乱に山縣の援護をしていた。危険だった。自分のほうに向かってくる奴らを完全に無視しているのだ。高橋は藤岡に近づいてくる奴を順に狙った。藤岡は山縣を助けようとして他が全く見えていないのだ。

藤岡は、山縣をもう少しで捕まえそうな奴の頭に狙いを定めて射撃した。ところが外れてしまった。「クソッ!」と吐き捨てるように言うと、もう一度撃とうとした。しかし、次はなかった。その瞬間、山縣は奴らに捕まってしまったのだ。

「山縣!」藤岡はそう叫びながら近づいていった。

「先輩、もうダメだ!やめろ!あぶないぞ!」高橋はそう叫んだ。藤岡は山縣の所まで来ると、上に覆いかぶさっている奴を銃床でなぎ倒し頭に向けて一発発射した。しかし、それはすでに遅く山縣を襲ったあとだった。

「ちくしょう!てめぇら!」藤岡はそう叫びながら、その場で仁王立ちになり周囲の奴らに射撃を加えた。

「先輩、中にもどれ!」高橋はそう叫んだが一向に聞こえてはいないようだった。

藤岡は、もう10人以上殺ったのだがまだ近寄ってくる奴がいた。高橋は一瞬、一階まで降りて援護しようかと思った。だが、今射撃を中断するのはかえって危険だと判断した。やむなく彼はそのままの位置から援護射撃を続けた。しかし、数発撃つとライフルの弾が切れてしまった。

「くそっ!」高橋はそう唸るとマガジンラッチを押して空になったマガジンを外した。その瞬間、高橋は自分の後ろに人のけはいを感じたので振り返った。すると、そこには手を伸ばし彼に襲いかかってこようとしている男がいたのだ。高橋は慌てて銃床でそいつの顔面を殴打した。そして、空いている左手で腰のナイフを引き抜くと、くるっと反転して胸におもいっきり突き刺した。そのナイフは上手く心臓に刺さったらしくそいつは動きを止めた。高橋が蹴りを入れるとそのまま階段を転げ落ちていった。彼はライフルに新しいマガジンを挿入するとチャ―ジングハンドルを引き薬室に初弾を送り込んだ。そして、再び藤岡の方へ銃口を向けて援護射撃をしようとした。

「しまった!」高橋は毒づいた。その時、高橋は目の前の光景を見て愕然としたのだ。藤岡のすぐ向こう側から一人の男が彼に襲い掛かろうと向かって来る所だったのだ。藤岡はまったく気付いていない様子だった。しかも、高橋のいる位置からではちょうど藤岡との死角に入っており撃つことが出来なかった。

「先輩、しゃがんで!」高橋は大声で怒鳴った。だが藤岡にはその言葉が聞こえていなかった。彼は全く違う方向を射撃し続けていた。高橋はもう一度叫んだ。すでに狙いはつけてあった。あとは藤岡がしゃがむだけで倒す事が出来たのだ。しかし、藤岡は動かなかった。

「先輩、危ない逃げて!」高橋はこれ以上ないというくらいの声で叫んだ。今度は藤岡が反応した。しかし、遅かった。そいつは藤岡に覆いかぶさってきたのだ。その瞬間、藤岡の頭が下がり代わりに奴の頭が飛び出したので高橋は引き金を引いた。その弾丸は頭にあたり後頭部が後ろに砕け散った。

高橋は射撃し終わると同時に「先輩!」と叫びながら階段をおりた。“噛まれていませんように“と祈りながらマンションの出入り口の方へ駆けて行った。その時、上の方から美里の悲鳴のような声が聞こえた。

「よしあき!」物凄い叫び声だった。高橋はその声に背筋が寒くなった。「まさか!」高橋はそう呟くと建物から飛び出し藤岡が倒れている所に向かった。

「先輩!」高橋は声を掛けながら藤岡に近づきその横にかがみこんだ。

「先輩、大丈夫か?!」高橋はそう言うと持っていた銃を放り出して藤岡の体をさわった。“頼むからやられていないでくれ”と祈りながら傷口をさがした。

その頃には自衛隊の隊員が高橋達の近くまでやってきて、あたりに残っている奴らの掃討を開始していた。

藤岡が「うっ」と唸ると眉間にしわを寄せてつらそうな顔をした。

「まさか、やられたのか?」その時、上の方から直子の声が聞こえてきた。「高橋さん!美里さんが倒れた!」と言う悲鳴に近い声だった。高橋は上を見上げた。

「まだ危ないから部屋に連れて行くんだ!」高橋は部屋の方に手を振り大声で怒鳴った。それからまた藤岡の方へ視線を戻した。

「何処をやられたんだ?!」高橋はそう聞きながら再び身体の傷を調べた。すると藤岡の肩を触った手にじっとりとした感触がつたわった。高橋は慌てて藤岡を傾けその場所を見た。何と、右上腕部の外側が綺麗に噛み千切られていたのだ。高橋はそれを見てショックを受けた。“藤岡がやられたのだ!”そう思うと気が遠くなってきた。何を言おうとしても声にならなかった。高橋は藤岡を抱き上げた。

「ごめんよ、先輩。援護が遅れた。俺のせいだ。先輩、聞こえる?」高橋は必死で藤岡に話し掛けた。暫らくすると藤岡が目を開いた。

「あぁ、いかん、やられた」藤岡はそう言って苦しそうな表情をした。

「大丈夫だからしっかりしてよ、何であんな奴のために」高橋は倒れている山縣に顔を振り向けて言った。

「そんなに言うなよ。かわいそうじゃないか。うぅ、からだがしびれてきた」藤岡は苦痛の表情を見せた。

「先輩、しっかりしてよ。美里さんどうするんだよ。もうすぐ結婚するんだろ」高橋は泣きながら言った。

「高橋、すまん。美里を頼む」藤岡は段々と話しをするのも難しくなってきているようだった。

「何言ってるんだよ。先輩じゃなきゃダメだよ」高橋はそう言うと涙を拭いた。しかし、どんどん溢れてきて藤岡の顔をはっきり見る事は出来なくなってきた。

「いいか、約束だ。美里を頼んだぞ」

「わかったよ」高橋はもう声が出なかった。

「高橋、もうひとつ頼みがある。俺は奴らみたいになりたくないんだ。だから、ああなる前に俺を撃ってくれ」

「そんな事できる訳ないじゃないか!」高橋は声を振り絞って言った。

「おまえにやって欲しいんだ。他の奴じゃなく、おまえに」藤岡は殆ど意識がなくなりつつあった。

「わかったよ、先輩」殆ど声は出ていなかったが、藤岡には聞こえたようだ。

「たのむ」そう言って藤岡は意識を失った。

「せんぱい」高橋はそう言いながら大泣きした。誰に聞こえてもかまわなかった。泣けば藤岡が帰ってくるかのように泣いた。

高橋はしばらくそこから動かなかった。ずっと泣いていた。

まわりでは射撃音がまだ続いていた。自衛隊員達は慌しく動き回り、近くのビルの中に入って生存者を探している。暫くして、その中の一人の隊員が高橋のそばにやってきて言葉をかけた。「そろそろ、離れた方がいい」隊員はそう言いうと高橋の肩に手をやった。

「約束したから」高橋はそう言って、藤岡のベルトについていたM-9を取り出した。

自衛隊員は、その拳銃を見て一瞬ビックリしたが、コクリと頷いて「使い方は知っているんだね」と静かに言った。

高橋は頷いた。

「このビルの305に女性が二人いるのでよろしくお願いします」高橋はそう言うと藤岡の体を寝かせて両手を胸で組ませてやった。自衛隊員はその光景を静かに見つめていた。

「305だね、わかった」隊員はそう言うと他の隊員に指示し、そこから離れていった。

高橋は、もう答えてくれない藤岡に向かって泣きながら呟いた。「先輩は正義感が強いんだから。何故なんだよ。何もそこまでしなくてもいいのに。俺、美里さんに何て言ったらいいの?おしえてよ」高橋はそう言いながらM-9のマガジンを抜くと弾が入っているかを確かめた。そして、元に戻すとスライドを引いて弾を薬室に入れ撃鉄を起こした。

「俺、美里さん守るから。約束したからね。きっと守るよ」高橋がそう言い終わった頃、藤岡の指がピクリと動いた。

高橋は起き上がってくると思われるところに銃を向けた。そして、藤岡が起き上がってきたと同時に「せんぱい」と呟き引き金を引いた。あたりには悲しい銃声が鳴り響いた。

高橋は山縣にも額に一発撃ちこみ、藤岡をまた元の形に戻し目を閉じてやった。

建物から自衛隊員に連れられ二人が降りてきた。直子は泣いている。そして、美里は担架に載せられていた。高橋は拳銃に安全装置を掛けると腰のベルトに押し込んだ。そして急いで美里に近づいた。

「美里さん!」高橋は美里にそう声を掛けると心配そうに美里の様子をうかがった。

「頭を打っています。すぐ医者に見せないと」付いていた隊員はそう言いいながらトラックの方に運んでいった。

「よろしくおねがいします」高橋はそう言って担架について行った。

そして、高橋はトラックの所までくると後ろを振り返った。

「さようなら、先輩」高橋は藤岡の亡がらにそう告げるとトラックに乗り込んだ。


日本愛知県 守山


輸送トラックの中で高橋は美里の手を握っていた。直子の話では藤岡が襲われた時に気を失い、倒れた時に後頭部を激しくぶつけたらしい。傷口にまかれた包帯はすでに血で赤く染まりつつあった。

彼女は藤岡がやられたことを知っているのだろうか。最後は自分がとどめを差した事を知ったらどう思うだろうか。それを考えると高橋は怖かった。

美里の身体の事も心配だった。医官の話では「外傷は大した事がないので、いいとは思うが内出血の可能性があるので予断は許さない」と言っていた。高橋はもしこのまま美里まで死んでしまったらどうしようかと思った。藤岡に合わせる顔がない。約束したのだから。しかし、そんなことより、今となっては、美里がいなくなったら自分自身生きていく気力がなくなるような気がした。一番親しい友達を無くし、その友達の一番大事だった人が、もし…。

おそらく精神的に耐えられないだろう。今でさえ限界なのだ。藤岡が死んでしまった今、美里がいるから持っているようなものだ。

直子は高橋の隣で美里を見つめていた。彼女は血だらけのタオルを持っていた。恐らく美里のキズ口をそれで押さえていたのだろう。服や手にも美里の血が付いていた。

「私達を助けなければ、私達が助けを求めなければ藤岡さんが死ぬ事はなかったのに。美里さんもこんな事にはならなかったのに」そう言いながら泣いていた。

「そんなことはないよ。君達のせいじゃない」高橋は直子にそう言った。そして、自分にも言い聞かせた。そうでもしなかったら直子に対して見苦しい事を言ってしまいそうだったからだ。もし、そんなことを言ったら死んだ藤岡が怒るだろう。美里もだ。

「でも山縣さんがあんなことしなければ…」直子がそこまで言ったところで高橋は話をさえぎった。

「君には悪いが、山縣は死ぬことによってその責任をとった。それでいいんじゃないか?」高橋は優しく言った。そしてしばらく沈黙が続いた。

トラックの中の生存者は殆どが衰弱していた。自分自身の力で、この73式大型トラックの高い荷台に乗れる者はいなかった。みんな、殆ど何も食べていないのだろう。彼らにしてみれば、高橋達が元気なので不思議なのかもしれない。ましてや、拳銃を携帯しているので何者だろうと思っているかも知れなかった。

「君も寂しいだろう。友達を亡くして」高橋は直子に言った。

「ええ、長い間付き合っていましたから。でも、藤岡さんと美里さんを見ていると私たちは何か違うような気がしました」直子は寂しく言った。

「人と人との付き合い方は色々あってもいいんじゃないか?これが正しいとか間違っているとかはないと思うよ」

「そうですね」

二人の会話はそこで途切れた。基地に着いたのだった。


急にトラックが止まると後ろのカバーが外された。そこには自衛隊員や医療チームが集まっていた。彼等はトラックに乗っていた生存者が荷台から降りるのに手を貸した。そして、最後に何人かで美里を司令部の病院に運ぶため担架からストレッチャ―に移した。高橋と直子は美里に付いて行こうとしたのだが医療チームに止められた。

「あなた達は向こうのテントで書類に書き込んでから来てください。この方の名前だけ教えてもらえますか?」

「中村美里です」高橋はそう言うと美里を見送ってテントの方に向かった。高橋は体が重かった。もう動きたくなかった。しかし、直子に連れられるように歩いていった。

「おい、高橋じゃないか?」突然名前を呼ばれて高橋はビックリした。よく見ると自衛隊時代の上官で小隊長の大野太だった。自衛隊を辞めるときにこのまま続けろと勧めてくれたのはこの大野だった。あれから4年近くたっていたが体格や顔つきは全く変わっていなかった。今では35歳くらいになっているはずだが、相変わらず引き締まった身体をしていた。

「あっ、小隊長」高橋は驚いたように言った。

「やっぱりそうか、お前無事だったのか」大野は嬉しそうにいった。

「小隊長もご無事で何よりです」

高橋は今までの事をかいつまんで話した。

「そうか気の毒だったな。でも、まだいい方かもしれない。他の人たちを見たらそう思うだろう」そう言うと指で周りを示した。そして続けた「落ちついたら宿舎まで来てくれないか?ちょっと話があるんだ」大野はそう言って別れた。

高橋と直子は生存者名簿の作成書類に記入した。しかし、高橋は拳銃を持っていた為、その入手経路を書類にしなくてはならなかったので時間が掛かりそうだった。そこで、高橋は直子に先に美里のところに行ってもらう事にした。

結局、拳銃は係員に押収されてしまった。係員が言うには基地内は自衛隊が守っているので必要ないとの事だった。高橋は元自衛官だと言って許可を得ようとしたが再び自衛隊に編入した時点で支給すると言われてしまった。彼は渋々拳銃を係員に渡した。しかし、高橋は一本だけ残ったランドール・サバイバルナイフM14を押収されなかったのでホッとしていた。今となっては、このナイフが唯一藤岡の形見のような物なのだ。彼は再び腰のベルトにナイフを吊るすと固定する紐でしっかりと太ももに結んだ。

高橋は1時間ほど遅れて美里のいる病院に向かった。彼はこの駐屯地に3年間勤務していたがその頃とは全く風景が変わっていた。まるで別の場所にいるようだった。建物という建物には避難してきた一般市民が溢れんばかりにいたのだ。それどころか建物に入りきらない人々が至る所に張ってあるテントの下でうずくまっていた。彼等は一様に毛布に包まり座り込んだり横になったりして辛うじて生きているという感じだった。その光景を横目で眺めながら病院だと言われた建物に近づいて行った。大体、高橋はこの駐屯地に病院など無かったし、出来たという話も聞いたことはなかった。案の定、そこに行ってみると病院と言うのは名ばかりで連隊本部の管理棟の建物を流用しているだけの事だった。そこでも病室と思われる部屋から溢れたベッドが通路一杯に並んでいた。高橋は受付らしき所で美里の部屋を教えてもらいそこに向かった。

彼女の部屋は2階の通路の一番奥だという事だったが、そこに行くまでに通路に並んだベッドを交わしながらでないと行けなかった。美里は辛うじて部屋の中で寝ていたのだが20畳くらいの部屋にベッドが無理やり押し込められているという感じで息苦しいくらいだった。高橋が部屋に入った時、ちょうど医官がいたので彼女の状態を聞いてみた。彼の話では、外傷は大したことなく数針縫う程度だったが脳震盪を起こしていた。内出血に関してはCTスキャンがないためわからないとの事だが、おそらく大丈夫だという事だった。しかし、意識を取り戻すのは時間がかかるかもしれない。今日戻るかもしれないし、ずっと戻らないかもしれない。その言葉を聞いて高橋は辛かった。もし、このまま意識が戻らなかったらどうしよう。どちらにしても今の自分にはこうやって見ているだけで何もできる事はないのだ。

しばらく、高橋と直子は美里の隣で座っていたが、何かあったら呼ぶという事で高橋は大野のところに行く事にした。

聞いていた宿舎に行ってみると部屋の名札は第1中隊長大野一尉になっていた。高橋は藤岡の事で動揺していて付けていた階級章に気が付かなかったのだ。しまったと思いながら高橋はドアをノックして返事を待った。

「どうぞ」聞きなれた声が聞こえてきた。

「高橋です。入ります」高橋はそう言うとドアを開け中に入った。部屋の中では大野がイスに腰掛けていた。

「高橋か、よく来てくれた。用事は済んだのか?まあ、掛けろ」大野はそう言ってイスを勧めてくれた。

「はい、ありがとうございます。友達の治療が終わり今ここの病院で寝ています」高橋はイスに腰掛けながら言った。

「そうか、ちょっと疲れているみたいだな」大野が高橋の顔色が悪いのを見てそう言った。

「ええ、少し。それより、さっきは失礼しました。小隊長だなんて言って。中隊長になられたんですね」

「あぁ、臨時さ。指揮官不足でね。いつの間にやら二尉から一尉にされたよ。それも含めてだが君も知っている通り今、隊員が不足しているんだ。民間人からも志願者を募っているくらいだ。どうだろう。また復帰する気はないか?」

「申しわけありませんが、今はそのつもりはありません」高橋はきっぱり断った。

「早いな。もうちょっと考えてもいいんじゃないのかな。さっき届いた報告書と君の話を聞いてどんな内容かは大体見当はつく。かなり辛かっただろう。しかし、今の日本の状況を考えてくれ。君の射撃の腕が欲しいんだ。報告書を見る限り全く劣っていないようだが」

「申しわけありません。自分は今やらなくてはいけない事があるんです」少し時間を置いてそう答えた。

「もしよかったら、そのやらなければいけない事をきかせてくれないか?」大野は高橋の深刻そうな顔を見て聞いてみた。

「報告書をご覧になっていただければわかると思いますが、自分は、どうしても今病院にいる女性と一緒にいて彼女を守らないといけないのです。大切な友達との最後の約束ですから」そこまで言うと高橋は目を潤ました。

それを見て大野一尉は、高橋の気持ちが固い事を実感した。しかし、もう一押しすることにした。

「そうか。ものは相談なんだが、失礼ながらその女性の事は病院から聞かせてもらったよ。実は俺の部隊は2日後、岐阜基地に行く事になった。そう言えば君の地元だったな。あの近くには設備の整った病院があり、今は自衛隊の管理下にある。君も、もう見たからわかると思うが、ここの臨時の病院とは雲泥の差だ。スタッフもちゃんとした医者だしな。俺に付いてきてくれれば彼女をそこに入れることが出来ると思う。もちろん、完全に君を拘束するつもりもない。必要な時に手を貸してくれればいいんだ。今では持っていた銃も没収されたんだろう?君への待遇として陣地防衛用として銃を渡す事も出来るんだが。その条件なら友達との約束を破るとは言えないんじゃないのかな?それに君は予備自衛官だ。本来なら国家の非常時ということで無理やり徴用する事も可能だ。だがな。俺はそんな事はしたくないんだよ。わかってくれないか?」

それを聞いて高橋は考えた。大野の言うことはもっともだった。高橋には予備自衛官としての義務がある。大野がそんな事はしないにしても、この状況下では徴用されたところで文句は言えないだろう。それに美里をここの病院より設備の整った普通の病院の方がいいに決まっている。

「わかりました。もう少し考えさせてください」

「いいだろう。しかし、こっちにも段取りがある。明日の朝までに返事をもらえないかな?」

「それでは、明日の朝、返事を持って参ります」そういって高橋はドアから出ようとした。その時、大野は言った。

「いい返事をまっている」


高橋は美里の病室に戻って美里の顔を見ながら大野中隊長との話を考えた。本当はこのまま一緒にいたい。いや、いたほうがいいと思う。しかし、大野一尉の言う通り、もし万が一の時には、銃もないのに美里を守る事はできないだろう。それにいい病院に入れる事が出来れば安心だ。完全に拘束する事もないという。

美里の手を握り高橋は呟いた「美里さん。そうしてもいいかな。先輩はどう言うと思う?」

その晩、高橋は美里の傍らで何度も何度も同じ質問をくり返した。


高橋は翌朝大野一尉のところに行き、提案を了承した事を伝えた。

「高橋、ありがとう」

「いえ、こちらこそよろしくお願いします」高橋はそう答えると大野と今後の打ち合わせをして、美里の所に戻ってきた。

しばらく病室にいると、「高橋士長」と久しぶりに呼ばれた。高橋はその声のした方を見ると、そこには女性兵士が立っており、たたまれた戦闘服と装備をもっていた。その見覚えのある顔を見て、高橋は突然立ち上がり「恵美子!」と叫んだ。

「恵美子はやめてよ。あなた一応原隊復帰なんでしょ。岩田二曹と呼んで頂戴」と笑顔で言った。

「君も無事だったのか。でも、どうしてそんな物もっているの?何でここにいる事を知っているの?」高橋は驚いて色々質問した。

「質問ばっかりね。私だって聞きたい事は山ほどあるけど今は忙しいからまた今度ね」恵美子はそう言うと持っていた装備を高橋に渡した。

「とにかく君も無事でよかったよ」高橋は装備を受け取るとそう言った。

「あなたもね。でも仲間は結構やられたわ。あなたの知っている人たちも大勢ね」恵美子はそう言うと寂しそうな顔をした。そして、少し間をおいて続けた。「大野中隊長に聞いたの。あなたがここにいる事と自衛隊に復帰した事はね」恵美子は苦しそうな笑顔でそう言うと更に続けた。

「あなたは私と一緒の所属、普通科第1中隊ね。あなたは中隊長直属特別顧問っていう仰々しい肩書きになっているらしいけど。まあ、簡単に言えば臨時雇いって事ね。でも任務の時はちゃんと敬語でお願いよ」

「普通科って?君は通信大隊のはずだろ?」高橋はいまだに理解できず驚いて質問した。

「志願したのよ。現場が人手不足だからね。それじゃ私まだ仕事が残っているから行くわ。お大事に」恵美子は美里の方をチラッと見るとそう言って帰っていった。

さっそうと歩いている恵美子のうしろ姿を見送りながら高橋はキョトンとしていた。

直子は二人の会話を聞いて「知り合いですか?」と尋ねた。

「あぁ、自衛隊時代に付き合っていたことがあるんだ」

恵美子とは入隊して間もない頃、富士総合火力演習の時に知り合ってそれから付き合い始めた。彼女は4才年上で高橋が自衛隊を辞めるまで付き合っていたが、その後疎遠になり自然消滅のような感じになっていた。高橋はビックリした。彼は頭の片隅で彼女の安否を気遣かっていはたが、この状況ではおそらく無理だろうと思っていたからだ。

いずれにしても、彼女が助かっていてくれたのは高橋にとってこの二日間で一番いいニュースだった。


アメリカ合衆国ペンシルベニア州 フィラデルフィア・マイクロ波研究所


 マイクロ波研究所には数体の生体ユニットが檻の中にいた。これらのサンプルはアラスカ州で軍に捕獲され、ここまで軍用機で輸送された者達だった。最初に彼等を見た研究者達は緊張と恐怖から揃って嘔吐していた。ユニットは遠目から見た感じはどう見ても普通の人たちに見えた。しかし、研究者達が近づくと急に形相を変えて襲い掛かってこようとするのだ。当然、最初からその事は十分注意するように伝えられていたのだが、あまりの事で驚きが隠せないでいた。余りにも危険な為、研究所内、特にこの研究室は軍隊が厳重に警備していた。

 リチャードは兵士がうろうろするようになったこの研究所が本当に今まで自分が働いていた所なのかと疑いたくなるようだった。それほど変わってしまっていたのだ。それも当然で、今ではこの研究所自体、政府が完全に接収しており、リチャード達以外の従来働いていた研究者はみんな放り出されていた。今では生体ユニットの解剖や実験の為に医療分野の専門家が常駐していた。新しい設備も入り解剖室や手術室、CTスキャン室さらにはICUまでも完備する大病院のように変貌してしまっていたのだった。医療スタッフたちはごく自然にこのユニットたちを実験用のモルモットとしか扱っていなかった。だが、リチャード達技術者にはとてもそんな事ができるとは思えなかった。どう見ても人間なのだ。彼らに対して死を意味する電磁波を当てて生体組織の変化を調べるなんて事は今まで考えても見なかった事だったのだ。しかし、アラスカや日本、韓国などの被害にあった地域の生存者たちは、毎日彼らに囲まれそして襲われているのだ。その想像を絶する恐怖はリチャード達には決して理解できないだろう。彼らはそれを思うと仕方がない事だと割り切って実験を続けるしかないと思い込むようにしていた。

 そんな中で、クリコフの意気込みは他の追随を許さなかった。まるで何かにとりつかれているようにのめり込んでいた。彼だけはこのユニットが、ただ運悪く病原体に感染してしまった人間なのだという事を全く関知していないようだった。まるで、犯罪者を見るような視線を彼等に浴びせ掛けていた。クリコフにしてみれば当然だった。自分達が管制官の仕事を無事やり遂げたと思ったら、今度はこいつ等が現れて彼の人生を滅茶苦茶にしてしまったのだ。おまけに、愛妻イリ―ナが殺されるかもしれないのだ。そう思うと腹立たしくてしょうがないのだった。

 研究者達は今までの実験から得た最新の研究データを見直すため会議室に集まっていた。

「やはりそうだ。ミリ波の中でも270GHz~280GHzの周波数帯をユニットは嫌っているようだ。医療班からの医学的な見地ではユニットの脳が異常共鳴しているそうだ」リチャードが言った。

「異常共鳴?」

「ああ、僅かながら脳が振動しているらしい。その振動が続くとユニットの脳が崩壊する。どうしてそうなっているのかは今調べている所だそうだ」

「その異常共鳴がこの周波数帯だけで起こるのか」

「データではそうだな。しかし、それでは自分達にとって危険な高周波に自ら近づいているのは何故なんだ?普通ならそんな事はしないだろう?」クリコフが言った。

「彼らが、自分で考えて行動しているのであれば決してそんな事をするはずはないだろうな。しかし、医療班のスタッフの話ではユニットは思考そのものをしてないという事だ。まれに僅かながら記憶が残っている場合はあるようだが、下等動物以下のレベルであって危険だという事を認識するまでは至っていないらしい。あくまで、彼らの脳の役割は生体組織を維持するための自律神経と運動神経をつかさどるだけだそうだ。それと、思考といえるかどうかわからんが人に噛み付いて病原体を感染させ増殖させるという本能のようなものがあるだけらしい。そうなると、彼等がどうやって無事な人間を捜しているのかという事は別として、高周波による脳の共鳴が何かのシグナルだとしてしか認識していないんじゃないのか?。それで、近づいてくるっていう事は考えられないだろうか?」リチャードが言った。

「それで、異常な共鳴がある場合は逆に避けるのか?」クリコフが言った。

「もしかしたら、第一段階のユニットも紫外線による生体組織破壊ではなくて、脳の異常共鳴で死んでいったのかもしれない。いずれにしても、どこがどうして死んだかなんてわかっていないんだからな」

「確かにそうだ。その考え方もありうるな」

「日本では高周波を使ってユニットを都心に集めて周辺地域の救助活動を容易にする作戦を取るらしいぞ」フランスの研究者ランス・ポワチエが言った。

「それで中心部に残った生存者はどうするんだ?」イギリスのトーマス・チャンドラーが言った。

「恐らく見捨てるつもりだろう。背に腹はかえられないんじゃないかな。早くしないと生存者が餓死しかねないからな」

「そこに集まった所で奴らの嫌いな周波数の電磁波を当てたら効果があるんだけどな」

「しかし、一歩間違えると折角集めた連中をまた拡散させてしまう可能性もある」

「そうだな。間違いなく奴等を殺せる周波数を見つける以外ないな。それに、都心ではビルが乱立していて電磁波を全ての連中に当てるのは難しいんじゃないか」

「リチャード。君の研究では分厚い岩盤でも通り抜けるマイクロ波の研究をしていたのだろう?それはどの周波数帯でも可能なのか?」クリコフが言った。

「ああ、基本的には同じことだからな。今回の実験ではマイクロ波が80メートルの岩盤を通り抜ける事に成功した」

「それは凄いな。どうやるんだ?岩盤の中に水脈でもあったら跳ね返ってしまうだろうに」

「基本的には変調パルスで発振するのさ」

「変調パルスね。詳しい事を教えてもらえないか?それがうまくいけばビルの乱立する都心でも十分に効果は期待できるな」

「よし、そのあたりからもう一度やり直してみよう。まずは変調パルスの講義からだ」リチャードがそう言うと彼らは再び研究室に戻った。

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