決勝戦 7

 実況

・第4マッチを制したのはSTRADA! これにより試合は最終マッチまでもつれ込むことになりました。いかがでしたか大柳さん? 


 解説

・STRADAの意地が見れた試合でしたね。気持ちがAIMにこもっていましたね


 実況

・制圧射撃以外の、決めなければいけない場面全て当たってましたからね。最終マッチはさらに制度が高まっているかもしれないですね


 解説

・それにどうODDS&ENDSが対応するかが見ものですね。1、2マッチとは違い、3、4マッチは接戦でしたからね。次が楽しみです


 実況

・本当に後一勝で終わりですからね。どんなミスも許されないこの状況でどんな戦いを見せてくれるのでしょか?


 解説

・選手たちは、準決勝を戦い、今決勝ですからね。なかなかキツイものがあると思いますよ。様々なプレッシャーのなか何戦もしているわけですから。


 実況

・しかも、資料によりますと両チームとも第5マッチまで伸びたことは一度も無いようなので、尚更ですね


 解説

・そうですね。だけど普段の練習時間はもっと多いでしょうから、きっと最後もレベルの高い戦いが見れると思いますよ。




 さっきとは、うって変わって今度は全員がヘッドホンを外してお互いの顔を見るところから始まった。


「してやられたな」


 相手チームの意地で取られた試合だった。俺達自身の動きも決して悪かったわけではない。


「ヴィクターさん。もう、いいんじゃないですか?」


 タイガが俺の方を見る


「もちろん、今まで色んな理由があって、ヴィクターさんが盾職を選んでいたのは知っています。それは第2マッチでのこともそうです。オーダーしながらだと、とてもまともに戦えない」


 ここまで言葉にされ、タイガが今なにを口にしようとしているかが分かった。


「いや、でも」


 俺は、別に遠慮しているわけではない。純粋に勝つために、どうするべきかを考えてこれに至ったわけで。


「俺は構わないっすよ。なぁニシ?」


「ええ、僕もそれがいいと思います」


 俺が何かを言う前にテツとニシも、タイガの意見に賛同する。二人にも汲み取られているようだ。


「ヴィクターさん。


 それは、俺も少し思っていたことだ。こいつらと当たるかもと分かった時から、どうしても、向こうスタイルに対して、俺の盾は重すぎると思っていた。それでも、第3マッチでいい勝負が出来たから、いけると思っていた。さっきのマッチも別に大敗というわけではない。

 盾は簡単に言えば一時的な、動く遮蔽物だ。相手にアタッカーが多ければ、それは輝くのだが、スナイパーには機動力で対抗する方が戦略としては合っている。


「いや、でもそれだと、今までやってきたことが、無駄になってしまう」


 俺がアタッカーでの構成は練習でもほとんどやったことは無いし、ましてや大会では一度も無い。フォージはチーム内の動きを合わせることがなによりも重要なゲームだ。それにも関わらず、即席でやったことが簡単に通用する相手出ないことは、全員が分かっているはずだ。


「確かにそうですね。準決勝の才華も最後まで自分たちのやってきたことを貫き通していましたし」


「そうだ。俺はこの4人で始めた、この半年以上の時間を信じたいというのが、俺の思いだ」


 あそこは、作戦を大きく変えてくると思っていた。それでも才華達は自分達のやってきたことを、自分達を信じ切っていた。それには強い信念のような物を感じ取れた。


「それめっちゃ分かるっすよ。でも相手を一つ上回るなら、思いっきりの良さも必要になるんじゃないですかね?」


 それも言えている。このまま何も策を立てずに戦って負けたら、なんにも工夫をしなかったと後悔しそうではある。


 いいのか……? 俺はやれるのか……?


「知ってますよ。ヴィクターさんが盾職を選んでもAIM練習は欠かしていなかったこと」


 それは、FPSを始める前の癖のような物で準備運動のような物だった。

 だが、今確実の体がうずいているのが、分かる。


「良いのか」


「はい!」「おお!」「ええ!」


「分かった。元日本最強火力の意地見せてやるよ!」


 腹をくくった。俺はこの土壇場の状況で、いったいどれだけ暴れることが出来るのだろうか。


「これは……勝ったな!」


 テツが壮大なフラグを建ててきた。しかし、こればかりは冗談ではなく、本気でそう思っているようだ。


「なんで元なんですか?」


 タイガが不思議そうにこちらを見る。


「今はどっからどう考えてもタイガの方が上だろ」


「え? そうですかね?」


 どこからどう見ても、誰が見ても、同じこと言うはずなのに、当の本人だけはいつも無自覚だ。


「まあ、それについてはヴィクターさんと同意見ですね」


「こいつは、自分の凄さを自覚しなさすぎなんだよな」


 ほら、テツとニシも同じ意見だ。


「じゃあ、4人の火力でぶっ潰してやりますか!」


「「「おお!」」」




 実況

・それでは準備が整ったようですので、泣いても、笑ってもこれが最終試合。勝利の女神はどちらが微笑むのか? スタートです











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