準決勝開始 2

実況

・準決勝第1グループ、1マッチ勝者はODDS&ENDS! 果敢に攻め続けた男たちが先制点を取りました! 今の試合はいかがでしたか、大柳さん


解説

・両者とも素晴らしい戦いでしたね。特に、ヴィクター選手と才華選手のオーダーが光った場面が多かったですね。


実況

・まさか、タイガ選手を一人で止めていた才華選手の立ち回りには驚きましたね


解説

・普通なら、ああいった高火力選手には人数有利を取りにいくのですが、そうではなく機動力で抑え込むと。結果としては負けてしまいましたが、新しい指針を残したのではないでしょか?


実況

・勝利の決め手は何だったんでしょうか?


解説

・テツ選手がファーストダウンを取れたことですね。恐らく、予想よりも早く戦闘が起こったんでしょうね。それを上手く活かし、そのまま押し切りましたね


実況

・ヴィクター選手の盾パンチも見られましたしね


解説

・あれには驚きましたね


「タイガよくあれやりきったな!」


 一通り勝利を喜びあったあと、興奮冷めずにテツが言う。


「いや、ちょっと上振れしてヘッショに当たったから。だけど本当に上手かった。次また来たら、ちょっと分からない」


 フォージをしている時は、常に負けん気なタイガがこんな微妙な反応をするとは。俺はまだ対面していなから、分からないが、よほどの選手なのだろう。タイガだからやれた物の、他の人間だったら下手したら返り討ちにあっていたかもな。


「さっきは上手く囲まれた感じでしたね」


 最後の一発を決めたニシがいう。正直上手く立ち回られていたから、タイガの活躍がなければ、戦況はひっくり返っていただろう。

 次はどうするべきかを、考えるのもインターバルの数分で行わないといけないな。


「そうだな。まさかタイガを1人で止めに来るとは思わなかった」


 恐らく次も、タイガのところに来るだろう。そうなると、こちらが取る選択は。


「ニシ、次はスナじゃなくて前出よう」


「了解です。それがいいと思います」


 ある程度方針が固まったところで、マッチ準備の文字が出る。


実況

・それでは第2マッチスタートです




「ニシとテツは俺に着いてきて、タイガだけはいったん一人で右ラインを進んで」


「分かりました!」


 リスポーン後、取り合えず二手に分かれて進む。


「あえて、タイガを一人にして、相手の出方を見る」


 相手チームの最初の動きは決まっているから、その後どうするかが問題だ。さっきの感じを見るに、タイガのことをだいぶ警戒しているから、またタイガを抑え込みに来るだろう。


「さっき負けたから、今度はタイガの前に来ないかもしれないかもな」


 テツが横を走りながら言う。それだとこちらにとって好都合なのだ。


「それが一番ありがたいんだけどな。もしそうなったら、俺たちの正面にいる敵を横からついてもらえれば、一気に崩せると思う」


 どちらかと言うと、相手チームは長期戦を望んでいるはずだ。才華選手がまともな武器を持てるまで、ポイントを稼ぎたいはずだから。そのため出来れば、その前に仕留め切るのが、好ましいのだが。


「境界線まで着いたけど、まだ才華見てないですね」


 ニシが当たりを見渡しながら、そう言う。確かに、普通ならどこかで遭遇するはずなのだが、俺達が見つけられなかっただけで、先に捕捉されていたのか?


「ヴィクターさん! 俺の前一人います! 多分才華です!」


 そう思っていた矢先のことだった。


「やっぱり先に見つかってたか!」


「さっき負けたのに、再戦を挑んでくるとは男だなあいつ!」


 あちら側の負けん気の方が上だったか。いや、そうせざる負えなかったのかもしれないな。ということは、残りの3人はまた一緒に行動していて俺たちの目の前に、いる可能性が高いな。


「残りの敵の位置が分からないけど、ニシはタイガの方に寄って、二人で仕留めきって! テツは俺と一緒に、なるべく前線を、維持して耐えるよ!」


「次は、さっきよりも早く倒す!」


 インターバル中、少し弱気だったタイガも、今はいつもどおりに戻っている。強者との戦いに、ゲーマーとしての血が騒いでいるのだろう。

 あとは、ニシの援護で早々にキリをつけてくれると嬉しいのだが。


「ヴィクターさん! 俺たちの前に3人います!」


 まだ、ニシがタイガに合流していないから、こちらが2人なことはバレていないだろう。そうすれば、こちらから攻撃を仕掛けない限りは、向うが好戦的に来ることはないと思う。


「テツ、威嚇ぐらいでいいから撃って!」


「おけっす!」


 今までのAIM練習の成果もあり、中距離でも多少弾が当たっているようだ。

 威嚇射撃には十分だ。


「ヴィクターさん、タイガに合流しました。そっち気をつけて下さい!」


「了解。テツ。削られたら一気に詰められるよ!」


 どうやら、ニシが合流したようだ。この時点でこちらの配置はバレたから、相手がどう出るかなのだが。一気に3人で来られたら、恐らく対応しきれずに、ダウンしてしまう。そうなったらまずいので、最悪後退しながらでも死なないように立ち回るか、いっそのこと、タイガ達の方に寄り無理やり4対4のシチュエーションを作り出すかだな。


「大丈夫っす! まだ1も削られてません!」


 盾を構えて、少し前の様子を見る。遮蔽物に身を隠しながら射撃してきているのは、ずっと一人づつだけのように感じる。

 これ、本当に3人もいるか?


「ヴィクターさん! 才華が後退し始めた! どうします!?」


 この段階で引いたら、タイガ達に押し込まれるのは、分かっているはずだが。誘い込もうとしているのか? いや、そうなると俺の正面にいるのは3人ではないな。


「ニシはいったんその場に待機! タイガは俺たちの正面にいる敵の横を突いて欲しい!」


「了解」「了解です」


 これで、挟みこめる形になる。


「テツ前出るよ!」


「おっけ!」


 俺は盾を構えた状態で、テツを隠しながら前にでる。盾の長所は全てここにあるといっても過言ではない。耐久値が無くなるまでは、横から撃たれない限り、ひたすら正面突破できる。


「え!? やばい!」


 唐突なタイガの、危険を知らせる大声と同時に、HPバーがほんのミリしか残っていない程削られていた。


「待ち伏せされてた! これ無理かも!」


 いったん、すぐそばの射線が切れる場所に行けたようだが。


「ニシ! 今すぐタイガのとこ行って!」


 どうやら、俺たちの正面にいた3人のうち2人がタイガが通った場所に待ち構えていたようだ。あえて、一度姿を見せて3人いると思い込ませてから、移動していたようだ。才華が下がったのも、こっちに寄ることを予想しての誘い込みだったようだ。


「ごめん、間に合わない」


 HPが残りわずかで、しかも2対1の状況で相手が詰めてこないわけがない。タイガがダウンするのは、確定事項だ。


「テツ、正面はいったん無視して、ニシと合流するよ!」


 そう言いきり前に、走り出す。いまこの場面で一番最悪な場面は各個撃破されることだ。


「ごめん死んだ! でも一人やった!」


 タイガのダウン表記より先に、敵のダウンが表示された。あの状況でなんで、一人道連れに出来るのか理解できないがさすがだ。


「ナイス! よくやった!」


 タイガのおかげで、今の配置的は敵、俺とテツ、敵、ニシ、才華という並びになった。


「もう一人は1も削れてないです!」


「分かった! 3人で挟んでいる敵をやり切ろう! そうすればだいぶ有利になる!」


「ヴィクターさん、見えました! これ撃っていいですか?」


「いいよ! 才華がどこにいるか分からないから気を付けて!」


 恐らく、さっきタイガをキルしたポイントで、才華の武器は強化されているだろう。威力の低いピストル一丁だったら、大した脅威ではないのだが。


「ヴィクターさん、俺たちの後ろからも追いかけて来てるぞ!」


「分かってる! 撃たれるまでは無視していい!」


 俺がいるから、撃たれて瞬時に反応すれば、大きな被弾は抑えられるはずだ。


「一人やったぞ!」


 ニシが、俺達との間にいる敵を倒してくれたようだ。ほとんど後方支援ばかり担当していて、近接戦を大会ではやってこなかったのに、きちんと決め切ってくれた。おそらく、いつこういう場面が来ても対応できるように、練習してくれていたと分かる、AIM力だ。


「ナイス! もうすぐ合流できる!」


 もう、ニシの姿は見える距離まで来た。ここで合流しきれば、ポイント的にもこちらが勝っているから、タイガの復活まで待ってもいいし、仕留め切れるなら、やりきる。どちらに転んでも、こちらの出せるカードの方が強い状態になった。


「ニシ! 横に才華がいる!」


「あ!」


 一瞬見えた人影を報告するが、一足遅く、受けたダメージをヒールしている間にニシもダウンする。

 これで、2対2の五分の状況になった。


「テツ、反転! 俺達を追いかけている敵を先にやる!」


「了解っす」


 そう言って、盾を構えながら後ろを振り返ると、すぐに視界に映った。

 俺の横でテツが射撃して、マガジンを撃ち切ると同時に敵がダウンした。


「やったぜ!」


 なんとも言えない距離感だったが、1マガでやりきった。向こうも油断していた状態ではあるものの、このミスが許されない場面で、勝負強さを発揮した。

 これで1対2。そして、才華はすぐ目の前だ。


「テツ先前でて、才華倒してきていいよ!」


「よっしゃぁ!」


 テツが才華に向かって走り込んでいく中、俺はメニュー欄を開き、当初予定していた、装備のアップグレードではなく、盾職でも持てる短機関銃を装備する。

 これで、俺もテツの援護が出来る。


 本来であれば、機動力活かし逃げる場面であったはずだが、テツの思いっきりの良さにつられ、才華が足を止めて対面している。


「ヴィクターさん、俺もあいつもミリだぜ!」


 あちらも最後の粘りを見せるが、ここまでくればなんとかなる。

 お互いがリロードをするが、相手の方が少し早かったようで、テツがダウン。しかし、ノーダメージの俺に体丸出しの為、俺が数発撃つと。


 VICTORY


 2マッチ目も勝利を収めた。

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