決勝戦開始 1

「相手は、前方に出てくるのは、2人だけだ。とりあえず、前にでよう」


「「「了解」」」


 開始そうそう、4人で前進していく。うまく、前方の2人を制圧しきれれば、勝てると思うのだが。スナイパーの2人もずっと同じ場所にいるのではなく、必ず二人でクロスを取れる場所で、なかなか詰めるのが難しい。

 ただ、二人分のアタッチメント付きスナイパーを揃えるのは、かなりポイントが必要になるため、前衛の二人はたいした武器を持っていないと予想する。そうなれば、フォーカスを合わせれば、すぐに落とせそうではある。


「右方向に展開してるやつが一人います!」


 中央境界ラインまで出たところで、先頭を走るタイガから報告が来た。


「多分、そっちに寄ると射線が通るってことだな」


 テツが銃を構えながら、敵がいる方に見る。ここで孤立を狙って突っ込むことが出来れば楽なのだが。


「どうしますか?」


「いったん様子を見よう」


「ここで?」


「ああ、なにもアクションがなかったら、じりじり前に出ていく」


 タイガが少し前に出て索敵をしている中で、次の指示を待つ。それに、再確認ととるかのようにニシも続く。


「固まってて、大丈夫か?」


「それもそうなんだけど」


 だけど、いつどこから弾が、飛んでくるか分からない状況だと、うかつには動けない。

 相手が撃ってこないのであれば、このまま前に出続けば、エリアポイントも稼げる。そうすれば、戦力的アドバンテージが取れるので、戦況が有利になるのだが。


「そろそろ、進みますか?」


 今のところ、相手の動きは無い。そうなると、向こうも初戦は様子見をしているのだろうか?


「そうだね。タイガと俺、テツとニシの二手に分かれよう」


 いよいよ、前に進むことにする。ヘッドショットを貰わなければ、一発で死ぬことも無いから慎重に進んでいけば、大丈夫なはずだが。


「ヴィクターさん?」


「なに?」


「俺とニシは後ろから付いて行けばいいんですか?」


 移動を開始して、すぐにテツが俺を呼んだため、敵を見つけたのかと思っていたがそうでは無かった。あれ? 俺二人に指示出していなかったか?


「ああ、ごめん。二人はさっき見つけた右側の敵の様子と圧力をかけながら、右展開していって」


「了解!」


 自分の頭の中で考えていたことを、口にしたと勘違いしていた。

 うっかりしていたが、これで敵も動かざるを得ないだろうから、先に察知できればいいのだが。


「ヴィクターさん! スナが飛んできた! 左射線!」


 ニシの報告で一気に緊迫した空気に変わった。撃ってきたということは、既にキルを取れる射線に入ったということだ。たまたま一発目外れてくれたからいいものの、初段でヘッドショットを貰っていたら、いっきにテツもやられる可能性もあった。スナイパーの恐ろしい所は垣間見た。


「タイガ! 恐らく俺達よりも左側にいるから不用意な位置取りすると、抜かれるから気を付けろ」


「はい! 後、俺達の前にも一人います。ニシが撃たれた直後一瞬顔を出しました」


「了解!」


 そうなると、前方にいる敵は恐らく孤立している。今俺とタイガで行けばワンピック取れるのではないか? 

 テツとニシの方にクロスして射線が通るということは、恐らく俺とタイガも同じことだと言える。このままだと俺たちはここから一歩も前に出られないことになる。


 だとしたら、ここは危険を冒してでも、前に出るべきか?


「タイガ! 俺と孤立している敵をやりに行こう!」


「分かりました!」


「俺が左側に盾を構えて出るからその後に着いてきて! テツとニシは前方にいる敵の動向チェックと、スナの位置を確認。もし何かあったらサポートしてくれ」


「了解!」「分かりました!」


 さっきのような伝達ミスを防ぐために、今度は、二人の返事を待ってから、俺は前に飛び出した。


「行くぞ!」


「はい!」


 その後にタイガも続く。するとすぐに前方にいる敵が発砲してくる。それを盾で防ぎながら、前に進む。リロードで遮蔽に隠れるタイミングで、距離を詰め切れれば絶対にやりきれる。

 もしやりきれなかったとしても、スナの二人は絶対に撃ってくるから、位置が特定できる。

 そうなれば一気にこちらが有利だ。


「タイガ! 行け!」


 相手が隠れている遮蔽物の目の前までたどり着き、タイガが俺の後ろから小さく周り込んだ。この距離ならタイガなら絶対にやれる。

 そう思ったのだが、銃声はしない。


「いません!」


 さっき弾を撃ち切った後、リロードもせずに下がったのか?


 俺たちの位置から、引いていくのが見えなかったということは、遮蔽物の影に真っ直ぐ引いて行ったことになる。

 そうだとすれば。


「タイガ、追うよ!」


 前方にいるタイガを抜かして、そのまま前に進む。


「え? 深追いしすぎじゃ?」


 タイガが躊躇したのを確認できたため、俺の進む足が止まった。


「あ」


 それと同時に俺はヘッドショットを貰い、ダウンする。ずっと警戒していた、左端方向からの射線だった。


「タイガ下がれ!」


 俺の代わりにテツが、叫ぶ。


 どうしよう。

 今のは完璧に俺のミスだ。一人しか完璧に位置把握出来ていなかったのに、アドバンテージが欲しいあまり、無理凸しすぎた。

 まだ序盤で、焦る場面ではなかったはずなのに。


「僕の右にもいる!」


 タイガは幸い無傷の後ろ下がり始めたが、囲まれているようだ。


「多分そっち誰もいない!」


「分かったすぐに寄るから、なんと耐えろ!」


 どうやら、俺達の前方にいた敵は、最初に右展開していた敵だったようだ。わざと俺達に見つかるように移動して、すぐに正面でぶつかる位置に来たようだ。

 タイガなら、後退しながらなんとか逃げ切れると思うから、二人と合流できれば、まだ挽回の余地はありそうだろう。


「やばい! ここ射線入ってる!」


 そんなことを思っている矢先、ニシのHPが大きく削れる。どうやら、また別射線からスナイパーの弾が飛んできたようだ。すぐさま、二人は近くの遮蔽物に隠れ、ニシはヒールをして、テツはタイガの方に進もうとする。

 テツが、さっきのニシが撃たれた射線を切りながら、遮蔽物から身を出した瞬間銃声がした。


「はぁあ!? そんなのありかよ!?」


 テツは、頭を抜かれダウンする。俺はあいつらの精度の高い射撃をなんども見せつけられる。 


「ごめん、やられた!」


 続いてタイガも、前衛二人にフォーカスされダウンしてしまったようだ。ニシのヒールは終わったようだが、遮蔽物の両側に射線が通っているようで、身動きできないままだ。するとすぐに、タイガをダウンさせた二人が、前に出てきて、ダウン。


 第1マッチは、スナイパー二人の姿すら見ることなく、誰一人削ることもなく、なにも出来ないまま終わった。














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