決勝戦 8
アタッカー4枚積みという、今大会初の構成で俺達は、最後の試合に挑む。ピックミスをしないように、職種選択画面できちんとアタッカーを選ぶ。
4人がリスポーンして試合が始まる。
「行くぞ! タイガが先頭。さっきみたいに、早いうちにスナが飛んでくるだろうから、気を付けて進ぞ!」
「はい!」「おお!」「ええ!」
俺の役職がすぐにバレないように、俺は最後尾で進んでいく。こっちの作戦がバレるのが、遅ければ遅いだけ、俺達の勝機が高くなる。
俺は自分が装備している、アサルトライフルに違和感を感じつつ、自分の手で大会を終わらせるかもしれない、その重圧を感じている。今まで3人はこの重圧に耐えて戦っていたのか。勿論俺の役割も大事なことは百も承知だが、自信で勝負を決められないことに、歯がゆい気持ちを抱いたこともある。しかし、これは想像以上だった。
「今のところ敵は視認できません」
先頭をいく、タイガがそろそろ境界ラインにたどり着くというとこらへんだ。さっきは、中央にスナイパーが二人は位置されていたおかげで、なかなかうまく攻め入ることが出来なかった。
「ここで二手に分かれよう。俺とニシが中央、タイガとテツが右サイド。俺たちはあまり前に出過ぎないようにするから、タイガ達が押していってくれ」
「「「了解」」」
「ニシは俺の後ろについて。ギリギリまで俺は武器を構えないから、牽制はよろしく」
「分かりました!」
恐らく、相手のアタッカーが一人で前線を上げてくるということは、今までの攻め方的に、無いだろう。そうすなれば一か所開けておいたとしても、問題は無いはずだ。それにもし、突発的なことがあったとしても、今回は俺個人でも動けるから対処の幅は広がる。
「ヴィクターさん! 僕たちの前方に一人います!」
「了解! 俺達の前にもいる」
タイガの報告とほぼ同時に、俺の前方にも敵がいるのが発見できた。そうなると、右サイドか中央のどちらか、または両方にスナイパーが腰を据えているだろう。
「ヴィクターさん! 多分相手こっちに気付いてね―ぞ! じわじわこっち近づいてきてる」
「二人でやりきれる、位置まで来たら撃っていいよ!」
これは、かなり有利な状況だ。相手選手もやはりこの場面に緊張しているようだ。プレッシャーで周囲に敏感になり過ぎて、近場が見えていないようだ。
確実にここで、ワンピック取っておきたいな。
「俺とニシが囮になる」
そう言って、今いる遮蔽物からもう一個前の遮蔽物まで、大胆に出ることにする。そうすれば、スナイパーも行動に移すだろうから、位置も把握できるはずだ。
「テツ、目の前の遮蔽からでたら、せーので撃つよ」
「おお!」
二人が、フォーカスを合わせようとしている。その前に、俺達は前に出て、相手全体の気を引く。
しかし、俺達の方へのアクションは何もなく、遮蔽物までたどりついてしまった。
「おっしい! あとほんのミリ!」
「あいつ、反応速度早すぎるだろ!」
二人のフォーカスは、キルを取るまでには至らなかったようだ。だが、俺達は、境界ラインより、前に出ることが出来たので、結果としてはまずまずだ。
「テツ! あいつ追うよ! 一気に潰す!」
「了解!」
二人は、ノンストップで前の敵に詰めていった。これで、ワンピック取れたなら、かなり有利戦況を動かすことが出来る。いや、なんならこのまま4人で前に出れば、一気に勝負を決められるかもしれない。
最終戦にも関わらず、こんなにもうまく行くなんて。
……いや、上手くいきすぎじゃないか? あと一勝で勝負が決まるという場面で、こんな単純なミスをするだろうか? なんだかうまく行き過ぎているような。
「タイガ、テツ! いったん戻れ!」
何となく嫌な感じがした。
「え!?」
「やっば!」
次の瞬間タイガがダウンした。
続いてテツのHPも半分になる。
俺達は、誘い込まれていたのだ。相手のアタッカーもタイガとテツの位置を把握していて、あえて体をさらし、ミリになった所を仕留め切ろうと前に出てきたところを、スナイパーが待ち構えていた。
まんまと罠に引っ掛かった。俺達の火力とせめっけを、完全に理解しての作戦だ。
タイガはヘッドショット2発。テツも一発はヘッドショッに当たったようだが、2発目は外れたようだ。唯一の救いテツまでヘッドショットを貰わなかったこと。
「テツは、遮蔽に隠れてろ! ニシ、テツの方に寄るぞ」
「はい!」
相手は、テツが今孤立していることを把握しているだろうから、きっとテツを仕留め切ろうと前に出てくるはずだ。ここでテツまで失ったら、勝機はだいぶ薄れる。ここは何とかして、カバーしなければ。
「間に合ってくれぇ!」
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