第五章

日本東京 首相官邸


武田首相は、会議室のイスに腰掛け今日十数杯目のコーヒーでアスピリンを無理やり胃に流し込んでいた。既に胃袋は悲鳴をあげていた。あたりはタバコの煙でもうもうとして、この環境で立っていられるのが不思議なくらいだった。頭痛と吐き気は事件が発生してからずっとしており、どんどんひどくなっているようだ。

しかし、未だに外に出る事が出来ず、ただ奴等に怯えながら救助を待っている生存者のことを考えると、自分の体調なんて事など針の穴ほどのものだと思えた。そんな事より一人でも多くの国民を助ける為にどうすれば良いかという事を早く考えなければならない。武田は焦っていた。

今日一日で、奴らについてわかった事といえば第一段階で感染した人たちは紫外線を嫌うという事だった。元々は、このウイルスはロシアの人工衛星と共に宇宙空間からやって来たと思われ、放射線には強かったようだ。しかし、放射線に弱い人体を宿主として寄生するため、繁殖する段階で変化していったのだろう。したがってこの第一段階の者を殺すには高レベルの放射線を浴びせれば死ぬ事はわかった。しかし、生存者がいる所で、そのような兵器が使えるわけもなく、ましてや第二段階の者にも有効かどうかは定かではない。

また、第二段階の感染者のウイルスは特殊な酵素を作り出すことが判明した。もともと感染者は内臓機能を極端に抑制することによって長期間にわたって人体の活動を維持することが可能であった。その上、このウイルスが作り出す酵素によって、体内に蓄積されている脂肪を効率よく消費し、さらにそれが無くなれば不必要な内臓や筋肉組織を脂肪に変換するので感染者は成人ならば一年以上は活動できるとのことだった。結局、ほっておいても居なくならないということだ。

さらに問題なのは、大量の死者が腐敗を始めていることで、伝染病が生存者の中に蔓延する心配があることだった。屋外には感染者がいるので死体を処理することが出来ない。いずれにしても生存者を救助するのに手一杯でそんなことをしている余裕は無いのだが…。今は腐るに任せているのが実情だった。あたりには恐ろしいほどの悪臭が漂っていた。大量の消毒薬を撒く必要があるが、そんなものあるわけが無かった。

一部では電気の供給が止まってしまっていた。もちろん、最初の段階で電線が事故などで切断されていた所は当然ながら止まったままだった。ところが今では、変電所や発電所にも異常が発生し始めていたのだった。しかし、エンジニア不足のうえ異常個所がわからない場合が多く、復旧に時間がかかっていた。このままでは、一両日中に日本全体の三分の二以上が停電する事になりそうであった。

武田首相は電力が各家庭にいかないとなると、肝心な時に政府の発表や重要情報を国民に伝える事が出来なくなるので、これも至急対処する必要にせまられた。ただでさえ、手持ち不足なのに、このままでは救援活動の停滞に一層拍車が掛かってしまう。まるで真っ暗な海の上で小船が暗礁に乗り上げてしまったような感じだ。武田首相は一層憂鬱になった。

数時間後、武田首相は指揮通信センターの大型ディスプレーに映る日本地図を見ていた。そこには今現在の自衛隊が確保した勢力図が映し出されていた。赤いブリップがついている所が確保地域である。見た限りでは小さな赤い点が所々に付いているだけだった。すでに発生から3日目に入っているのにも関わらず、この調子では全部が赤くなるのに一体どれぐらいの時間が掛かるのだろうか。それを思うと滅入ってくる。武田首相は統合幕僚監部の幕僚長である木野伸夫陸将から現在進行中の作戦と状況報告のブリーフィングを受けた。

この木野陸将も武田と一緒でこの3日間、寝ずにこの指揮通信センターにこもりっきりで任務に当たっており、軍服もよれよれで無精ヒゲまで生やしていた。顔もどす黒くなっており、この状態ではいつ倒れても不思議ではないだろう。

彼は不本意な内容を首相に伝えなくてはならず、余りの申し訳なさに、このまま死んでしまいたい気持ちだった。

「ただいまの勢力圏は全体でまだ5パーセントに過ぎず、そのエリアで確認できた生存者は30万人足らずです。現在、陸上、海上、航空の各自衛隊駐屯地や基地を基点に徐々に勢力圏を広げつつあります。しかし、勢力圏拡大の作戦を実行する為には、戦車、装甲車、ヘリなど隊員を完全に隔離できる物が必要なうえ、各基地にその装備があるわけでもなく、配備されていない基地、もしくは配備されてはいても少ない基地にはヘリによって運ぶしか手立てがありません。現在、北海道の第7機甲師団から移動を行っている所ですが、大型ヘリの数も十分ではなく、あまりはかどっておりません。今でもヘリは全機休みなく稼動しておりますが、このままでは故障や墜落の危険性もでてくるため、いずれ整備の為、半数は地上に留めることになるでしょう。また、十分な兵器があっても燃料、弾薬の消費が激しく補給に基地もしくは燃料補給所に戻らなくてはならない場合があり、これも作業遅延の原因になっています。ただ、小銃、機関銃用の5.56ミリ弾及び7.62ミリ弾、12.7ミリ弾の備蓄が底をつきそうだったのですが、これは昨日から米軍に供与してもらっており、各基地に空中投下という形で空輸しております」と木野陸将が言った。

「それで、いつになったら日本全国まで勢力圏が伸びるんだ?」と日本地図を指差しながらきつい調子でいった。

「現在、陸上自衛隊は全体で約3個師団に満たない兵力しかありません。今では、航空、海上各自衛隊からも陸戦隊を組織して活動をおこなっている状態です。その陸戦隊にしても、せいぜい1個師団分の部隊を編成している程度なのです。このままの戦力で全ての都市を掌握するには、どう考えても数ヶ月から1年近く掛かると思われます」とバツが悪そうにいった。

首相はそれを聞くと、うな垂れてしまった。それではみんな死んでしまう。彼はそのような答えが返ってくるという予想はついていたが、実際に言われるとあまりにもショックだった。やはりどう考えても無理なのだ。

「アメリカの2個師団が1週間後に日本に到着することになっていると思うが、それがあってもそんなに時間がかかるのか」

「はい、アメリカの1個機甲師団と1個機械化歩兵師団が十数隻に分乗して横須賀港、横浜ノースドック、佐世保港、沖縄のホワイトビーチに分散して入港予定です。アメリカからの要請で、相当数の自衛隊が米軍部隊の到着までに基地の安全確保とアメリカ兵の保護をしようと全力をあげている所です」

「ちょっと待った。在日米軍は自分たちの基地を掌握していないのか?」武田首相はそう質問ながら思った。今まで思いやり予算とかで金をふんだくっておきながら自分で自分のケツも拭けないとは。

「はい、今現在で在日米軍は沖縄の海兵隊基地がある程度機能しているぐらいで、ほかの基地は殆ど壊滅状態です。現在ではほぼ全ての米軍基地が自衛隊の指揮下にありますが、それまでは無事だった米兵が自衛隊に発砲してくる事もあり時間がかかりました」木野陸将が苦虫を潰したように答えた。

「なんて事だ、救助活動に人手が足らないから来てもらうのに、人命救助してもらう前に他人の部屋の大掃除をしないといけないとは」呆れながら武田は呟いた。ただで助けてもらうのは虫が良すぎるか、と自分の考えが甘かったのを呪った。

「しかしながら、米軍2個師団の支援があったとしても日本中を数週間で掌握するのは難しいと思われます」木野陸将は悲しげに告げた。そして残念そうに続けた。「第二陣で、あと1個師団の増援予定も決まっておりますが、それが到着するのは今から1ヶ月先だと言う事です」木野陸将はそう言うと目を伏せた。

武田首相は、その言葉を聞き、断崖絶壁な崖の上に立たされたような気分だった。

そして「1ヶ月先」という言葉を小さな声で繰り返しながら思った。3日間でたった30万人しか保護していない。あと1週間もすれば病人や子供たちの中では餓死する者も出てくるだろう。1ヶ月先では遅いのだ。このままでは本当に犠牲者が一億人近くになってしまうかもしれない。“日本はどうなる?”

こうなると我々は、どうでもこのウイルスを退治するワクチンを開発するか、奴らの弱点を発見しなければならない。それも1週間の内に…。絶望的だった。

彼は天を仰ぐように指揮通信センターの殺風景な天井を見上げながら思った。

“神にすがるしかないのか“と。


日本滋賀と福井の県境の山中 C―130輸送機機内


マクミラン少尉は操縦室のドアについていた小窓から貨物室の様子を覗いていた。ついさっきまで操縦室のドアの前でうろついていた元仲間を捜していた。

マクミラン少尉とロックウッド中佐は操縦室に閉じこもって既に3日が経過していた。その間ずっとドアの前には元仲間が立ちはだかっていた。おまけに彼らにやられたはずのオーウェン中尉とスマイソン曹長まで、どうやら彼らの仲間になってしまったようだったのだ。今では二人も他の連中と入れ替わり立ち代り操縦室の小窓から顔を覗かせていた。これで、この現象は化学兵器ではなく何らかの伝染病ではないかと推測された。かまれたら感染するのだ。マクミラン少尉の拳銃があるので外に出て撃ち殺す事も可能だった。しかし、自分の部下や仲間を撃ち殺すのは耐え難いものがあり、それは最後の手段として残していた。少なくとも操縦室にあった非常食料が無くなるまではそんな事はしたくなかったのだ。上手くすればその間に救助隊が来るかもしれない。その微かな望みにかけてみる事にしていた。しかし、5分前突然彼らの気配が消えてしまった。急に居なくなってしまったのだ。

「どうだ、みんな居なくなったか?」ロックウッド中佐が尋ねた。

「どこにいったんでしょうね?外に出てみましょうか?」マクミラン少尉が言った。

「もう少し待て。恐らく下の貨物室にはいるはずだ」

「ええ、そんな感じですね」マクミラン少尉はそう言った。彼は機外で何か音がするのが聞こえた。

「中佐、機外で音がします。微かですが…」マクミラン少尉はそう言うと割れた操縦室のフロントガラスから音を聞き取ろうと耳をそばだてた。

「私には聞こえんが…」ロックウッド中佐も痛い足を庇いながら体勢を直した。暫くするとキャタピラの音と人の声が微かだが聞こえてきた。

「間違いありません。救助隊が来たようです」マクミラン少尉が言った。その時突然自動小銃の発射音が聞こえた。

「少尉伏せろ!撃たれるかもしれない!味方かどうかも分からんのだ。気をつけろ!」ロックウッド中佐が怒鳴った。外では銃撃が激しくなった。そして大きな爆発音と振動が二人をふらつかせた。手榴弾のようだ。マクミラン少尉は危険を感じた。”核弾頭があるのに爆薬を使うとは。NESTならそんな事はしないだろう。もしかしたら自衛隊かもしれない。連中ならここに核があるとは知らないはずだ。それを伝えないと大変な事になる“

「中佐、ここに居てください!連中に核弾頭があることを伝えて攻撃をやめさせますマクミラン少尉はそう言うとベルトから拳銃を取り出し操縦室から飛び出した。

「やめろ!今行くと撃たれるぞ!」ロックウッド中佐は操縦室内を見回した。操縦席の後ろに赤い箱があるのを見つけた。そこには信号弾が入っているのだ。ロックウッド中佐は赤い箱を開けて中から信号弾発射機を取り出した。

マクミラン少尉は急いで貨物室に降りると物陰に誰か居るのを見て驚いた。スマイソン曹長だった。マクミラン少尉は拳銃を構えるとスマイソン曹長の額に狙いをつけた。

「スマイソン曹長、動くな!動くと撃つ!」マクミラン少尉が言った。しかし、スマイソン曹長は無言のままマクミラン少尉に近づいてきた。

「曹長!」マクミラン少尉はそう言うと引き金を絞った。

その瞬間、機外で大爆発が起こった。振動と爆発音はさっきの手榴弾の爆発とは雲泥の差だった。マクミラン少尉はその爆風で吹き飛んだ。操縦室に居たロックウッド少佐も倒れて後頭部を操縦席の背もたれにぶつけ、そのまま目の前が真っ暗になった。


日本愛知県守山 マンションの一室


夕方になり、また道路には徘徊する奴らが徐々に増えていった。この調子で行くとあと2時間もすればビルの中から殆どの奴が外に出てくるだろう。高橋はその光景を見ながら食料調達のシミュレーションをして、あれこれと思い描いた。基本的には建物内の通路であれば両サイドだけ防御すればいいので楽だろう。しかし、数が多すぎるとそんな訳にはいかなくなる。自分達が部屋から出たのに気付いて、道路からこの建物に戻ってくる奴は果たしてどれくらいいるだろうか?藤岡の射撃はどれくらい当てに出来るのか?高橋はいろいろ考えながらソファーに腰掛けた。

美里と藤岡はキッチンで冷倉庫の中や戸棚に残っている食料の在庫を調べていた。すでに今日の昼頃から電気が止まっており、冷蔵庫の中にあるものが腐ってしまう恐れがあるので、生ものは先ほど夕食で食べてしまった。その食事はこの二日間で一番豪華であった。今となるとレトルトの物や缶詰ぐらいしか残っていない筈なので恐らく明日には食料が全く無くなるだろう。

高橋は懐中電灯がユラユラとちらついているキッチンの方を見ながら“遅くとも明日の夜にはどうでも外に行って食料を探しに行かないといけないな”と思った。しかし、今日銃を取りに行った時、奴らと対決してみて、そう簡単にはいかない事がよくわかった。どう考えても今回は運がよかっただけなのだ。そして、再びあんな恐ろしい事をしなくてはいけないと思うと背筋が寒くなった。そんな事なら、このまま空腹を抱えながらもじっとしていた方がいいように思えた。奴らに噛み殺されるくらいなら餓死したほうがよっぽどマシなような気がした。あんな死に方はしたくない。

高橋は首を振った。自分だけならそれでもいい。だが、美里や藤岡を道ずれにする事は出来なかった。恐らく藤岡も同じ考えだろう。

藤岡は高橋と二人だけなら我慢しようと言うかもしれなかった。だが、彼は美里がいる以上そんな事はしないだろう。彼はもっと怖いかもしれない。何といっても銃の射撃に自信がないからだ。ただ、彼は美里のために精一杯なのだ。

逆に美里は、危険な事をしてまで食べなくてもいいと思っているのではないだろうか。いっそのこと藤岡と二人で餓死するまで一緒にいられればいいと思っているかもしれない。

彼女にとって最も怖いのは、藤岡が先に死んでしまう事なのではないだろうか。もし藤岡が死ぬような事があったら彼女も生きていないかもしれない。

そう考えると高橋は何が正しいのかわからなくなってきた。

自分は、本当に正しい事をしているのだろうか?と思った。さっきは危険を犯して銃をとりに行き藤岡を危ない目に合わせた。そのうえ今度はまた、無謀にも奴らが大勢徘徊している中へ食料を取りに出ようとしている。これで、本当に美里が喜ぶのだろうか?今度も無事に藤岡と自分は戻って来られるのだろうか?もし藤岡が死んだら美里は?そう考えると高橋は、真っ暗になってきた部屋の中で悲しくなってきた。そして、お袋の事、妹の事、会社の同僚の事、友達の事、マスター達の事、これからの事、考え出すときりがなく、どんどん溢れてきてどうしようもなくなった。


藤岡は食料の在庫調べが終わり高橋の方にやってきた。

「あんまり無いな。レトルトのハンバーグが2個と缶詰が5個ぐらいだ。それと野菜が少しだな」藤岡はそう言うと高橋の様子がちょっと変なのに気付いた。

「どうかしたのか?」藤岡は高橋に尋ねた。

その言葉に高橋はハッと気がつき「いや、なんでもないよ」と平静を装い静かに言った。高橋は涙を流しているのが見つかったらどうしようと思ったが、部屋が暗すぎて藤岡には見えなかったようだ。

「そうか、それならいいけど」藤岡はそう言ったが、高橋の声の調子からすると、もしかしたら彼は泣いていたかも知れないと感じた。しかし、それには触れられたくは無いだろうと思い気づかないふりをした。

高橋は、このまま黙っていると変に思われると感じ、声が震えないように一度咳払いをしてから「ちょっとくらい食べなくても大丈夫だよ」と言った。

「あぁ、そうだな。何とか明日の分ぐらいはあるからな。しかし、驚いたな。お前の方から今夜にでも出かけようかと言い出すかと思ったのに」藤岡はそう言った。

高橋は少し間をおくと何かを決心したかのように立ちあがった。

「食料集めは、俺一人で行こうかと思って」

「冗談だろ?!」藤岡はビックリしたように言った。

「いや、本気だよ。先輩なんかいなくたって俺一人で何とかなるよ」高橋は当たり前な事だとでもいうように返事をした。

藤岡はそれを聞いて高橋を睨みつけた。

「何を言っているんだ。おまえ一人で無事に帰って来られるわけないじゃないか」藤岡は怒鳴った。

「先輩には無理だよ!今日だってもう少しでやられるところだっただろ。足手まといなんだ!」

その瞬間、藤岡は左手で高橋の胸ぐらをつかんで自分のほうに引っぱり寄せた

「何だと!俺だって一生懸命なんだ!おまえ何様のつもりだ。ちょっとばかり射撃が上手いからって人をバカにするな!」藤岡はそう言いながら右手で拳骨を作って殴ろうとした。

それを見て美里は藤岡が作った拳にしがみ付きながら「やめて!」と叫んだ。

「殴りたかったら殴りなよ。でも、先輩に何かあったら美里さんどうするんだ?」高橋は静かに言った。

藤岡は、その言葉を聞いて引き寄せていた高橋の目を見た。そして、その目に涙が浮かんでいるのを見とめると襟首を掴んでいた手を離した。

「おまえ、俺の事を心配して言っているんだな。俺に何かあると美里が悲しむと思ってそう言ったんだな」藤岡はそう言いながら美里の方を見た。

美里は泣きながら「お願いだからケンカはやめて…」と小さな声で繰り返しながら座り込んでいた。

「美里さんが悲しむのを見たくないんだ」高橋はそう言うとうなだれた。

藤岡は、その姿を見て高橋と美里にソファーに座るように促した。そして、いい後輩、いや、いい友達をもって自分は幸せだと思った。

高橋と美里はソファーに並んで座った。藤岡も向かい側にゆっくり座って2人が少し落ちつくのを待った。

「なあ高橋、俺だって死にたくはないんだ。それはおまえだって、美里だって一緒だよな」藤岡の言葉に二人とも頷いた。藤岡は続けた。「最初は、銃を取りに行ったりするのは無謀だと思ったよ。何故わざわざ危険を冒す必要があるのかってね。でもな、高橋。今は違うぞ。今では銃を取りに行ったお陰で少しは長生きできるような気がしてきたんだ。それは高橋、おまえのお陰だ。おまえがいなかったら銃を取りに行こうとは決して思わなかっただろう。でも今、俺達には銃がある。それで、食料を探しに行けるかもしれないんだ。銃がなかったら絶対無理だろう。多分あと1週間ぐらいで餓死するか、それが嫌で外に出たところを奴らに噛み殺されるのが落ちさ。だから俺はおまえに感謝している。美里も一緒さ。なぁ」と言って美里を見た。

美里はそれを聞いて頷いた。

高橋は美里の仕草を見て「本当に?」と尋ねた。

美里は、もう一度頷きながら高橋を見つめた。

「私は、秀人君がいてくれて本当に助かったと思っている。最初はむちゃなことをすると思ったけど、今では生き残れるような気がするもん」美里はそう言うと高橋の肩に手をやって涙を目に浮かべながらも笑顔を見せた。

「そうだろ。もしおまえがいなかったら二人して餓死するのを待つだけだっただろう。希望も何もなくね。だから、俺達の希望を無くすようなこと言わないでくれよ。足手まといにならないようにがんばるからさ」藤岡はそう言うと高橋の肩を叩いた。

「わかったよ」高橋はそう言うと笑顔を見せた。それを見て藤岡はホッとしたように深々とソファーに腰を落ち着けた。

「それじゃ、私、何か飲み物作ってくるわね」美里はそう言うと涙を拭きながらキッチンに行ってお湯を沸かし始めた。藤岡はそれを見て懐中電灯を美里に持っていってやった。

暫く二人してキッチンでガサゴソやっていたが、突然美里は動きを止めて藤岡を見つめた。

「ねえ、義明。何か変な音がしない?」美里は藤岡に聞いた。

「やつらだろう?」藤岡はそう答えた。

「いつもは、こんな所でこんな音はしないよ」美里はときっぱり言い返した。

あまりにも意固地に美里が言い張るので、藤岡も首をひねりながら壁や床に耳を当てて聞いてみた。暫くすると藤岡は「高橋、ちょっとこっちに来てこの音を聞いてみてくれ」と高橋を呼んだ。

高橋は何だろうと思いながら二人のいるキッチンの方に向かった。そこに行くと藤岡が床に座り込んでいた。

「何をしているの?」高橋はそう言うと美里の顔を見た。美里はここだというように床を指差した。

「下から音がするのよ」美里が言った。

「このトントンという音聞いてみてくれ」藤岡が床に耳を当てながら言った。

高橋も藤岡にならって、床にうつ伏せになり耳を済ませてよく聞いてみた。

確かにトントンいう連続音が聞こえる。何かの合図のようだった。奴らだったらこんな音は出さないだろう。それに、かすかに女性の声も途切れ途切れだが聞き取る事も出来た。高橋は、悲鳴以外の声を事件が発生してから始めて聞いた。まだこのビルに生存者がいるのだ。

「かすかだけど、女の声がする」高橋はそう言いいながら藤岡の顔を見た。

その言葉に美里は目を大きくした。

「あぁ、そうだな。確かに聞こえる。助けてと言っているようだ」藤岡は暫く聞いてからそう答えた。

高橋はどうしようもないと思った。どう考えても助けにくのは危険すぎる。今までだって何百人もの人たちが目の前で死んでいったのにも関わらず何もしてやらなかった。いや、してやれなかったのだ。いくら銃があるとはいえ、今になってどうしてやる事ができるだろう。そう自分に言い聞かした。

「助けられない?」美里が突然そう言った。

一瞬、高橋は耳を疑った。まさか美里がそんな事を言うなんて。驚きだった。自分と同じ女性が助けを求めているので、そんな気になったのだろうか?藤岡も美里の言葉を聞いてビックリした。

「難しいな。いくら夜でもそれは無理かもしれない」藤岡は残念そうにそう言った。

「部屋がわからないとなるとね。仮にわかったとしても、部屋にはカギがかかっているだろうし。ドアが開くまでそんなに長い時間持ちこたえるのは無理かもしれないね」高橋が言った。

それを聞いた美里は悲しそうな顔をして「そう」と呟きキッチンを出ていった。その美里の顔を見て、藤岡は何かを決心したように高橋につぶやいた。

「食料を取りに行ったついでに助けに行くのは無理かな?どっちにしても作戦は高橋が立てたほうがいいとは思うし、おまえが無理だというなら諦めるよ」

高橋はその言葉を聞いて暫く考えた。

食料を取りに行くのは比較的簡単だった。この建物の中にはカギが開いたままの部屋が多いはずだ。このビルの住人はあらかたやられている。だから、奴らを倒しつつドアの開いている部屋を見つけて中に入り、ドアにカギをかければ大丈夫だ。暫くじっとしていて奴らがドアの前からいなくなった所を見計らいここに戻ってくればいい。それに、最初は誰もいない筈の両隣の部屋から捜そうと思っていたのだ。それから考えると雲泥の差だ。助けに行くとなると、生存者のいる部屋を探す間は通路に釘付けになり、下手をすると逃げ場を失ってしまうかもしれない。これは致命的だ。大勢に囲まれたらいくら銃を持っていたとしてもやられてしまうだろう。

しかし、部屋さえわかれば捜す手間が省けるので可能性はある。カギが開く間だけ持ちこたえれば良いからだ。食料もその部屋の近所で調達すればいい。そして時間を置いてから生存者のいる部屋に行きカギを開けてもらって中に入るのだ。帰りはまた同じ事をくり返せばいい。

藤岡にその事を話すとちょっと考えていた。

「それで作戦をたててみてくれ」藤岡がそう言った。そのあと、藤岡は美里にその事を伝えに行った。美里は微かにうれしそうだった。

高橋たちは三人で作戦を立てた。床から声が聞こえるという事はすぐ下の階だ。それも真下の部屋だろう。もしそうなら、それほど距離はない。藤岡の部屋から階段まで5メートルしかないからだ。しかし、思っていた部屋が生存者のいる部屋でなかったら諦める事にした。他を捜し回るのは余りにも危険だからだ。それは美里も納得してくれた。もう少し様子を見て行けるようなら今夜決行する事になった。


高橋と藤岡は、ベルトに必要な物がちゃんと固定されている事を確認した。そして、銃の準備をして玄関先の様子を交代で確認した。

高橋は今回、MP-5サブマシンガンを持って行くことにした。この銃もセミオートの射撃ができるし何しろ銃身が短く小回りが効く。狭い室内にはうってつけだった。さらに部屋で生存者を撃つといけないので1個しか無い小型の懐中電灯を高橋のMP-5にガムテープで固定した。高橋が室内での捜索役だったからだ。そして、高橋は9ミリ弾の弾頭をヤスリで削って中の鉛を少し露出させた。上手くいけば奴らに当たった時、衝撃で弾頭が開いて、心臓を直撃しなくてもやっつける事ができるかもしれない。しかし、なかなか上手く削れず15発だけだったが、それをマガジンに戻し装填した。そしてもう一つのマガジンを今装填されているマガジンと上下逆にガムテープで固定した。最初のマガジンに弾がなくなった時、ベルトのポーチから出さなくても、すぐに取替えられるようにする為だ。

藤岡は高橋にならって同じ事をした。そして、収穫した食料を入れるためのリュックサックも準備した。


夜も十一時をまわった頃、通路にいる奴らの数がかなり減ってきた。今でもキッチンの床からは連続音が聞こえてきていた。

外を観察していた藤岡が振り向いた。

「かなり減ってきた。そろそろ行こうか」藤岡が高橋に声を掛けた。高橋は頷きMP-5の右側上部にあるボルトを引いて薬室に弾薬を入れ、セレクタースイッチをセミオートにして準備した。藤岡もそれにならった。

覗き穴から外を見てドアの所に誰もいないのを確認すると、高橋はカギを外しドアを開いた。すぐさま、右手の方に射撃体勢をとったまま奴らがいないか見た。5メートル先に2人いたのですかさず心臓を狙って撃ち倒した。

反対側は藤岡が警戒していたのだが5人ほどいたので、近い奴から高橋に教えてもらった通り正確に狙って射撃した。上手い具合に最初の奴は一発でしとめる事が出来た。しかし、その次のには少してこずった。その間に高橋が加勢して残りの4人を次々始末した。そして、今度は高橋が先行して踊り場の方に向かい上下を確認した。藤岡はその時は後方の援護にまわり、他の部屋から奴らが出てきたらすぐ撃てるように警戒した。

「下に行くよ」高橋が藤岡に声を掛け階段を降りようとした。その瞬間、一人が踊り場に顔を出した。高橋は額に一発弾丸を撃ち込んだ。奴はそのまま倒れて見えなくなった。そいつは、後ろからついて上がってこようとした他の奴を道連れに2階のフロアーまで転がり落ちていった。高橋は下まで降りて止めを刺そうとしたが、暗くて今撃った奴がどっちかわからなかったので、念のため両方の頭に弾を1発ずつ撃ち込んだ。そして、すかさず通路の両サイドの安全確認をした。高橋は両サイドとも近くには誰もいないので安心した。

藤岡は後ろを見ながら階段をおり、部屋から出てきた奴を2人倒しながら高橋のあとを追った。

高橋は階段から上がってきた2人を倒して、もう一度フロアーを見渡した。そして、部屋から出てきた奴を近い順にやっつけた。藤岡も高橋とは反対の方に銃を構え射撃しつづけた。あらかた片付くと藤岡は正面の部屋に入るためにドアノブをひねった。しかし、そのドアは開かなかった。

仕方がないので彼はもうひとつ隣の部屋で同じ事をした。そこはちょうど生存者がいると思われた部屋の隣で、そこが開けば一番都合がよかった。高橋は藤岡のあとを追って、他の部屋から出てくる奴と階段からやってくる奴を次々と倒していった。

今では2人に気付き道路からビルに戻ってくる奴もかなり増え始めていた。高橋は階段を覗いてみると一階からぞろぞろと集団で上がってくるのが見えた。そろそろ限界になりつつあった。

「まだ?!」高橋は藤岡に聞いた。

その時、ドアが開いた。

「よし開いたぞ」藤岡がそう言うと一気に二人とも中に入った。高橋は部屋に入ると同時に銃を肩につけたまま部屋の中を捜索した。藤岡は誰も入ってこられないようにドアにカギをかけた。

高橋は部屋を隅々まで見て誰もいないことを確認した。

「誰もいないようだ」高橋は藤岡にそう告げた。高橋はマガジンを外し、先ほどガムテープで固定しておいた新しい方のマガジンを差し込みながらキッチンへ向かった。

運良くそこにはかなりの食料の在庫があった。藤岡に聞くと、そこには4人家族が住んでいたらしいが、今は誰もいないということは皆やられてしまったのだろう。藤岡はもってきたリュックに食料や使えそうな物を入れると背中に背負った。かなりずっしり来たが、これくらいなら大丈夫だった。

この部屋の玄関前には奴らが集まってきているので、暫くはこの部屋でじっとしていないといけなかった。そこで、藤岡は生存者がいると思われる隣の部屋に聞こえるような大きな声で叫んだ。「おい、誰かいるか」藤岡は何度もそう叫んだが返事は返ってこなかった。

「ここじゃないのかも」高橋はそう言いながら、あたりにあったもので壁を叩き始めた。

数分やっていただろうか。暫くすると返事が帰ってきた。恐らく今までこの部屋には奴ら以外、誰もいなかったので不審に思っていたのだろう。藤岡が部屋に何人いるか聞いた。隣の部屋からの返事では2人だということだった。そこで、段取りを教えてドアの所で待っているように伝えた。


2時間ほどして、外に奴らの気配が少なくなったのを機に、高橋達は出かけることにした。さっきと同じように高橋が先頭で隣の部屋の前に移動した。藤岡が部屋のドアを叩いた。

「おい、開けろ!」藤岡がそう叫んだが何の返事もない。ましてや、ドアが開くけはいも無かった。

高橋は、左右にMP-5を振り向けながら射撃を続けた。銃声と人のけはいを感じて階段から夥しいほどの奴らがあがって来た。

「急いで!やばくなった!」高橋はそう言って藤岡を急かした。藤岡は、今度はライフルの銃床で思い切りドアを叩いた。高橋は階段からあがってくる奴らに向けて必死に射撃を繰り返した。

「早くしろ!」藤岡は大声で怒鳴った。するとカチャという音がしたので藤岡は思いっきりドアを開いた。

「開いたぞ!」藤岡は高橋にそう言うと中に入った。高橋も射撃を続けながら急いでドアをすり抜けた。

部屋に入ると藤岡は奥にいる人影に向けて怒鳴った。「何やってるんだ!こっちは外で死ぬ所だったんだぞ!」藤岡が言った。

すると部屋の奥から女性の泣き声と「すみません」という怯えた男の声が聞こえてきた。高橋は銃についているライトを奥に向け、人影らしい物があるところに当てた。そこには一組の男女が固まるように座り込んでいた。男の方はきゃしゃな体格で、運動とは全く縁がなさそうな感じだった。何かあったら一目散に逃げ出すタイプだ。逆に、一緒にいる女の方が体格も良さそうな気がした。顔立ちもシッカリしており、今のように泣きじゃくってさえいなければきっといい女なのだろう。余りの不釣合いさに、高橋はどうしてこの女性とこの男性が一緒にいるのか理解に苦しんだ。

藤岡は、まだ部屋を出るまでに時間が有るので、二人に今までどうしていたのかを聞きだした。それによると、この二人は山縣康太と田中直子で恋人同士らしく、このマンションは山縣の物で、この女性は偶然遊びに来ていて災難にあったらしい。 

最初から食料は殆ど無く、暫くは空腹を我慢していたが、余りの恐怖でどうしようもなくなって助けを求めたという事だった。さっきすぐにドアを開けなかったのは恐ろしくて足がすくみドアに近寄る事が出来なかったらしい。藤岡がこの二人の事は全く知らないのは、まだ入居して1週間しかたっていないという事だった。高橋は、どうりで殺風景な部屋だと思った。食料が無いのも頷ける。

高橋達は、その部屋にある使えそうな物をカバンに入れると山縣に持たせた。そして、二人に帰りの段取りを教えた。藤岡はこの部屋にマグライトがあったのでそれを高橋のようにライフルの銃口付近にガムテープで取り付けた。

夜明けも近くなり、空は徐々に明るくなり始めていた。太陽が出ると奴らが建物の中に戻ってくるので早めに部屋に帰ることにした。美里も心配して待っている事だろう。

四人は外に出ると、まん中に新入りの二人を挟んで前に高橋、後ろに藤岡が守って移動した。山縣には彼女の手を引かせて高橋に遅れないようにさせた。

階段まで来た時、階段から奴らが上がってきたので山縣はビックリして座り込んでしまった。彼女の方も泣き叫び立ちすくんでしまったのだった。通路や階段に倒れている沢山の死体の山も、それに輪を掛けたようだ。藤岡はすかさず踊り場の奴に銃弾を撃ちこんで倒した。

高橋は座り込んでいる山縣の襟首を引っ張り上げ「しっかりしろ!」と怒鳴って立たせた。急がないとこのままでは奴らに取り囲まれそうなので「走るぞ!」と言って二人にハッパをかけた。高橋は射撃をしながら階段を駆け上がった。しかし、新入りの二人は動かなかった。

「早くしろ!やられるぞ!」藤岡はそう言いながら後ろから押した。山縣はやっと走り出したのだが、今度は上の階で通路を警戒している高橋にぶつかってしまった。高橋は突き飛ばされ前のめりになってしまった。ちょうどその時、目の前の部屋から一人出てきて高橋を捕まえようとしてきた。

新入りの二人は驚きその場に座り込み壁にへばりついてしまった。高橋は間一髪のところで身体をさげて交わすと、銃床を顔面に突き上げて奴がよろけた所で頭に銃弾を一発叩き込んだ。

「大丈夫か?」藤岡は高橋に尋ねた。彼は高橋が頷くのを確認すると座り込んでいる二人を引っ張り美里が待つ部屋の前まで引きずっていった。

高橋は援護射撃を続けた。その間に藤岡はドアの前で「美里、俺だ!早く開けてくれ」と叫んだ。そして、二人を立たせるとすぐに部屋に入れるように準備させた。ドアが開くと藤岡は急いで二人を部屋の中に放り込んだ。

「いいぞ、早く来い!」藤岡は高橋に大声で言った。それを聞いた高橋は射撃をしながら、すっとドアの間に滑り込んだ。藤岡はすぐさまドアにカギをかけた。

「危なかった」高橋がため息混じりに唸った。

「こいつ等のせいで死ぬ所だった」そういいながら藤岡は玄関に座り込んだ。

新入りの二人は玄関で泣き崩れていた。

美里はすぐに水を持ってきてみんなに飲ませた。そして、藤岡と高橋に「大丈夫だった?どこもケガは無い?」と心配そうに尋ねた。

「何とかね」と藤岡は美里の持って来た水を飲みながらそう答えた。

高橋は大きくため息をついて玄関に座り込んだ。

「美里さんの顔がもう見られないかと思ったよ」高橋はそう言って銃をたてかけた。

「みんな無事でよかったわ。遅かったからどうしたのかと思ったのよ」

「なかなか奴らがいなくならなかったからね。これでも美里が心配すると思って、急いで帰ってきたんだよ」藤岡が言った。

「すごく心配したのよ」美里は高橋と藤岡にそう言った。2人が笑顔を見せたので美里はホッとして今度は新入りの二人に声をかけた。

「あなたたち、そんなところにいないでこっちに来なさいよ」美里は二人に声を掛けた。それでも二人は動きそうにも無いので、美里は直子の手を引いて奥へ連れて行った。

「おまえも奥に行ってしばらく休め」藤岡はそう言って山縣をソファーの方に連れて行った。

「こいつら暫らく何も食べてないらしいんだ。何か食べさせてやってくれないか」藤岡は美里にそう言いながらリュックを下ろし中の物を出し始めた。

高橋はソファーに座り込んでいる山縣を見て、なんて軟弱な男なんだと思った。確かに俺だって怖い。しかし、自分の女ぐらい守れなくて何が男だ。そう思いながら泣きべそをかいている山縣を見て呆れていた。

高橋は銃とマガジンを調べ異常がないことを確かめると立ちあがった。そして、ぐったりしてソファーに座り込んでいる山縣を横目に、缶詰やレトルト食品を棚にしまっている藤岡達の方へ歩いていった。

「先輩、食料はどれくらいあった?」高橋は尋ねた。

「そうだな、二人増えたからな。この量じゃ2日分くらいかな」藤岡はそう言いながら二日後にはまた行かないとないといけないのかと思うとげっそりした。

高橋も、全く同じ事を思ってガックリした。

「今度、食料を取りに行くのは隣の部屋からにしようね」

「それは賛成だな」藤岡はそう言うと高橋と二人で顔を見合わせて苦しい笑顔を作った。

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