第2話 遠い春

「遠い春」


少しだけ春の匂いがして

それだけで嬉しかった頃

はるか遠くの街並みに

梅の花が咲き始めた


天神様の石段も

梅が枝餅の思い出も

何もかもが懐かしくて

僕は寒さを忘れて立ち止まった


少しだけ春の気配がして

それだけでときめいた頃

はるか彼方の春の日に

二人の花が咲き始めた


瀬戸内海の優しさも

春の暮れゆく国道も

何もかもが楽しくて

僕はすべてを忘れて好きになった


はるか遠くの

春の夜の夢

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