第3話 春になれば

「春になれば」


いつも希望が見えていた

どんなに絶望的な冬を過ごしても

春になれば

春になれば何とかなりそうな気がしていた


いつも心がときめいた

どんなに悲しい喪失でさえ

春が来れば

春さえ来れば忘れられそうな気がしていた


優しい日射しのなかで鳥が鳴いて

緩やかな風があって花が咲いて

別れと出会いがあって旅立ちを迎えて

そんな春を待ち望んでいた


どんな春でも嬉しかった

二度と戻らないあの春のこと

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