決別後の再開 1

 毎日毎日、仕事しかしない生活。

 それは、想像以上に息苦しものだ。他の社会人の人達も皆同じような感情なのだろうか? それともこんな思いをしているのは俺だけなのか?

 なにか、日々の楽しみが欲しいと思い、色んな趣味になる得る物を試してみたものの、それのどれも、いまいちのめり込むことが出来ずに、すぐに辞めてしまった。


 そんな時だった。俺は、最近どんなゲームが話題になっているかを調べてしまった。本当に魔がさしたとしか言いようがないが、やっぱりゲームがしたいんだなと自身で理解してしまった。理解してしまったからには、その手を止めることはできなかったのだ、

 まあ、もうあれから、何年も経っているんだ。今さら競技に戻るわけでもないのだから、楽しむ程度ならいいだろう。そう、自分を納得させようとしていた。

 これも現実逃避なのだろう。


 検索して真っ先に出てきたのが、Force Stragyというゲームだった。

 つい2か月前にリリースされたばかりらしい。どうやら、フォージって訳されて呼ばれているようだ


「4vs4かぁ」


 俺がやっていたのは、バトルロワイアルゲームだから、同じFPSとはいえ、今までにやったことのないジャンルだ。

 相手が1パーティしかいないということは、かなり戦略が重要になるな。

 物は試しということで、俺は自宅用のノートパソコンに早速インストールしてみた。

 競技をやっていた時に使っていたデスクトップパソコンは、既に捨てたからない。もう二度と、ゲームなんかしないとか思いつつも、仕事用で買ったゲーミングノートパソコンだ。家で仕事をするだけなら、なんら意味のないものだったが、無意識で買ってしまっていたのだ。

 よく考えれば未練たらたらだな。

 そんなことを思っていると早速インストールが完了した。

 開いてみる、タイトル画面に大きく、Force Stragyの文字が出る。


「ああ、懐かしいな」


 前のゲームこんな感じのものだったよな。あの時は毎日ゲームを開いていたはずなのに、ほとんどタイトル画面など見ていなかったような気がする。


「あ、」


 タイトル画面を過ぎると、初めて起動するゲームにお馴染みの規約の同意。

 そして、すっかり忘れていた、プレイヤーネームの設定だ。


「いやー、どうすっかな・・・」


 まさか、当時の名前を使うわけにもいかないし。いや、実際使ってもなんの問題もないとは思うが。

 インターネットの中なんて、なりすましがいて当然だし、何より、そこまで珍しい名前でもなかったから、他に使っている人がいても不思議ではない。

 だけど、だからといっても、さすがにそれは避けたい。


「まあ、なんでもいっか」


 ふと俺は机の上にある、晩酌のお供のさきイカが目に入った。


「よし、これでいいや」


 プレイヤーネーム-イカゲソ丸


 我ながら、なかなかいいネーミングセンスだ。

 誰と話しているわけでもなく乾いた笑いが出る。


 プレイヤーネームを決めると、いよいよゲームのホーム画面になった。リリースしたばかりのゲームの割には、画面上がぐちゃぐちゃしていて、少し見ずらい。

 マッチの所に、フリーとランク戦のバナーがある。リリース2か月なのにもう、ランクマッチがあるなんて、凄いな。ちゃんと機能しているってことは、きちんと練られて作られている証拠だ。

 今はそれが主流なのだろうか?

 それともう一つ、トレーニングルーム。これは、操作に慣れるためや、主にaim練習に使う場所だろう。


 本来ならまず、ここから始めるのだろうが、面倒なのでいきなりゲームをプレイしてみることにする。

 マッチが開始すると、選択画面に移る。


「え、ジョブとかあんの?」


 防御、加速、攻撃。この3つのジョブがあるらしい。


「こうも最初からはっきり役割が分かれているゲームはやったことないな」


 とりあえず、無難であろう攻撃を選ぶ。初心者なんだし、とりあえず銃ぶっぱなしておけばいいだろう。

 その次に、武器の選択画面が出てくる。


「えー、こんなに武器の種類あんの?」


 いや、でも選択できない物があるから、これは順次解放的なやつなのか? 俺はとりあえずSMGを選択したが、全部で20種類くらいはありそうだ。サイトとか、アタッチメントも、変更できるようだ。

 そう言えば、ホームの設定画面の所に、カスタマイズの文字があったような気がするな。


「さあ、2年間のブランクはどれほどかな」

 

 この胸の高揚感は、この2年間一度も味わったことのないものだ。


「あ、やっべ」


 俺は、音が直接パソコンから出てきていることに、ここで気が付いた。

 慌てて、スマホを買った時に、一緒についてきた、安物のイヤホンをパソコンに刺した。とりあえず聞こえれば問題ないだろ。

 すると、俺のキャラクターを表すバナーの所にマイクマークがついたので、慌ててゲーム内設定を開く。そして、ボイスチャットをOFFにした。こういった時に、イヤホン自体に、マイクのON/OFFがついていないと不便だ。


 ジョブと武器の選択時間が終わると試合が始まった。すると、だだっ広い庭のような場所にリスポーンした。俺のキャラのすぐ横に、もう3人いるのが分かる。

 しかし、視界内には他に見えないので、恐らく敵はある程度離れた場所にいるのだろう。味方の3人は多少の、プレイし慣れている人のようで、開始早々に前線を上げていっている。俺もそれに着いて行くように、前に進んでいく。

 所々に、敵射線を切るためのオブジェクトのような物がある。それも大小様々で、地形を覚えているかいないかで、大きく差がでそうな感じだ。


「え!?」


 敵を視認することが出来ない中、俺の画面に赤いマークが出たと思ったら、急にリザルト画面に飛ばされた。


「もしかして、もう死んだ? まじかよ?」


 初見殺しもいいところで、どうやら俺は、遠距離からスナイパーで殺されたらしい。


「いや、これで終わりかよ! つまんねえな!」

 

 いくらなんでも、こんなにあっさりやられしまったら、面白いさを感じることすらできない。ゲームバランスもないトンだクソゲーだった。

 久々に、少しは楽しめるかと思ったのに、残念な気持ちでいっぱいだ。

 マウスから手を離し、スマホを取ろうとすると。


「ん? これもしかして?」


 ふと、俺の画面にの中央上に、数字がカウントダウンしているのが、分かった。

 それが終わると俺はもう一度リスポーンしなおしていた。

 ルールも見ずにスタートしたため、勝利条件が分からない。エリア確保系か? それとも一定以上キルすればいいのか?

 とりあえず、俺はもう一度戦うことを許されたらしい。どうやら、味方のそばにリスポーンしたようで、すぐ横で味方が射撃している。

 PVPの醍醐味はキルを取ることだ。俺はもう一度前に進んでいくが、今度はさっきみたいにならないように、遮蔽物をうまく使っていく。するとちょうど敵が俺の射線が通るところに出てきたので、これはチャンスと銃を撃つ。


「うっわ、マジかよ」 


 想像以上に銃のリコイルが難しく、めちゃくちゃ外してしまった。しかし、それを見ていた味方が、倒してくれたようで、俺にアシストが入った、すると左上にポイントのような物が、反映されたのが分かった。

 すると、俺の持っている武器が一瞬光ったのが分かった。


「なにこれ? ん? ああなるほどね!」


 どうやら、俺の持っている武器がアップグレードされたようだ。相手をキルするとポイントが入りそれで武器がアップグレードするのか。

 少し、要領を掴んだ俺は、そのまま2人を自分の力だけで倒した。

 すると、ゲーム画面に大きくVICTORYの文字が出てきた。なんだか、昔よく聞いたことのある、響きだ。


「これで勝ったのか? 勝利条件が何だったのか全く分からん」


 ゲームのルールを調べるくらいなら、サイトにも載っているだろう。そう思い、スマホで調べてみることに。


・どちらか、一方のプレイヤーが全滅したら、残っているプレイヤーチームの勝利

・キルされる度、試合の経過時間により、リスポーンまでの時間が延長される

・チームには生存時間と、キル数によってポイントが振り分けられる

・ポイントはマッチ中に、装備やスキルなどの強化や習得に使える

・ポイントは個人に振り分けられる、仕組みになっているが、チーム全体としても使える。


「リリースしたばっかりのゲームの割には、結構しっかりしているな。これは見た目以上に、一人の責任が大きそうだな」


 それに、今までにない、ゲーム性のようで、サービス開始2か月ではあるものの、凄い盛り上がりを魅せているようだ。

 凄いいいタイミングで、面白いゲームを見つけてしまった。


「よし! もう1回やるか。今度はもう少しうまく出来るだろう」


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