第5話 かなり自信過剰な2人
高校からの帰り道、いつものように麻衣子とバスデート。8月の夕方はまだ日脚が残っており、昼よりも涼しい風が時折吹き抜けて、ふわっと麻衣子の髪の毛をなびかせた。
「大和先輩、たぶん東京藝大受かるよね」と麻矢の問いかけに麻衣子は「この前も先生が言ってたよ。現役で合格できなかったのが不思議だって、審査した教授先生と相性悪いんじゃないかとか勘ぐりたくなるよね」
「本当の力量は2次試験だってよ、1次のデッサンで飛び抜けてても2次の立体課題で落とされることもあるし。実際、先輩はそうだったと思うんだ」
「次はバッチリ対策するはずだしね」
「麻矢くんは、どうするの受験?」
「そうねえ、大和先輩の次はボクかな」(おいおい、先に受験する野見山先輩を差し置いてか)
「東京に行くってこと?」
「もちろん、藝大に行ける可能性、ゼロではないでしょ」ゼロではない~と口では言いつつ、かなり自信ありげな表情に麻衣子が
「ほら出た、自信過剰の山鹿麻矢が」
中学の時から根拠の無い自信で周囲を慌てさせてきたが、今度は高校進学時とは桁違いの日本の芸術の最高学府である東京藝術大学の美術学部である。学問の最高学府である東京大学より定員が極端に少ないために競争率は高く、ただ受けてみただけの「記念受験者」も含めて1次の時点で軽く10倍以上、ふるいにかけられて2次に進んでも、まだ3倍以上の競争率だ。
涼しい帰り道、話していたらいつもの商店街そばのバス停は通り越して1ブロック先の国道沿いに出た2人はそのまま駅のバスセンターまで歩いた。
「私も東京、行こうかなあ」
「麻衣ちゃんも藝大を目指すってこと?」
「うん、アタシもゼロではないでしょ」
「そう、だよね~」
「って、ウソ。藝大はムリよ。アタシは(東京行きが)許されるなら安めの学費で勉強できるところで十分」
「女子だからね、両親が簡単には上京を許可しないかもね」
「勉強で上京は口実よ、原宿とか渋谷とかカワイイの発信地をいろいろ見て回りたいのよ。ひょっとしてスカウトされちゃうかも、でしょ」とピースサインの麻衣子。こちらもやや自信過剰のようだ。
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